暗号資産市場は賢くなっている:市場を読み解く3つのリスク

暗号資産市場は賢くなっている:市場を読み解く3つのリスク

暗号資産のリスクを、3つの次元から考えるのが有益だと、私は感じている。市場、テクノロジー、規制だ。空間や時間といった次元と同じように、これら3つは独立では存在しない。交わり合うものなのだ。

市場リスクの次元は、すべての新しいテクノロジーが直面する普及のリスクだ。暗号資産批評家よりも、そもそも気にしていない人たちが象徴する。

テクノロジーリスクの次元は、基盤となっているテクノロジーが破綻するリスクだ。これが最もよく見過ごされているものかもしれない。ビットコイン(BTC)のSHA-256ハッシュ機能が解読不可能な理由を理解していると言える人が、どれくらいいるだろうか?

規制リスクの次元は、最も大きな関心を集めるものだが、そのニュアンスはあまり良く理解されないことも多い。そのようなニュアンスと、市場がそのニュアンスを理解することに向けてゆっくりと前進していることが、先週の一連の報道に表れていた。

先週は規制リスクとテクノロジーリスクが彩った一週間だった。コメンテーターたちが中国におけるビットコインマイニングの中央集権化を嘆くところから、中国政府によるビットコインマイニングの取り締まりを嘆く方へと移ろうのを見るのは愉快なものであった。

規制リスクもテクノロジーリスクも、強調され過ぎている。マイニングは、検証と並んで、ビットコインのガバナンスシステムである。ビットコインはガバナンスを商品化している。ガバナンスの腐敗的力を、インターネット接続さえすれば誰でも提供できる「権限のない商品」に転換しているのだ。マイニング競争における唯一の強みは、より安価なエネルギーとより高速なプロセッサによってもたらされる。北米のマイナーは、どちらの分野でも競争力を持つことを証明している。

現在、暗号資産に対する中国の「取り締まり」はどんなものでも、北米のマイナーにとっては絶好のチャンスなのだ。しかし、エリザベス・ウォーレン米上院議員の発言が、北米でのマイニングに対するアメリカ政府の姿勢を代表するものだとすれば、それは誰か別の人たちにとってのチャンスとなってしまうだろう。(パラグアイの議員が先週、暗号資産にフレンドリーな提案を行った。パラグアイは世界で2番目に大きな水力発電ダムの発電量の45%を握っているが、その貴重な資源をほとんど使用していない)

暗号資産市場は先週、規制リスクとテクノロジーリスクをより高度に理解していることを示した。米政府と中国政府からマイニングに関して聞こえてきた心配な声は軽くあしらい、米コロニアル・パイプラインのシステムを襲った犯罪組織「Darkside」からビットコインを押収することに成功した米連邦捜査局(FBI)のニュースには動揺した。

今回の押収は、単独で(おそらく)高度な集団からのビットコイン押収としては、過去最大規模であった。FBIはビットコインの暗号技術を解読したのだろうか?市場はあたかもそのように反応した。FBIが暗号技術の困難な問題を解読する方法を見つけたとしたら確かに、ビットコインやその他すべての暗号資産の足元をすくうことになるだろう。しかし、そんなことは起こっていないのだ。

FBIによるビットコイン押収のニュース(赤線)を受けて急落したビットコイン
出典:CoinDesk BPI

コロニアル・パイプラインを攻撃した組織に送られたビットコインを回収したと発表した数時間後、欧州刑事警察機構(Europol)のプレスリリースの中でFBIは、警察当局各所が暗号化メッセージサービスを立ち上げ、犯罪者たちに対してトロイの木馬として売り込んだおとり作戦に関わったとして名前が挙げられた。不思議なことに、だましのプロである犯罪者たちは、おとりを信頼して、ビットコインの秘密鍵を渡したようなのだ。

ますます暗号資産への興味を高めている世界は、この点についていくつか学ぶことがあるだろう。ニューヨーク・タイムズとウォール・ストリート・ジャーナルは、「追跡困難というビットコインの評判」を引用して、ビットコインは「実際には追跡可能」であると指摘する報道を行なった。

警察当局は長年にわたって、暗号資産が追跡可能であるだけではなく、永続的に追跡可能であるということを理解している。FBI捜査官の中には、ビットコインを「起訴先物」とふざけて形容する人もいると、ジャーナリストのナタニエル・ポッパー(Nathaniel Popper)氏は2016年の著書『Digital Gold』で指摘した。

アメリカ政府が(自らが作り上げた)SHA-256を解読することと、オフチェーンプロバイダーと通じておとり操作を仕掛けることの違いは、暗号資産における規制リスクが本当はどこに存在するかを示している。今回の押収のニュースに対する市場の対応、そしてビットコインハッシュレートの週の半ばでの落ち込みと、中国の青海省と雲南省におけるビットコイン禁止の(一部は誤った)ニュースへの無反応は、この違いの理解が高まっていることを示している。

米政府と中国政府は、ビットコインマイニングを止めさせるのは難しいと感じるだろう。少なくとも直接的に規制することは。最低でも1台のコンピューターが「ビットコインを実行」していれば、ビットコインは実行されるのだ。ビットコイン価格が上がれば、より多くのマイナーが報酬に惹かれてマイニングを行い、ネットワークの価値に相応しいセキュリティを提供する。

暗号資産取引所や、その他のオフチェーンサービスプロバイダーをコントロールする政府の権力の方に、より大きな規制リスクが存在する。暗号資産の奇妙で断片化した流動性は5月19日、見事に振る舞った。取引所に対する規制次第では、次はこうはならないかもしれない。バンキングに関する規制や、ビットコインETF(上場投資信託)の承認など、暗号資産フレンドリーな規制における進展がゆっくりとしたものになるリスクもある。

マイニングが手出しできない領域という訳ではない。入り口と出口での規制リスクは、価格を落ち込ませることによってマイニングにマイナスの影響を与え得る。そのことと、ビットコインそのもののセキュリティに影響を与える規制リスクを区別することが大切だ。

市場は、暗号資産におけるテクノロジーリスクと規制リスクという、2つの違いをより良く理解できてきているようだ。少なくとも今のところは、それが効率性の向上のサインである。しかし、個人投資家と機関投資家が主導する市場サイクルの揺れの中では、そのようなダイナミクスはすばやく変化する可能性がある。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Long & Short: The Market Gets Smarter

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