中国のデジタル人民元、極秘裏に開発進行中

中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は、ソーシャルメディア大手フェイスブック(Facebook)が擁するリブラ(Libra)より早い市場展開を目指し、デジタル通貨計画を全速力で進めている。

中国人民銀行のデジタル通貨リサーチラボの専任チームは現在、同行の北京中心部にある本店から離れた非公開な環境でシステムの開発を行なっている、と同行に近い人物がCoinDeskに語った。

この人物によると、チームはプロジェクトに完全に集中できるよう、初夏からこの離れた場所で仕事をしている。

フェイスブックが2019年6月、円滑な決済のためのグローバル仮想通貨、リブラの構想を発表して以降、中国の開発は早められてきたとも、この人物は語った。

リブラの発表は世界中の政府を動転させ、アメリカでの議会公聴会や、イングランド銀行のマーク・カーニー(Mark Carney)総裁のような中央銀行の人物による大胆な新しい考えなどの反応を引き出してきた。

中国人民銀行によるプロジェクトの大部分は秘密のベールに覆われているが、その予定や、大手中国企業の関与度合いなどについては、矛盾する情報が出回っている。

中国のデジタル通貨ローンチはいつになるか?

中国国営メディア、チャイナデイリー(China Daily)による2019年9月4日(現地時間)付の報道によれば、支払いシナリオをシミュレーションするために、「一部の企業や非政府組織」が参加する、中央銀行デジタル通貨(CBDC)向けの「閉ループ試験」が始まっている。

物事がうまく進めば、プロジェクトは2020年前半のデビューを目指すリブラよりも早くローンチする可能性がある、とチャイナデイリーは以前の報道で伝えている。

フォーブス(Forbes)は先週、中国の4大国営商業銀行と、大手フィンテック企業のアリババ、テンセント、ユニオン・ペイ、そして匿名の企業一社が、CBDCを最初に受け取ることになる、と報じた。フォーブスによれば、ローンチは早くて11月になる可能性もある。

この4行とは、中国銀行、中国建設銀行、中国農業銀行、そして保有資産額が世界最大級の銀行である中国工商銀行である。

しかし、このフォーブスの報道から数時間後、中国のテンセント・ニュースシナは、中国人民銀行に近い人物を引き合いに出し、フォーブスが伝えたタイムラインや8つの組織の関与範囲は「不正確な憶測」であると伝えた。

それでも、中国人民銀行によるCBDCの取り組みに詳しい別の情報筋はCoinDeskに対して、フォーブスの報道に挙げられていた組織は確かにCBDCの開発に参加している、と語った。しかしこの情報筋は、言及された組織のすべて、または一部のみがローンチ時に国家が支援するデジタル人民元を受け取ることになるのかどうかについては、発言を控えた。

上記で挙がった組織の一つで働く別の人物によれば、所属する組織でそのよう取り組みは進行しているが、機密保持契約によって詳細は極秘となっているため、実際にどのような機能を担っているかははっきりしない。この組織が、CoinDeskのコメントの求めに応じることはなかった。

中国人民銀行による段階的な展開

デジタル通貨のローンチがいつになるにしても、中国人民銀行は初めから国内全土での展開は行わない可能性がある。

中国国営メディアのグローバル・タイムズ(Global Times)は先週、本件に詳しい業界関係者の発言を引用しながら、まずシステムは試験的に深圳市でローンチされる可能性がある、と報じた。テンセントなど、ここを拠点とする企業や国営金融機関がCBDCの開発支援のための技術的枠組みを研究中だ。

中国人民銀行のデジタル通貨リサーチラボは以前、深圳市の地元政府と金融規制当局とともに、フィンテックおよびデジタル通貨関連のプロジェクトに取り掛かるための深圳フィンテック研究院を設立している。

同機関は、深圳市や北京市で働けるブロックチェーンアーキテクトや、暗号専門家を含む様々な技術的専門家について求人広告で採用攻勢をかけている。

中国人民銀行のデジタル通貨リサーチラボは、国が支援するこのデジタル人民元の設計の可能性が詳述された50を超える特許申請を行なっているが、CoinDeskでは以前、これらの特許申請に基づいて、計画されているCBDCがピアツーピアのトランザクションシステムとして表面的には仮想通貨に似ているだけで、仮想通貨の匿名性や分散型の性質の大半を取り除いたものになる、と報じた

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Shutterstock
原文:China’s Crypto Competitor Is Being Built in a Secret Office with Restricted Access