ロシア最大級のダークウェブ、世界展開を目指してICO?

ほぼ間違いなく違法な新規コイン公開(ICO)が登場した。しかも、証券法のみに留まらない。

大胆不敵なICO

ヒドラ(Hydra)──ロシアと近隣諸国をターゲットに展開しているダークウェブ──は、世界的な拡大のためにトークンセールスで1億4600万ドル(約160億円)を調達すると主張している。

特別な方法で匿名化されたブラウザー以外ではアクセス困難なウェブサイトに掲載された投資資料によると、セールスは12月16日(現地時間)に始まる予定だ。

トークンの価格は100ドル、ビットコインで購入可能。100トークンの「パッケージ」を買うと、ヒドラの利益の0.00333333%を受け取ることができると資料には記されている。仮にトークンがブロックチェーンで運営されるとしても、どのチェーンかは言及されていない。

そのビジネスの違法性を考えると、ヒドラのICOはこれまでで最も大胆なものになる可能性がある。ロシアのニュースメディア「フォークログ(Forklog)」は、今回のICOはダークウェブでは一般的出口詐欺かもしれないと警告した。

ヒドラの資料に記された文言は大胆としか言いようがない。セキュリティとアタック耐性に関する高い能力を豪語するヒドラは、世界中に買い手、売り手、配送者が決して会うことのない「接触フリー」の違法物の取引方法を導入したいと考えている。

「西洋社会に新しい時代を開くことになる。拡大の規模を想像することは難しい」と資料には記されている。

月に16億円を生み出す?

このICOは「エターノス(Eternos)」と呼ばれる新サービスの開発に資金を提供することになる。エターノスは、暗号化されたメッセンジャー、仮想通貨取引所、トーア(Tor)のような匿名ブラウザー、AIベースの問題解決ソリューション、そして相対取引(OTC)市場が組み合わされた世界規模のダークウェブと説明されている。

「顧客確認(KYC)は存在せず、すべては最高水準で匿名となる。我々はテレグラム・オープン・ネットワーク(Telegram Open Network:TON)ではない」と資料にはトークンの購入者に顧客確認プロセスを求めるテレグラム(Telegram)のブロックチェーン・プロジェクトに対する皮肉が書かれている。

ヒドラのICO資料のページ

ヒドラは、プロジェクトの49%に相当する147万トークンを発行する計画で、100トークン以上の購入者にはビットコインによる配当も予定している。

ヒドラの運営者は、エターノスは月1500万ドル(約16億円)以上を生み出すと想定している。「この推計は、ヒドラの成長指標に基づいている」と資料には記されている。

CoinDeskは、ウェブサイトに掲載されているヒドラの複数のモデレーターに連絡をとった。だが記事執筆時点までに回答はなかった。1人のモデレーターはコメントの求めをスパムに分類した。

「数百万もの」ユーザー

ヒドラは2015年にオープン、ドラッグやその材料、偽造書類や偽札、ハッキングサービスなどが売買されている。ロシアの調査報道系メディア、ザ・プロジェクト(The Project)によると、ヒドラのユーザーは250万アカウントを超え、そのうち39万3000アカウントは少なくとも1度は購入経験がある。

ヒドラ自身の発表によると、ユーザーは300万を超え、コロンビアのコカイン、自家栽培の大麻、偽造パスポート、盗まれたデータベース、ビットコイン(BTC)と交換できる現金などの取引が毎日10万件以上行われている。

ヒドラで購入した場合、支払いはビットコインあるいは電子送金で行われる。この点は、アメリカで終身刑に服しているロス・ウルブリヒト(Ross Ulbricht)氏が作った、最も古く(現在は運営されていない)違法マーケットプレイス「シルク・ロード(Silk Road)」と同様だ。

しかしシルク・ロードと異なるのは、ヒドラでは買い手は購入した違法物を郵便で受け取るのではなく、買い手の居住地付近の秘密の場所に隠された違法物を受け取る。

支払いを済ませた後、買い手は、公園、郵便ボックス、その他「配達物」が隠されている場所への詳細な道順を受け取る。配達は請負業者が行い、取引に関与する3者が直接顔を合わせることはない。

ヒドラの売買ページ

ザ・プロジェクトは、2016年以降、ユーザーは10億ドル(約1100億円)以上をヒドラで使ったと推計している。ザ・プロジェクトの取材に応じた匿名のスタッフによると、ヒドラは開発者、セキュリティ・サービス、ドラッグ・カウンセラーからなる独自のチームを抱えている。

採用情報ページによると、ヒドラは売買されるドラッグの品質をチェックするために化学者を採用を進めている。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Cocaine powder image via U.S. Drug Enforcement Agency/Wikimedia Commons
原文:Russia’s Largest Darknet Market Is Hawking an ICO to Fund Global Expansion