ビットコインとイーサリアムのクジラで“大転換”──まだ主役の座は譲らない【Krakenリサーチ】

11月に入って好調なのは、主要アルトコインだ。

イーサリアム(ETH)やレイヤー1としてライバルのソラナ(SOL)、ポルカドット(DOT)は連日、過去最高値を更新している。一方で過去最高値から2週間ほどたったビットコイン(BTC)は、低空飛行を続けている。

暗号資産(仮想通貨)市場全体の時価総額に占める割合(ドミナンス)を見てみると、ビットコインは10月に3カ月の高水準である47.75%近くまで上昇した後、月末にかけて44.1%まで低下した。ビットコインのモメンタムは衰えたようにも見える。

歴史的に、ビットコインの上昇が一服するとアルトコインのターンがくる。今回も同じ現象が起きているのか?ビットコインとイーサリアムの大口投資家を指す「クジラ」の動向を見ると、必ずしもそうは言えないことが分かる。

「大転換」

クラーケン・インテリジェンスは、100BTC以上を持つウォレットをビットコインのクジラ、1000ETH以上を保有するウォレットをイーサリアムのクジラとそれぞれ定義している。

(出典:Kraken Intelligence「ビットコインのクジラ(水色)とイーサリアムのクジラ(紫色)」)

10月後半、ビットコインのクジラがさらに蓄積を進める一方、イーサリアムのクジラはエクスポージャーを減らしたことが分かる。ビットコインのクジラは10月初め頃の1187万1000BTCから月末には1191万2000BTCに増やした。逆にイーサリアムのクジラは9581万8000ETHから9565万7000ETHに減らしている。

4月以来半年ぶりの過去最高値を更新したことに加えて、米国初となるビットコイン先物ETFが承認されたことから、楽観論が広がった可能性があると考えられる。

機関投資家の資金の流れ

また、米グレイスケールの投資信託など、ビットコインとイーサイリアムの投資商品への機関投資家からの資金の流れを見ると、10月にビットコインには歴史的にも高い水準の資金が流れたが、イーサリアムへの流入額はわずかだった。

(出典:Kraken Intelligence「ビットコインへの資金流入額(紫)とイーサリアムへの資金流入額(ピンク色)」)

ビットコインへの資金流入額は、10月22日の週に14億7000万ドルを記録。過去最高を更新した。年初来では、ビットコインへの資金流入額は63億7000万ドルで、イーサリアムへの資金流入額は10億5000万ドル。

こうした状況から、ビットコインは主要アルトコインにまだ主役の座を渡していないということが言えるかもしれない。11月に入ってもETFなど伝統的な金融商品からの資金流入が続けば、ビットコインは次の最高値更新に向けて順調に上昇し、主要アルトコインのパフォーマンスを上回る可能性がある。


千野剛司:クラーケン・ジャパン(Kraken Japan)代表──慶應義塾大学卒業後、2006年東京証券取引所に入社。2008年の金融危機以降、債務不履行管理プロセスの改良プロジェクトに参画し、日本取引所グループの清算決済分野の経営企画を担当。2016年よりPwC JapanのCEO Officeにて、リーダーシップチームの戦略的な議論をサポート。2018年に暗号資産取引所「Kraken」を運営するPayward, Inc.(米国)に入社し、2020年3月より現職。オックスフォード大学経営学修士(MBA)修了。

※本稿において意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、所属組織の見解を示すものではありません。


|編集・構成:佐藤茂
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