ゴールドトークンが好調、インフレ加速でビットコインは失速

ゴールドトークンが好調、インフレ加速でビットコインは失速

ビットコイン(BTC)が「デジタルゴールド」としての輝きを失いかける中、実物のゴールド(金)に裏付けられたトークンに価値を見出す暗号資産投資家たちがいる。

アーケーン・リサーチ(Arcane Research)がまとめたデータによると、ゴールドに裏づけられたトークンの時価総額の合計は、2020年初頭から比べて30倍に増加。需要の高まりを反映している。

ゴールドに裏づけられたトークンの時価総額計
出典:Arcane Research

特に、パックスゴールド(PAXG)はここ数カ月、急激な成長を見せている。PAXGは、ニューヨークのステーブルコイン発行業者パクソス(Paxos)が2019年9月に、イーサリアムブロックチェーンのERC-20規格をもとにリリースしたトークンだ。

その時価総額は、ステーブルコイン発行業者最大手のテザーが発行するゴールド連動トークンの「テザーゴールド(XAUT)」を上回った。テザーゴールドは、トロン(Tron)ブロックチェーン上で発行されるTRC20トークンである。

テザーゴールドがデビューしたのは2020年1月。これら2つのゴールドトークンは、パックスゴールドがインドの取引所の「WazirX」に上場された5月までは接戦を繰り広げていた。WazirXは、大手暗号資産取引所バイナンスが運営している。

アーケーン・リサーチは、「インドは個人のゴールドの所有量で世界トップ。パックスゴールドへの需要の高まりの大きな要因かもしれない」と述べ、インドでの上場を理由と考える見解を示した。

コインゲッコー(CoinGecko)のデータによれば、PAXGの取引高の大半を占めているのはバイナンスである。

投資多様化のツールとしてのゴールド

しかし、パクソスのシニアプロダクトマネージャー、カール・ボーゲル(Carl Vogel)氏によれば、パックスゴールドの成功の理由は、インフレの高まりと、ボラティリティの高い暗号資産市場からのリスクをヘッジしようとする投資家やトレーダーからの需要の増加だ。

米労働統計局は10日、アメリカの消費者価格は5月までの12カ月間で約5%上昇したと発表。新型コロナウイルスによる制限から経済活動が再開し、経済刺激策による資金が消費者による購買活動や金融市場へと流れ込み続ける中、これは2008年8月以来最高のペースだ。

多くの投資家はここ1年、「デジタルゴールド」としてインフレヘッジになると信じてビットコインに投資してきた。しかし、ビットコイン価格はここ数カ月低迷。当記事執筆時点では3万6525ドルと、4月に記録した史上最高値6万5000ドル付近と比べるとはるかに安くなっている。

一方、ゴールド先物はここ1カ月で約4%上昇。現在では1オンス当たり約1896ドルで取引されている。

「機関投資家であれば、市場のボラティリティが高まり、暗号資産市場のボラティリティも高まった時には、特定のリスク基準に合うように、そのボラティリティの高まりを埋め合わせるようなポートフォリオの分配を行う必要があるだろう」と、ボーゲル氏。「そのため、非常に流動性の高い時期には、ゴールドへと投資を多様化させていくのは、自然で、優れた戦略である」

機関投資家からの需要の高まり

パクソスとテザーはどちらも、ゴールドに裏づけられたステーブルコインに対する機関投資家からの需要が高まっているとコメント。

ボーゲル氏によれば、ここ6カ月で、パクソスからパックスゴールドを「大口の規模で」直接購入している機関投資家が増えている。

「ゴールドに投資をしようと考えるデジタルトークン分野の機関投資家にとっては、テザーゴールドが魅力的なのかもしれない」と、テザーの最高技術責任者、パオロ・アードイノ(Paolo Ardoino)氏は語る。「持ち運びできることから、ゴールドそのものよりも、そのデジタル版を人は好むのかもしれない」

PAXGもXAUTも、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)の厳しい基準をクリアした、ロンドン・グッド・デリバリーの400オンスの上質な金塊の1トロイオンスによって裏づけれているとされている。PAXGを裏づけているゴールドは、ブリンク(Brink)の金庫に保管されている。一方のXAUTを裏付けるゴールドは、スイスにある金庫に保管されているという。

テザーが発行する、米ドルにペグされたステーブルコインUSDTは、ほとんどすべての点で透明性を欠いているにも関わらず、世界で最も人気で、最も成功したステーブルコインだ。

一部の暗号資産投資家が、ポートフォリオを再調整し、ゴールドへの投資を増やすのも無理はないと、アーケーン・リサーチのアナリスト、ヴェトレ・ルンド(Vetle Lunce)氏はコメントした。

「ゴールドに裏づけられたトークンは、暗号資産とゴールドに投資したい投資家にとっては、非常に便利なツールだ」とルンド氏。バイナンスや、その競合のFTX、ビットフィネックス、クラーケンなど「暗号資産界でも最も流動性の高い市場のいくつかでゴールドトークンが上場されている」とルンド氏は指摘した。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Gold Tokens Take Off as Inflation Accelerates, Bitcoin Retreats

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