米SECの取り締まり強化に見える光明

米SECの取り締まり強化に見える光明

米証券取引委員会(SEC)のゲイリー・ゲンスラー委員長は9月14日、上院の銀行・住宅・都市委員会で証言した。委員会では、より構造化された暗号資産(仮想通貨)規制に向けたSECの計画など、様々なテーマが取り扱われた。

ゲンスラー委員長の元での取り締まり強化

業界関係者の多くが、手当たり次第で間に合わせのようにも思える暗号資産規制に対するアプローチを非難してきた中、ゲンスラー委員長は、SECスタッフが暗号資産業界に向けた新しく明確なルールを立案しようと熱心に取り組んでいると語った。

ゲンスラー委員長の発言には、特に注目すべきものが1つあった。株式を上場している暗号資産取引所のコインベースが、適切な登録をせず「証券の可能性のあるいくつものトークン」を提供していると指摘したのだ。

コインベースで取引されている資産の多くを生んだいわゆる「新規コイン公開(ICO)」の2017年の流行時には、SECが比較的無干渉主義なアプローチを取ったことを考えると、ゲンスラー委員長の発言は、コインベース、そしてより幅広く業界関係者にとってもいら立たしいものであるのは当然だろう。

コインベースやその他関係者は、SECが暗号資産に対して規制上の十分な明確性を提供することを拒んできたと主張している。

振り返ってみれば、それは悪いことばかりではなかった。ここ数年間はある意味、SECやその他の規制当局がICOプロジェクトやその他の暗号資産イノベーションを先制的に打ち切らせることはなかった。代わりに、あからさまに違法なプロジェクトを後の告発の標的として選んでいた暗黙の「免責」期間となっていたのだ。

計画中の貸付プロダクトにまつわるコインベースへの先制的な警告で見られたように、ゲンスラー委員長指揮下のSECはそのようなアプローチを取らないことが、ますます明らかとなってきている。

トランプ政権下のSEC

振り返ってみるとSECはなぜ、これほど長い間無干渉でいたのか?ゲンスラー委員長の今回の証言後、独立の金融アナリストで、ポッドキャスト『Crypto Critics Corner』の共同進行役を務めるベネット・トムリン(Bennett Tomlin)氏が興味深い考えを提示した。

「トランプ政権下のSECで多くのICO発起人が恩恵を受けたと直感的に感じている」と、ツイートしたのだ。

政府による管理をより少なく、個々の責任をより大きくする方に共和党のイデオロギーが傾いていることを考えれば、これは共和党政権全般に言えることだろう。しかし、トランプ政権に特有の心配な要素もあった。

その一例が、トランプ元大統領の元首席戦略官スティーブ・バノン氏と、多様な暗号資産プロジェクトに大きな役割を果たしたブロック・ピアース(Brock Pierce)氏とのつながりだ。ピアース氏が関わったプロジェクトは、今振り返ってみれば、ますます疑わしいものとなっている。

バノン氏とピアース氏は、ビデオゲーム向けのデジタル資産の販売で両者ともが先駆者となっていた2000年代中頃から、協力し合うようになった。他の多くの人と同じようにピアース氏も、ゲームから徐々に暗号資産へと導かれ、Block.Oneという暗号資産企業の共同創業者となった。

Block.Oneは、史上最大規模とされるICOを行い、EOSと呼ばれるイーサリアムの競合となるとされたプロジェクトに、44億ドルの資金を調達したとされる。

このICOはその後、実質上詐欺的なものであったと言われるようになった。

Block.Oneは2019年、未登録証券の販売に対して2400万ドルの罰金を支払ったが、当時多くの人はその罰金を、調達された資金の額からして、滑稽なほどの軽いお仕置き程度のものと考えた。

そして、EOSとBlock.Oneによるさらに深刻と思われる不正行為は、規制当局に追求されていない。研究者らは先日、調達額のうち8億ドルは、寄付されたイーサ(ETH)を新しい寄付として「リサイクル」した結果として生まれたものだということを突き止めた。

このような数字の操作は、より多くの本物の投資家にBlock.Oneへと資金を提供するおとりとして役立ったはずだ。しかしそれから3年、EOSは技術や金銭上の約束を果たすことがおおむねできておらず、現在の時価総額はわずか47億ドルと、EOS支援者にとっては莫大な損失、あるいは機会費用となっている。

同プロジェクトの技術責任者で、一時はヴィタリック・ブテリン氏のような天才と持ち上げられたダン・ラリマー(Dan Larimer)氏は今や、暗号資産業界から姿を決してしまったに等しい。つまり、初期の暗号資産投資の多くが、テクノロジーやエコシステムを前進させることなく、事実上消えてしまったということだ。

トランプ政権時代のSECと、暗号資産の資金調達者たちの間に明白な結託があったと言っているわけではない。しかし、ゲンスラー委員長下でより積極的となっている規制について騒がれる中で、この点は心に留めておくべきだ。

トランプ政権時代のSECはある意味、居眠り運転をしていたようなもので、取り締まりとして手厳しくみなされるかもしれないが、ゲンスラー委員長が約束する本当の明確性は、適切に行われれば、業界にとって最終的にはプラスとなる可能性もあるのだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:ゲーリー・ゲンスラーSEC委員長(CoinDesk)
|原文:The Upside of a Gensler-led Crackdown

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