揺らぐ米ドル覇権──ブレトン・ウッズ体制終了から50年

揺らぐ米ドル覇権──ブレトン・ウッズ体制終了から50年

8月15日、ブレトン・ウッズ体制終了から50年目を迎えた。主要国は第二次世界大戦後、金(ゴールド)を基準に価値が決まるドルを基軸通貨とすることに同意。しかし1971年までには、米ドルに対する信頼は損なわれ、当時のニクソン大統領はドルと金の兌換(だかん)を停止することを余儀なくされた。これにより、比較的自由に変動する「不換」通貨という現状の体制が始まった。

兌換(だかん):銀行券や政府紙幣を正貨と引き換えること。

50年も前の決断は今でも大きな意味を持っている。ここ数カ月、アメリカにおける新型コロナウイルスのパンデミック関連の給付金による大規模な支出により、ドルの安定性に対する信頼が50年前と同じように再び揺らぐのではないかという懸念が巻き起こっている。

中央銀行のバランスシートにおけるドルの割合は依然として、59%と支配的だ。しかし、その割合はゆっくりと減少しており、多くの経済的、政治的メリットも失われる恐れがある。

この先の進路をよりよく理解するために、ユーロ、円、人民元、さらにはビットコイン(BTC)などのデジタル通貨を含め、様々な通貨の中央銀行準備金としての可能性を検討している。その分析結果はまもなく公開されるが、通貨専門家に取材して学んだことからいくつか重要なポイントを取り上げてみたいと思う。

中国の野心

まず、人民元の影響力の高まりへの強い不安にも関わらず、中国は通貨に関する世界規模での野心と、国内での経済アジェンダとの間に、解決不可能な矛盾を抱えている可能性がある。中国共産党は国内投資を促すために厳しい通貨統制を維持しているが、準備金通貨は自由に取引できなければならない。

そのような難問と、中国の規制の一貫性の欠如のために、専門家はおおむね、人民元が国際的な準備金通貨としての地位をかけ上がることはすぐにはないと、懐疑的な見方だ。一方の日本は、世界的な準備金において大きな割合を占めるのに十分なほど国債を海外で売ってはいない。

今あるオプションの中では、ユーロ経済圏が背後にあること、欧州中央銀行の運営が比較的開かれて信頼できることから、ユーロがドルに対して最も手強い競合のようだ。

ユーロの地位

ユーロの準備金通貨としての可能性をさらに高めたのは、パンデミックに対する救済プログラムの資金とするため、ユーロ圏全域で債券を発行するという欧州中央銀行の決定だ。

世界的な国債の増大が、中央銀行が準備金の一部としてビットコインを保有するべきという主張の柱となっていることを考えると、皮肉なことだ。コロナウイルスは、世界的に国債の大幅な増大を引き起こし、その規模は世界のGDPの356%ともなっている。

世界が1つの国家だとしたら、この割合は警戒度最大レベルの火事のような状況だ。特にその大半が、発行国の中央銀行によって保有されているからだ。経済学者のエスワー・プラサド氏は、これは通貨の発行に当たると主張している。

個人がビットコインを保有するべきという主張は、中央銀行は必然的に、このようなインフレ的政策を通じて自国通貨の価値を下げる傾向にあるという考えに基づいている。

ビットコインの存在

同じ主張は、中央銀行に関しても展開できる。他国の国債のもたらすリスクは高まっているということだ。対照的に、ビットコインは実質的に、債券というよりはコモディティであり、見方によってはより安全である。しかし今のところ、ビットコイン価格のボラティリティが、国家規模での普及における大きな障害となったままである。

それでも、エルサルバドルが最初に足を踏み入れて以来、法定通貨としてのビットコインという考えに対する関心は爆発的に高まっている。その大半は、アルゼンチンなど、通貨が脆弱な国家から寄せられているもので、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領は先週、ビットコイン使用に対してある程度開かれた姿勢を表明した。

ここが、次なるビットコイン普及の大きな波を見るのに注目するところだと私は考えている。問題を抱えた通貨や、不適切な通貨管理の歴史を持つ小国だ。

そのような国にとって、ビットコインはまったく新しいものだ。自国中央銀行にも、敵対的な可能性を持つ第三国にも依存しない価値の補完手段なのだ。そのような国々が、ビットコインの可能性に注目しているのは明らかだ。

デイビッド・Z・モリス(David Z. Morris)はCoinDeskのコラムニスト。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:50 Years After Bretton Woods, the US Dollar’s Throne Is in Play

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