暗号資産のスーパーサイクル:この先10年をいかに形づくるか【後編】

暗号資産のスーパーサイクル:この先10年をいかに形づくるか【後編】

起業家のナバル・ラビカント(Naval Ravikant)氏は、技術的レバレッジを簡潔に説明している。

「最も興味深く、最も重要なレバレッジの形は、複製のための限界費用がゼロなプロダクトというものだ。これが新しいレバレッジの形だ」

マイクとインターネット接続だけで、何百万人にも声を届けられる。最も現代的なレバレッジは、限界費用のないインターネットとコードに帰着する。

テックスタートアップはレバレッジマシーンである。なぜなら、ラビカント氏が言う通り、「最小限だが、手に入り得る限りで最も生産力の高い労働力、つまりエンジニア、デザイナー、製品開発者」を組み合わせ、「そこに資本を加えるから」だ。

この組み合わせは、非常に高いボラティリティとロングテールの分配を伴った大きな収益を生み出すことができる。レバレッジの新しい形は非許可型だ。現代のレバレッジに関して、3つのポイントを挙げておきたい。

●レバレッジは諸刃の剣だ。文明の利器には、デメリットも伴う。
●利用可能なレバレッジに伴って、順応性(あるいは潜在的脆弱性)も高まる。●非許可型金融はインターネットレバレッジの頂点である。資本がより流動的になり、幅広く保有できるようになるからだ。

諸刃の剣

インターネットの時代は、数カ月でビリオネアになることを可能にしてくれる、無限のレバレッジの時代だ。一方で、最先端の陰謀論を伝えるユーチューブチャンネルに登録して、深い穴にハマっていくことで、認識力を完全に腐らせてしまうのも簡単だ。利用可能なレバレッジが大きければ大きいほど、潜在的格差もより大きくなる。

順応性

順応性とは、反射性の働きだ。世界がより順応的になるほど、堅固さは失われる。反射性そのものは技術的レバレッジや金融レバレッジが支える。レバレッジを通じて世界を構築することは、内在的脆弱性をもたらす。

非許可型金融

非許可型金融は、究極のレバレッジだ。ほとんど誰でも、市場にアクセスし、思いつきで金融プロダクトを作ることが可能になるからだ。これは、知識経済にアップグレードを強いる。結果として、金融がゲーム化するに伴って、イノベーションループは急速に短くなる可能性がある。

私たちはすでに、10代の開発者たちがDeFiに積極的に参加するのを目にしている。新しい銀行家は実質的に、ゲーマーたちだ。メディアがインターネットによって解体されたのと同じように、非許可型金融が金融をディスラプト(創造的に破壊)するだろう。

これが「アンバンキング」の意味するところだ。プロとアマチュアの間の資格という幻のバリアが無くなるだろう。

結果

これは必ずしも、良い結果だけにつながる訳ではない。機会の平等が大きければ大きいほど、結果の不平等も大きくなる。実家暮らしでビリオネアになることで、相対的不平等は本質的に大きくなる。

スーパーサイクルは、夢にも思わないほど広範囲にわたる。すべてが「スーパー」なものとなる。勝ちも負けも、ボラティリティも、勝者と敗者の差も。スーパーサイクルの結末は予測不可能であり、悲惨な暗黒世界が待っているかもしれないし、ユートピアが待ち受けているかもしれない。

新たな農業革命というユートピア

暗号資産が新たなFANGになるというのは、確かなオプションだ。新しい資産クラスの誕生は、新しい経済への移行へのチャンスを意味する。暗号資産やDeFiで現在起こることには、前例がまったくない訳ではない。

19世紀半ばから後半までのアメリカにおける農業革命は、アメリカの台頭につながった繁栄の時代だ。この期間は、土地を分配し、土地という新たな資産クラスと、新たな利害を生み出すことで始まった。

その後、「実用的な農業、科学、軍事科学、エンジニアリングの教え」に焦点を当てた「ラントグラント大学」が設立された。これによって、知識の共有が可能となり、参加可能な人たちの数が増えた。農作物保険といった、新しい法的、金融上の仕組みも発明された。

このような農業革命は、技術的イノベーションと制度的イノベーションが組み合わさった結果であった。問題は、デジタル資産が同様の刺激をもたらすことができるかだ。

デジタル資産は資本である。一部のDeFi資産は、実際の収益や利回りを伴った生産性の高い資本と呼ぶこともできるだろう。これらの新しい資本資産の普及が教育と組み合わされれば、金融全体の分割がそれに続くだろう。

代わりとなる悲惨なシナリオ

より多くが変化すればするほど、同じようなものにとどまる度合いは高まる。非許可型金融が、古い経済の欠点を受け継ぐ。このバージョンの未来では、同じ問題が、新しい名前を伴って私たちを困らせることになる。

「ブロックチェーンがむき出しの空売りや複雑なデリバティブ、持続不可能なレバレッジから私たちを守ってくれると言っている人は、DeFiの向かう先をよく見ていない」

暗号資産はしばしば、「小さき人」が成功する革命と解釈される。その小さき人が、小さいままでいるなんてことはあり得ない。暗号資産は本格的な革命ではなく、単なる政権交代となる可能性もあるのだ。

DeFiは表面上は非許可型だが、そのゲームに参加するにはスキル、つまりある種の許可が必要だ。特定のスキルを持った人たちは、実家に居候したままでも、このシステムで成功できる。しかしそれは、より平等な結果をもたらすのだろうか?

DeFiや暗号資産全般を、解放してくれるものと形容する人たちがいる。この考え方では、単に体制の移行と、新たな金融エリートの誕生を可能にし、他の人たちにとっては改善はほとんどないと言っているのだ。内輪の人たちが、旧金融エリートたちとともに、革命を告げる。

コインベースの提供するプロダクトは、古い経済の関係者の間で自らを確立させようとする新しい経済の典型だ。暗号資産が自らを正当化して受け入れられようにするのは、脇でこっそりと反体制勢力として活動するよりも危険な可能性もある。暗号資産も、グーグルのようなイデオロギーの反転に見舞われるのだろうか?世界最大の広告企業となったグーグルはかつて、広告に反対していたのだ。

犠牲を伴う結末

ここ10年間のテック株と同じように、暗号資産もたくさんの金融資本を惹きつけるかもしれない。メッセージは最近の方がより速く広がっていくことを考えると、個人投資家の参加は重要になってくる。暗号資産というはっきりとしない新たな資産クラスの流動性の高さは、リッチな人たちにとって抗し難い魅力だ。

暗号資産は誕生以来、内輪の人にとっては約束の地、外野の人間にとっては追いやられた人たちのクラブという感じだった。これがゆっくりと変化してきている。急進的に反体制的なアイディアという形での動的エネルギーが、DeFiや暗号資産を開発するサイファーパンクのスタートアップという形で潜在的エネルギーへと向かっている。

新しい経済が古い経済の下で湧き上がっており、世界を作り変える準備は万端だ。スーパーサイクルは、ハイパーサイクルとも呼べるかもしれない。IT革命は遂に2020年代において、自らを正当化して確立するために反体制的な根幹部分を失い、完全なデジタル時代への移行を可能にするかもしれない。

新しい経済は最終的に、コンピュータープログラムに価値が組み込まれるデジタル時代への移行をもたらし、古い経済に報いるだろう。2000年代初期と同じ戦いだが、結末は異なる。長く待ち望まれた、デジタル時代の配備段階へと突入する中で、新しい経済が優勢となるのだ。

しかし、スーパーサイクルには大きな犠牲も必要になる。

マッティ・ガグリアルディ(Matti Gagliardi)は、ベンチャーキャピタルのジー・プライム・キャピタル(Zee Prime Capital)でパートナーを務める。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:The Supercycle: How Crypto Could Shape the Decade Ahead

おすすめ記事: