高騰するウェブ3.0トークン、次なる人気暗号資産となるか?

ビットコイン(BTC)価格が数カ月に渡るこう着状態から抜け出せない中、暗号資産トレーダーの一部は、次なる人気資産となる可能性のあるトークンに資金を投下している。ウェブ3.0トークンと呼ばれる、分散型インターネットのビジョンに関連するデジタル資産だ。

データサイトのメッサーリ(Messari)が追跡し、アルカ(Arca)の最高投資責任者ジェフ・ドーマン(Jeff Dorman)氏が発表したデータによれば、「ウェブ3.0トークン」は8月1日までの1週間で22%値上がり。ビットコインや、NFT(ノンファンジブル・トークン)を含むその他すべてのサブセクターを上回るパフォーマンスであった。時価総額トップの暗号資産ビットコインは、10%値上がりした。

年初以来のデータでは、分散型インターネットアプリケーション関連のトークンは平均で244%の上昇を記録。NFTの2726%には及ばないが、37%のビットコインを凌いでいる。


8月1日時点での前週比のパフォーマンス
出典:Arca、Messari、TradingView

メッサーリによると、4月以降暗号資産市場が低迷しているにも関わらず、ライブピア(LPT)やヘリウム(HNT)、ビットトレント(BTT)など、とりわけ有名なウェブ3.0コインの一部は今年、少なくとも800%値上がりした。

「年初以来ウェブ3.0エコシステムが飛躍的に成長し、5月の低迷後も値上がりの大部分を維持したことは、暗号資産市場にとって大いにプラスだ」と、暗号資産関連のデータを提供するトレード・ザ・チェーン(Trade The Chain)のリサーチアナリスト、ニック・マンシーニ(Nick Mancini)氏は話す。

「価格の高まりは、需要の高まりと各レイヤーのサービスの拡張に直接結びついており、エコシステムは成長を続けることができる」(マンシーニ氏)

ウェブ3.0とは、世界中のネットワーク参加者によって運営され、演算、ストレージ、帯域幅、金融、アイデンティティなどのサービスを提供する、オープンで、トラスト(信用できる第三者)の必要性を最小化した分散型ネットワークとプロトコルの集まりから成るインターネットへのパラダイムシフトを指す。

例えば、イーサリアム基盤のライブピア(Livepeer)プロトコルは、動画インフラプロバイダーやストリーミングアプリケーション向けのマーケットプレースを提供する。

ファイルコイン(Filecoin)やザ・グラフ(The Graph)は、分散型ファイルストレージとデータ管理ネットワークを提供する。ヘリウムはブロックチェーンとトークンを使って、ワイヤレス通信網を提供・検証し、デバイスデータをネットワークで移動させるインセンティブを個人や小規模企業に与えている。

メッサーリのトラッカーによれば、40以上のコインが存在するウェブ3.0トークンのサブセクターの時価総額の合計は250億ドル。この数字は、オラクルプロバイダーのチェーンリンク(Chainlink)を含まないものだ。(オラクルプロバイダーは分散型金融と関連しており、時価総額は100億ドルだ)

しかし、ザ・グラフ、ファイルコイン、ヘリウム、ライブピアなどの有力プロジェクトだけを考慮すると、ウェブ3.0トークンの時価総額は150億ドルに満たない。これは、7350億ドルのビットコインの時価総額のわずか2%だ。

分散型金融(DeFi)分野も1年前にはこれくらいの規模であった。メッサーリのデータによると、DeFiのサブセクターには現在、137のトークンが含まれ、時価総額は500億ドルを超える。

メインストリームからの関心を待つ

ウェブ3.0トークンは今年、ビットコインやその他の主要コインを大幅に上回るパフォーマンスを見せているが、ビットコイン、イーサリアム(ETH)、DeFi、NFT、さらにはイーサリアムのレイヤー2のプロジェクトが、2020年10月以来受けているようなメインストリームからの関心を集めたり、浮かれたようなユーフォリア状態を経験するにはまだ至っていない。

それはおそらく、基盤となるテクノロジーが比較的複雑だからであろう。 

「ウェブ3.0は、DeFiほど簡単に理解できるものではなく、メインストリームからの認知という点では、DeFiからおそらく12カ月遅れている」と、暗号資産投資企業マルチコイン・キャピタル(Multicoin Capital)の共同創業者カイル・サマニ(Kyle Samani)氏は語る。

「NFTに基づく消費者向けアプリケーション、ソーシャルトークン、クリエーターによる収益化がこの先12カ月で成長するにつれて、このような状況は変化すると見込んでいる。例えば、オーディアス(Audius)、ミラー(Mirror)、その他多くのプロジェクトなどだ」(サマニ氏)

DeFiブームは1年前に始まり、今でもDeFiは健在だ。時価総額は2020年初期の約50億ドルから、当記事執筆時点では500億ドルを超えるところまで成長している。

DeFiには時として悪評が立つため、ウェブ3.0トークンが追いつくと、サマニ氏は考えている。例えば、米商品先物取引委員会(CFTC)のダン・バーコヴィッツ(Dan Berkovitz)委員は先日、DeFiデリバティブはアメリカでは違法であるかもしれないと語った。一方、分散型インターネットというアイディアの方は、今のところマイナス要素と結びつけられることはない。

「イーサリアムやソラナ(Solana)、IPFSなどのネットワークをクエリするためのインデックスプロトコルであるザ・グラフが悪だという人はいない。一方、既存の金融システム業界の多くの人がDeFiは悪いものだと言っている」とサマニ氏は指摘し、「ウェブ3.0が広く認知されるに従い、全般的な支持と熱狂以外のものは見込んでいない」と語った。

機関投資家の参加

メインストリームへの普及は少なくとも1年先だが、資金を潤沢にもつ投資家たちはすでに、ウェブ3.0トークンに資金を注ぎ込んでいる。例えば、マルチコイン・キャピタルの公式ウェブサイトによると、同社はザ・グラフ、ヘリウム、ライブピアに投資している。

世界最大のデジタル資産運用会社で、機関投資家がデジタル資産投資に好んで使うグレイスケール(Grayscale)は3月、ライブピアの信託を立ち上げた。同社のレイハネ・シャリフ-アスカリー(Rayhaneh Sharif-Askary)氏は先月、投資家はウェブ3.0トークンへと投資の多様化を図っていると語った。

「資産クラス内での多様化であり、投資家は価値の保管手段としてビットコインに投資し、スマートコントラクトに惹かれてイーサリアムに投資する」とシャリフ-アスカリ−氏は説明した。

「そして、それ以外のアプリケーションはそれらのネットワークを基盤として開発され、実世界の問題を解決するものだ」とシャリフ-アスカリー氏。グレイスケールのライブピア信託は、旗艦商品のグレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)と構造的には同じだと続けた。

ライブピアのLPTトークンは今年、1050%値上がりしている。Web3Indexのデータによれば、同プロトコルの週間収益は2月〜6月の間に10倍以上成長し、1万ドルを超えるまでになった。

ライブピアの共同創業者兼CEOのダグ・ペトカニックス(Doug Petkanics)氏は、オンラインストリーミングは700億ドルの市場であり、現在のインターネットトラフィックの80%を占めていると語った。

さらに、アナリストの予測によれば、その市場はこの先5年間で70億ドルから2500億ドルまで成長する見込みであると、ペトカニックス氏は続けた。メッサーリの第2四半期のレビューが指摘する通り、ザ・グラフやオーシャン・プロトコル(Ocean Protocol)の見通しも明るい。

強力なユースケースに加え、ウェブ3.0トークンの多くはStackedを通じて魅力的な利息も提供する。Stackedは、投資家が暗号資産のカストディ抜きでステーキングやDeFiから利息を得ることを可能にするプラットフォームだ。

例えば、ヘリウムのHNTトークンは現在、年率換算の名目利率が8.7%。ザ・グラフのGRTは15%、LPTは30%となっている。このような高利回りが、下記のチャートに示されたようなトークンに対する好意的なセンチメントにつながっている。

「トレーダーたちは強気になっており、それがネットワーク効果を支えている」とマンシーニ氏。「トレーダーはスターキングをしたり利益を得て、他の人たちにそのチャンスの大きさを伝えている」


ザ・グラフに対するセンチメント
出典:Trade The Chain

ビットコインだけが暗号資産ではない

投資家が暗号資産市場とビットコインを同義と考えていた時代は過ぎ去った。ビットコインは時価総額でトップを保っているが、他のコインに比べた相対的なパフォーマンスの低さは、投資家がデジタル市場により深く入り込み、より速い成長の可能性を持つ投資を見つけようとしていることを示唆している。

「1週間のデータではあまり意味がないかもしれないが、3カ月、6カ月、12カ月という単位で見れば、ビットコインから他のサブセクターへの明らかなシフトが見られ、ウェブ3.0もその1つだ」と、アルカのドーマン氏は語った。

今週発表されたアルカのリサーチメモによれば、ビットコインは今年「アップサイドキャブチャーもダウンサイドキャプチャーも不調」であった。簡単に言うと、ビットコインは4月中旬以降の市場全体の値下がりの期間中に他の主要コインを上回るパフォーマンスをするのに苦戦しただけでなく、ここ数週間で市場が回復しても、期待外れのパフォーマンスを見せているのだ。

ドーマン氏によれば、一部の新規投資家はビットコインやイーサリアムを避けて、直接他のサブセクターへと投資している。かつて投資家は、これらの2大コインを玄関口として利用していたのとは対照的な状況だ。


強気相場と弱気相場における他のコインと比較したビットコインのパフォーマンス
出典:Arca

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Why Web 3.0 Tokens Might Be the Next Hot Trade in Cryptocurrencies