ビットコイン投資家か、それともギャンブラーか?決断の時がやってきた

暗号資産はもう終わりなのか?それとも世界の終わりか?そんなことより、ステーキをもう1度食べられるだろうか?

ビットコイン(BTC)が過去24時間で約13%、1週間では34%近く値下がりする中、多くの人は初めて、こんな風に自問しているかもしれない。

2020年から2021年にかけて、暗号資産投資には多くの新規参入者がやってきた。純粋に退屈したからというのが最大の理由の1つだろう。そして、3年周期くらいで皆を暗号資産投資へと駆り立てる、すばやくリッチになりたい野次馬根性がそれに続く。ビットコインウォレットのアクティブアドレスという1つの指標をとってみても、昨年3月にパンデミックが始まって以降、約35%も増えている。

投機的なデイトレーダーたち

新規参入者の多くは、真の暗号資産を支える非常に複雑な意味合いを含んだテクノロジーや、社会を変容させていく理由や仕組みについての頭がクラクラするような理論について、限定的な理解しか持ち合わせていないが、それも無理はない。

驚くことでもなければ、特段非難されるべきことでもない。暗号資産であれ株式であれ、大半の人はビーチに行って、アイスクリームを食べ、時々は、インターネットで目にした流行の資産に、FOMO(機会を逃すことへの恐怖:fear of missing out)から足を踏み入れてみたいだけなのだ。

もちろんこれは、貧乏なまま終わるにはもってこいの道だ。しかし、2020年の暗号資産上昇市場へ新規参入した人たちは、手持ちの資金をすべて失うにはより優れたアプローチを吹き込まれている。投機的なデイトレーディングだ。

彼が第1号だとは言わないが、オンラインメディア「Barstool Sports」のCEO、デイブ・ポートノイ(Dave Portnoy)氏は確かに、この世界で最も有名で象徴的な存在だ。パンデミックの初期に、株式のデイトレーディングのライブストリーミングを始め、その後2020年の夏には、暗号資産にも猿まねのように手を広げた。

まさに猿まねだ。公平のために言っておくと、確かにポートノイ氏は、自らの暗号資産投資のばからしさを自分でもかなり認識している。5月18日には、ポンジスキームとも噂されるSafemoonに4万ドルも投資しながら「仕組みなんて全くわからない」と宣言した。

それから24時間後、その4万ドルは1万5000ドル近く目減りしている。昨年の8月には、買って1週間後に、1万1500ドル付近で保有するビットコインをすべて売却。そして2週間前、4万8000ドルの時にビットコインを再び買った。

戦略本には「売れ」の文字

ポートノイ氏の投資活動の全貌を把握している訳ではないが、自制心がまったく無いにも関わらず、より広範な強気市場のおかげで、昨年夏よりずっと保有資産が増えている可能性は非常に高い。

しかし、ほんの少しでも批判的に言わせてもらえば、取引プラットフォームのeToroが実施した2016年の調査によると、個人デイトレーダーの80%が1年間のうちに損失を出すというその理由を、ポートノイ氏は長丁場の1人芝居で見せてくれている。その調査のデータに含まれるすべてのトレーダーの12カ月間の投資結果の中央値は、36.3%の損失だ。損失を出したトレーダーたちだけではない、すべてのトレーダーの中央値だ。

今起こっている暗号資産の暴落は、その理由を見事に示している。大半のデイトレーダーは、最も自制心があって綿密な人であっても、市場のセンチメントに基づいて取引を行なっており、「パニック」はかなり抗し難いセンチメントなのだ。典型的なデイトレーダーの戦略本には、このような時、「売れ」と太字で書かれている。

ウォーレン・バフェット氏の投資原則

一方、長期的投資家たちは値下がりの時に、長期的に信じている資産を増やすための押し目買いをする。ウォーレン・バフェット氏の有名な投資原則の1つ、「他の人たちが欲に駆られている時には怖れを持って。他の人が怖れている時には欲を出せ」というウォーレン・バフェット氏の有名な投資原則の1つの核心も、そこにある。

だからこそ、暗号資産だけにとどまらない資産市場の生態系において、大半のデイトレーダーたちは、どっしりと構えた「クジラ」に飲み込まれる。不安で落ち着きのない、微細なオキアミに過ぎないのだ。

ここで但し書きを1つ。

古き良き株式を取引して利益を上げる個人デイトレーダーは確かにたくさんいる。ましてや暗号資産に関しては、ニュースに突き動かされる混乱が多くのボラティリティを生み出すため、本当に腕の立つトレーダーにとっては利益を出すのにさらに格好の場となるのだ。

非常に投機的なアルトコイン市場では、トレーダーたちはおそらく、他のどの資産クラスよりもずっと有意義な役割を果たす。彼らが「自分にとっての利益を出すために投資」することで、様々なプロジェクトのリサーチや監視、価格発見が促されるからだ。しかし、興味本位で手を出すべきようなものではない。

そして今、暗号資産の時価総額の合計が20%近く減少する中、暗号資産投資を始めたばかりの人たちにとっては、投機的トレーダーのままでいるか、投資家になるのかを決める良いタイミングではないだろうか。

センチメントと実体経済へのインパクト

デイトレーダーは、資産価格の短期的変化に投資する。短期的な取引の気運はこの頃では、市場の状況の本質的な変化よりも、センチメントの変化に左右されることが多い。デイトレーダーとしては、ニュースが何を意味するのか、あるいは究極を言ってしまえば、それが本当かどうかさえ重要ではないのだ。大切なのは、そのニュースに対する1万人のトレーダーの反応を推測し、そこから利益を出すために自分のポジションを整えることだ。

そのようなアプローチは、部分的にはテクニカル分析を通じて体系立てられた。テクニカル分析は、市場のセンチメントを測り、予測するための方法と幅広く宣伝されている。原資産に関する知識はまったく、あるいはほとんど必要ないとはっきりとうたわれているのだ。知りたい、そして知る必要のある唯一のストーリーはチャートが語ってくれると。

これは正式の投資とはまったくもって対照的だ。投資家たちは、センチメントに焦点を当てるのではなく、資産が実体経済においてどのように振る舞うかという点で投資をする。

つまり通常は、短期的な変動は無視し、市場のセンチメントも大いに割り引いて見る。もちろん、グレイゾーンも存在する。初期段階にある上場企業株といった、取引可能な「成長」資産を買う投資家は、経済的な業績と市場のセンチメントをうまく天秤にかけながら、巧みに立ち回るのだ。

しかし、大半の投資家たちは、企業あるいはセクターに関する「テーゼ」に基づいてポジションを立てる。企業やプロジェクトが特定の目標を達成したとしたら、未来はどのようになるのかについての詳細で複雑なイメージ、そして目標達成の可能性がどれほどなのかを評価したものがテーゼだ。

12カ月後の株式価格を予測して、株式アナリストが発表する「ターゲット価格」もそれを源にしている。(ビットコインも含め、投資はおおむね、より長い期間で行われるが、プロの投資家は通常、2、3年以上先の予測に基づいて投資することはない。それはまさに、予測価格が、予測不可能な実世界の状況に基づくからに他ならない)

今日こそは自分に問い立てるべき時だろう。「マイホームを持つ希望、ましてやランボルギーニを買う希望なんていまや完全に打ち砕いてしまった暗号資産を、なぜ買ったのか?テーゼはあったのか?あったとしたら、それは変化したか?」と。

暗号資産投資についてのテーゼを持っていなかったとしたら、暴落のさなかにそれを探し求めるのにはあまり賢明ではない。テーゼは投資家としての自信と決意の源となるもので、すでに上空5000フィートにいて、急降下している時に飛行機を組み立てるのは困難だ。ぐっすりと夜眠りにつくのに最良の策は、全部売ってしまうことかもしれない。

なぜ暗号資産に投資するのか?

しかし、なぜ暗号資産に投資をしているのかを思い出させる何かが必要であれば、4つのことを挙げておこう。

1)人種差別的かつ外国人嫌悪的な独裁者たちが、世界中で台頭しているにも関わらず、グローバリゼーションは無くならない。暗号資産は場合によっては、従来型バンキングシステムよりも効果的な国境を越えた支払いの手段であると、力強く主張できる。

2)パンデミックは各国の国家予算に大きく食い込み、特に米ドルにおいて、国債の発行を増加させ、インフレの脅威を高めた。個人的には、ビットコインが「インフレヘッジ」だという考えに関してまだ立場を決めかねているが、多くの人はそう信じている。

3)ブロックチェーンのトラストレスなベースレイヤーと自動化されたスマートコントラクトを利用してローンを発行したり、貸付を行う分散型金融(DeFi)は、2020年1月から2021年4月にかけて、7239%成長した。

4)暗号資産は、21世紀において唯一実行可能な、金融検閲に対する解決策だ。金融検閲は政府や民間企業に巨大な力を授ける、デジタル時代における大きなリスクであり、拡大するばかりだ。

他にもたくさんあるが、値下がりを示す一面の赤い表示の中で、「購入」ボタンの上にカーソルや指を浮かせながら、自分を落ち着かせるために小声で唱える何かが必要ならば、手始めとしては十分だろう。

 デイビッド・Z・モリス(David Z. Morris)は米CoinDeskのコラムニスト。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、coindesk JAPANの見解を示すものではありません。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Time to Decide: Are You an Investor or a Gambler?