ビットコイン投資、3つの理念を考える【オピニオン】

暗号資産(仮想通貨)投資の人気が続く中で、ビットコイン(BTC)は明らかに1番人気だ。時価総額はトップ、インフラも最も豊富で、歴史も最長、分散化の度合いも極めて高い。

ビットコインへの投資を考える3つの方法について紹介しよう。「革命としての」ビットコイン、「マクロ投資としての」ビットコイン、「マイクロ投資としての」ビットコインだ。

ビットコインに投資するべき理由を理解するだけではなく、一部の新しいアイテムやメディアでの盛り上がり、ソーシャルメディアの投稿の影響を理解できるように、これら3つの投資テーゼを検討していく。

これらのカテゴリーに当てはまる人たちが発する記事や投稿を読むことは、避けられないだろう。彼らの考えの背景を理解しておくことは、あなたが投資を実践する上でも役立つはずだ。(もちろん、あらゆる投資家やテーゼをこれら3つのどれかに分類することはできないが)

革命としてのビットコイン

これがビットコイン投資のオリジナルのテーゼであった。ビットコインブロックチェーンのホワイトペーパーが2008年に発表されて間もなく、人々は自宅のコンピューターを使ってビットコインマイニングを開始。この新しい通貨が、将来のどこかの時点で必要とされるだろうと感じていた。

数万ドルもの価値がつくとは考えていなかったし、機関投資家による投資という観点では考えてもいなかっただろう。暗号資産カストディアンが登場するずっと前から、プライベートウォレットにビットコインを保管し、ピザの購入やダークウェブ上のマーケットプレイス「シルクロード」での取引に使っていたのだ。

その過程で、政府、検閲、力を持ちすぎた銀行に対するヘッジとしてビットコインに投資する人たちが現れ始めた。

革命としての投資というテーゼは、法定通貨、政府、銀行が破綻したり、行き詰まった場合には、ビットコインに頼れるというものだ。ビットコインは完全に分散化されているため、その価値は中央銀行によって決定されず、操作される可能性もなく、送金を制限されることもない。

アメリカや先進諸国の大半では、このような必要性はあまりないかもしれないが、政府が国の借金を支払うために自国通貨の価値を繰り返し切り下げたり、銀行からの引き出しに制限をかけるような国では、価値がある。最近では、トルコ、アルゼンチン、ニカラグアなどの例があった。

これらの国に私が住んでいたとしたら、もしくは、世界の権力者たちの多くを私が信頼していなかったとしたら、ビットコインを保有して、ハードウォレットでオフライン保管をするかもしれない。私のビットコインは、私がいるところにあると知って安心できるのだから。

革命としての投資というテ-ゼは、モノやサービスと交換するためにビットコインが必要となるかもしれないと考えるからだけではなく、現行の政府や銀行システムへの不満を示すためかもしれない。私の富の創造や財産の増加に、政府や銀行を参加させたくはない、ということだ。

このような投資テーマは、必要にかられてのものかもしれないし、革命のためかもしれないが、その支持者たちは、市民が彼らもビットコインを保有するべきと理解できるようにすることも怠らない。

その主張の多くは、価値を後押しする実際のマクロ経済よりも、強力な存在へのヘッジとして、政治的意見表明としてビットコインを保有する必要性に依拠している。

マクロ投資としてのビットコイン

この投資テーゼは、ビットコインを価値の保管手段として捉え、アメリカや世界で展開するマクロ経済的要素を比較する。その背景にある考えは、法定通貨の供給増加によってインフレが高まるに伴って、供給量が固定されているビットコインの価値は劇的に高まるだろう、というものだ。

このテーゼは、多くのビットコイン投資家が長年にわたって従っているものだが、2020年、伝説的なマクロヘッジファンドマネージャーのポール・テューダー・ジョーンズ(Paul Tudor Jones)氏が、ポートフォリオの一部をビットコインに分配すると発表した時に、非常に人気が高まり、よく知られるものとなった。

ジョーンズ氏の後には、スタンレー・ドラッケンミラー(Stanley Druckenmiller)氏やビル・ミラー(Bill Miller)氏というマクロ投資家たちが続いた。

新型コロナウイルスのパンデミックを原因とする、アメリカや西欧世界の大半における法定通貨の増刷によって、経済に数兆ドル相当のお金が流れ込み、インフレの可能性が加速した。今、ついにインフレの証拠が目に見えるようになっており、このビットコイン投資テーゼを後押ししている。

インフレヘッジや価値の保管手段として、なぜビットコインを保有するべきなのか?

現在では、1斤のパンを1ドルで買えると仮定しよう。1年後、同じ1斤のパンが1.05ドル、つまり5%のインフレになったとしたら?これは、より多くのドルをシステムに追加したのに、パンは追加しなかったために起こったことだ。そのため、パンのドル建ての価値が高まったのだ。

すべての資産を(事実上利子のつかない)銀行でドルで保有していたとしたら、1ドルでは1年後に1斤のパンを買うことができない。そうなると考えていたとしたら、パンのように、供給量に限りのある資産にドルを交換して保管したいと思うだろう。

過去には、その資産は金(ゴールド)だったかもしれない。しかし現在では、供給が非常に限られ、購入や安全な保管が(金と比べると)非常に簡単な資産があるのだ。

ビットコインで自分の資産を保管して、1年後には、少なくともパンと同じくらいその価値が高まると推定する。そうすると、パンを買いたければ、ビットコインを少なくとも1.05ドルで売却することができるのだ。

その様な投資を世界経済全体の規模に広げてみれば、マクロ投資の大物たちが、保有資産の2〜5%をビットコインに分配したいと考える理由が見えてくるだろう。彼らはインフレを予測しており、ドルの価値低下に対して、価値が高まるような供給が限られた資産を欲しているのだ。

インフレの高まりがビットコインの価値の高まりの可能性につながっている、あるいは、保険会社や年金基金がビットコインに投資している、といった記事や投稿を読んだとしたら、通常はこのテーゼが使われているのだ。

ミクロ投資としてのビットコイン

前述の投資テーゼも利用しながら、ビットコインにどのように投資を分配するのか考えていくのがこのテーゼだ。

リスクプロフィール、技術的能力、投資期間に基づいて、ビットコインへの分配だけでなく、いつ取引するか、どれくらいの頻度で投資配分の見直しをするかといった、資産の取り扱いを評価することもできる。

インフレヘッジのためにビットコインに投資する機関投資家では、多くの場合投資期間は非常に長いか、無期限であることを覚えていこう。個人投資家ならば、各自異なる投資期間があるだろう。

例えば40代前半の人ならば、インフレが退職に備えた資金に与える影響について考えるだろう。前述のインフレヘッジテーゼを信じるとしたら、ビットコインは退職後の計画の一部となって、リスク許容度に応じた合理的な分配をすることになるだろう。

ビットコインはそのボラティリティによって、個人投資家のための投資先ともなり得る。ビットコインは他の資産と相関関係を持たず、流動性が高いため、四半期ごとに配分を見直し、より正常化されたポートフォリオ全体のリターンを実現できるかもしれない。

このミクロ投資テーゼは、ビットコイン価格に影響を与え得るものを検討して、より限りのある投資期間、必要な経費、伝統的資産を伴う個人のポートフォリオに合わせて変化させていくものだ。

投資テーゼをレンズとして使う

ビットコインについて学びを深めるに伴って、インフルエンサーやアナリスト、ビットコインファンがビットコインを保有する/しない根拠について語るのを耳にするのは間違いない。

これら3つの投資テーゼを理解すれば、それらの意見や分析がポートフォリオや金銭事情にどのように影響を与えるかを見極める能力を持つことができる。

これらの投資テーゼのレンズを通じて、インフルエンサーやアナリストの意見、ニュースを見ることができれば、投資について重要な決断をする備えをより良く整えることができるだろう。

|抜粋翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Revolution, Macro and Micro: Three Ways to Look at a Bitcoin Investment