米SECがキックを提訴。「キン」ICOで証券法違反を主張

米証券取引委員会(SEC)は、メッセンジャーアプリを提供するキック(Kik)が2017年に行ったキン(kin)トークンの新規コイン公開(ICO)について、未登録の有価証券販売に該当するとして、同社を提訴した。

SECは6月4日(現地時間)、ニューヨーク州南地区に提出した書類の中で、キックが1993年証券法第5条に違反したと主張した。1993年証券法第5条は、証券の募集・売出しには登録が必要だとしている。

「我々は、キックが募集や売出しを登録せずに1億ドル相当の証券を販売したことで、投資家に法律上知る権利のあった情報を与えず、投資家が十分な情報にもとづいた投資決断を下すことを妨げたと主張します」とSEC法執行部の共同ディレクター、スティーブン・ペイキン(Steven Peikin)氏は述べた。

「企業は、イノベーションと連邦証券法を遵守することの二択を迫られているわけではない」とも。

SECの提訴状によると、同社唯一の製品であったオンラインメッセージアプリは何年間も損失を出し続けており、同社の経営陣は、2017年には資金が底をつくと内部向けに見通しを立てていた。同社の損失は毎年平均3000万ドルだった。同社は、より規模の大きいテック企業に買収されることを試みていたが、候補となっていた7社全てに買収・合併を拒否され、この試みは失敗に終わった。

2017年前半、キックはデジタルトークン1兆枚の販売を通して、資金を調達し、別の新規事業へと方向転換を試みた。同社は、キン・トークンのパブリックセールを実施し、一部大口投資家には割引価格で販売した。アメリカの投資家から調達した金額は5500万ドルを超える。SECは提訴状の中で、キンが最近、ICO時に一般投資家が購入した価格の約半分で取引されていると主張している。

同提訴状によると、カナダ・ウォータールーに拠点を置くキックは、以前オンタリオ州証券委員会に、キンは証券と見なされると指摘されている。

キックは、今年1月、SECが同社に対して法執行措置を取った場合、訴訟を起こすつもりだとウォール・ストリート・ジャーナルに語っている。

先月、キックの創業者兼CEO、テッド・リビングストン(Ted Livingston)氏は、SECとのやり取りで、すでに500万ドル費やしたと述べている。その後、キックは訴訟に備えるために500万ドルを用意しただけでなく、クラウドファンディングキャンペーン「仮想通貨を守れ(Defend Crypto)」を立ち上げた。

キック独自のブロックチェーン上に構築されたキンは、さまざまなモバイルアプリで使用されている。キックはICOによって調達した資金で、キンを獲得・消費するための新しいマーケットプレイスの開発を支援している

リビングストン氏は、4日、以下のようなコメントを発表している。

「イノベーションを起こし、さまざまなものを生み出し続けるために、(仮想通貨)産業は(規制の)明確化を心から必要としてきました。明確化へ進み始めたのは、今回が初めてです」

SECの提訴を受け、キンの価格は、提訴の発表から2時間以内に25%下落した。

翻訳:Yuta Machida
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:SEC image via Shutterstock
原文:The SEC Is Suing Kik for Its 2017 ICO