中国の暗号資産取り締まり、過去とは異なる深刻さ【オピニオン】

長年暗号資産に関わってきた人たちは、中国からのFUD(恐怖、不確実性、疑念:fear, uncertainty and doubt)の波を何度も経験しており、現在の反暗号資産政策もあまり大したものではないと、軽くあしらうかもしれない。

取り締まりのニュースを一因として市場は値下がりしたが、高値から落ちてきているところであって、サイクルの一部だろう、と。

過去にはない真剣さ

残念ながら、そのような考え方は突然、劇的に時代遅れのものとなっているようだ。中国は今回の暗号資産取り締まりに、過去に比べて真剣に取り組んでいるようであり、その影響はより長期的で、深いものになるかもしれない。

新しいタイプの深刻さの証拠はすでに、ここ数週間での中国からの暗号資産マイナーの大脱出に見られている。ありがたいことに、大規模なマイナーの移動は、ビットコインネットワークの堅固さには決定的な影響を与えないだろう。

むしろ、マイニング、そしてそれに伴うリスクを、より多くの国々に広めることになれば、長期的には結局プラスになる可能性もあるのだ。そして、マイニングアクティビティとビットコイン(BTC)価格の間には、強力な直接のつながりはない。

しかし、マイニングは全体像の一部にしか過ぎない。中国は、同様の改まった激しさで暗号資産取引をも実質的に規制している。中国の金融当局は21日、大手銀行とフィンテック企業に対して、暗号資産関連の取引をサポートしてはならないと改めて通達。中国の中央銀行に当たる中国人民銀行は各銀行に対して、暗号資産関連の取引をより強力に取り締まるよう要請する声明を発表した。

ABCニュースによれば、これらのルールは2013年に初めて提示されたものだ。しかし5月には、中国共産党がそれらは本気のルールであったと改めて釘を刺し、21日には中国人民銀行が、その点を改めて明確にしたようだ。

例えば、中国農業銀行は21日、暗号資産関連の取引を止めるために、デューデリジェンスのプロセスを導入すると語った。そのような取引が確認されれば、口座の凍結につながると、同行は警告した。

個人投資家への影響

今回の取り締まりは、暗号資産関連企業と同じくらい、あるいはより厳しく、個人に影響する可能性が高いという点を認識することは大切だ。暗号資産関連企業は、中国本土では珍しいからだ。特に、暗号資産取引所は、2017年に中国で禁止され、BTCCのような国内事業は閉鎖された。

しかし、暗号資産取引所の閉鎖はおおむね、中国の法定通貨/暗号資産という取引の流れを、フォビ(Huobi)とオーケーエックス(OKEx)というオフショア取引所が運営するOTC(相対取引)デスクへとシフトさせることになった。

OTCデスクによって、中国の個人投資家たちは、人民元を米ドルに連動するステーブルコインのUSDTやビットコインと交換し、それをさらなる投資のために、バイナンス(Binance)などの国際的非法定通貨取引所へと移動させることができる。

デジタル資産を扱うメディア「ザ・ブロック(The Block)」のウルフィー・ジャオ(Wolfie Zhao)氏によれば、今回の中国人民銀行からの声明では、初めて具体的にOTCデスクが言及されており、それらが受けているバンキング関連の特権が停止される可能性について、より強い表現が使われている。

中国は暗号資産の所有を禁止してはいないが、取り締まりの厳格化は、個人への罰則のリスクを高めることによって、個人投資家の間での関心を削ぐ可能性もある。懲罰として、銀行口座を失う以上の厳しい結果を伴う可能性もあるのだ。

今回の声明には具体的に示されてはいないが、問題があるとされた取引に関わった個人は、中国のはっきりとしない「社会信用システム」で永久的に格下げされる可能性もある。このシステムは、デューデリジェンス抜きで、航空券から高速インターネットまで、あらゆるものへのアクセスを制限できるブラックリストのようなものだ。

暗号資産について話すことさえも突然、中国当局によってはあまり好ましくないものとなっているようだ。暗号資産に特化したアカウントが、ウェイボー(Weibo)などのソーシャルメディアプラットフォームで禁止されたと、多くの報告がなされている。

ある中国人暗号資産コメンテーターは、一連のソーシャルメディアでの取り締まりを、中国における暗号資産界の思想的リーダーたちにとっての「最後の審判の日」であると形容した。ソーシャルメディアは新しいプロジェクトへの関心を生むのに非常に重要であるため、暗号資産投資への関心をさらに弱める可能性が高い。

つまり、暗号資産価格に対して、長期的で本格的な下げ圧力がかかる可能性もある。チェイナリシス(Chainalysis)の2020年の報告書によれば、世界全体での暗号資産取引の30%以上が東アジアで発生しており、その大半を中国が占めている。世界的な取引高の2桁台の割合を失うことは、非常に小規模なプロジェクトにとって特に打撃だ。

見せしめ的な処罰?

事業者たちに対する最近の厳しい対応も、個人による暗号資産取引を抑止すると考えられるだろう。アリババの創業者ジャック・マー(Jack Ma)氏は、アリババの金融関連会社アント・グループのIPO(新規株式公開)を準備していた。しかし当局は、その計画を阻止した。金融規制当局に対するマー氏の反抗的な発言が理由とされている。

昨年までは中国で最も有名なテック起業家であったマー氏は今では、ほとんど目に見えない存在となっており、絵を描いたり、チャリティー活動をしていると報じられている。特に権威主義社会においては、人生を左右するような問題は突然降りかかってくるのだ。

そのような劇的な措置は、法律の条文と、法律を実際に執行した場合の措置の間に大きな差のある中国のようなシステムにおいて、桁外れに大きな役割を果たす。近代初期における劇的で残酷な公開での処罰は、犯罪者に痛みを与えるだけでなく、見ている人たちに恐怖を植えつけ、同じ過ちを繰り返さないように警告するためのものであったと、哲学者のミシェル・フーコーは主張した。

中国にはまだ、暗号資産に余地が残されているかもしれないが、中国共産党はついに、反権威主義的テクノロジーを助長することから得られるものはほとんどないと、結論づけたようだ。全体として見れば、中国の損失は世界の利益となるが、この先にもまだ、不穏な状況が待ち受けていそうだ。

 デイビッド・Z・モリス(David Z. Morris)はCoinDeskのコラムニスト。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:China’s Anti-Crypto Crackdown Is Different This Time