フェイスブックのシステム障害で浮き彫りになる関心のシフト

中央集権化は、単一障害点である。インスタグラムやワッツアップを含む米フェイスブックが運営するサービスで5日、5時間以上にわたってシステム障害が発生した時、そのことが浮き彫りとなった。

インターネットの深いレベルにおけるルーティングの問題に起因する今回の障害は、ウェブが「存在のほとんどすべての側面」にどれほど組み込まれているかを思い起こさせたと、ニューヨーク・タイムズのレイモンド・ゾン(Raymond Zhong)記者は指摘した。小売業者、メディア、医療機関、さらには宗教的な礼拝さえも、世界中で混乱に陥ったのだ。

暗号資産インフルエンサーたちはこの機を捉え、中央集権的な巨大ソーシャルメディアを批判した。今回のシステム障害は間違いなく、分散型の代替オプションを支持する主張を強化するものである。分散型であれば、一段と強いレジリエンス(回復力)を提供したり、自分のデータを保有し、好きな時に別のプラットフォームへと移動させられる力をユーザーに約束するかもしれない。

ソーシャルメディア帝国の凋落

しかし、今回の一件には別の教訓もある。フェイスブックは下り坂にある企業であり、それはウェブ2のビジネスモデル全般も同様だ。フェイスブック、ツイッター、アップル、グーグルという「壁に囲まれた」ビッグテックが自らの境界をすり抜け、世界にこれほど組み込まれているのに、同時に日々その重要性を失っていることは皮肉である。

フェイスブックがユーザーに対して有害な影響を持つことを知っていたとする、新しい告発者の証言を元にしたニューヨーク・タイムズの記事『Facebook Is Weaker Than We Know(フェイスブックは私たちが思っていうより弱い)』の中で、コラムニストのケビン・ルーズ(Kevin Roose)氏は、以下のように主張した。

「フェイスブックの若年ユーザーたちは、スナップチャットやティックトックへとシフトし、より高齢のユーザーたちは、反ワクチンのミームを投稿したり、政治について論争を繰り広げている。フェイスブックのプロダクトの一部は大いに縮小しており、ユーザーを憤慨させたり、自意識過剰にさせているだけのプロダクトも存在する」

フェイスブックが台頭したのは、ユーザーがコンテンツを読むだけでなく、それとやり取り出来るようになった、ウェブの大転換「ウェブ2」の初期の頃であった。プラットフォームとしてのフェイスブックはかつて、楽しく時間を過ごせる場所であった。クリエーターが評判やビジネスを築き、「世界がつながる」方法を提供したのだ。

しかし、ウォール・ストリート・ジャーナルが『The Facebook Files(フェイスブックファイル)』で報じた通り、そのような時代は終焉を迎えている。そのことを痛感させる例の1つを紹介しよう。

フェイスブックの幹部は、子供たちという「価値はあるがまだ掘り起こしていないユーザー層」を捉えるために、子供たちの遊びにフェイスブックのプラットフォームを組み込む方法について会議を開いていたと報じられているのだ。

デジタルの文脈においては、関心が鍵となる。フェイスブックは長年、しばしばユーザーの心の健康や、時には民主主義を犠牲にしてまで、人々にログオンさせた状態を保つための悪質な慣習を繰り返してきた。

フェイスブックのアルゴリズムは、自己宣伝、「見張り合い」、そしてフェイクニュースにインセンティブを提供する。フェイスブックがマーケットシェアを維持するのに苦戦しているのも不思議ではない。

関心の向かう先は?

驚くようなデータや評価額が示すように、多くの関心が暗号資産というエキサイティングな世界へと代わりに向けられてきた。

特に、新型コロナウイルスのパンデミック期間中に、トークンでイールドファーミングを行う方法を学んだり、(ディスコードやテレグラムなどのチャットアプリの)暗号資産(仮想通貨)専門のルームでチャットをしたり、NFT(ノンファンジブル・トークン)で自己表現を始めたミレニアル世代やベビーブーム世代に、この傾向が顕著である。

ツイッター上での暗号資産支持の表明や、NFTコレクション「Bored Ape」をプロフィール写真に使うことなどは始まりに過ぎない。フェイスブックの凋落は、分散型の代替オプションの成功に直接つながることはないかもしれない。

MastodonやMindsなどの分散型プラットフォームは、ユーザーを惹きつけ、維持することに苦戦しているし、ツイッターの分散型プロトコル「Blue Sky」がどんなものになるかは、誰にも想像できない。

しかし、ユーザーが自らの手でウェブを分散化することを選択する、大きなトレンドが起きている。代替プラットフォームは、すべて合わせたユーザー数でもフェイスブックに敵わないかもしれないが、それでも人気は高まっている。(フェイスブックは6月、同社プロダクトの少なくとも1つを使う人は1日に世界で平均27億6000万人いると自己申告した)

暗号資産はいまだに、そのイメージにつきまとう懸念に悩まされているが、多くの人たちが、ウェブ3の新しいツールへと集まってきている。

「アクシー・インフィニティ(Axie Infinity)」のような分散型ゲームや、NFTの「NBA Top Shot」は著しく成長している。書き手たちは、トークンベースのプラットフォーム「Mirror」に集まっている。ブロックチェーンベースのストリーミングプラットフォーム「Audis」は、音楽業界における本格的な存在となっている。

ユーザーが力を持つということは、必ずしも暗号資産を意味しない。多様性に向けた現在のトレンドの最も大きな恩恵を受けているのはおそらく、SubStack、ディスコード、クラブハウスなどの分散型代替プラットフォームだろう。

ウェブ3を大まかに定義すれば、人々が関心に基づいて自ら集まることを選ぶアプリとプラットフォームの群島のようなものだろう。1つが海に沈んでも、世界全体を破滅させるニュースとはならないはずだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:AlexandraPopova / Shutterstock.com
|原文:Web 3 Is Where the Young People Are