NY連銀、イノベーション・センター設立──国際決済銀行と連携

ニューヨーク連邦準備銀行は29日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)、ステーブルコイン、クロスボーダー決済など、新しい金融技術を開発・テストするためにニューヨーク・イノベーション・センター(NYIC)を設立したと発表した。

NYICは、ニューヨーク連邦準備銀行と国際決済銀行(BIS)イノベーションセンターの戦略的パートナーシップによるもの。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、NYIC設立を記念したバーチャルイベントで、NYICは中央銀行間の協力と専門知識の共有を促進すると述べた。

「今回のパートナーシップは特に、中央銀行デジタル通貨をはじめとするデジタル通貨の分析と、クロスボーダー決済をより早く、より安価にすることに重点を置いた、現行の決済システムの改善をサポートすることになる」(パウエル議長)

5つの重点分野

リリースによるとNYICは次の5つの分野に重点的に取り組んでいく。監督・規制技術、金融市場インフラ、未来の通貨、オープンファイナンス、気候変動リスクだ。NYICの責任者は、元プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のパー・フォン・ゼロウィッツ(Per von Zelowitz)氏。

ゼロウィッツ氏は、5つの重点分野の1つ「未来の通貨」は、NYICが取り組むデジタル通貨に関連していると述べた。またCBDCは重要課題だという。

「さらにステーブルコインや暗号資産など、NYICの対象領域に関連する可能性のある分野も含まれる」(ゼロウィッツ氏)

NYICは、シンガポール、スイス、香港などに設置されているBISイノベーションハブと連携していく。今年はじめ、香港のイノベーションセンターは、複数のCBDCが参加したプロトタイプを開発、デジタル通貨とブロックチェーン技術が、安価で安全なクロスボーダー決済を促進する可能性を示した。2022年、ゴールドマン・サックスやHSBCなど、22の大手金融機関は「mBridgeプロジェクト」と呼ばれる、このマルチCBDCプラットフォームを複数の地域で試験運用する予定だ。

「ハブはシンクタンクではなく、実験室。新しい技術を使って概念実証(PoC)やプロトタイプを構築し、コミュニティ全体で技術やプロジェクトのアイデアを検討するためのハッカソンを開催している」とBISのアグスティン・カルステンス(Agustin Carstens)総支配人は述べた。

BISはカナダやEUにもハブを開設するという。

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:ニューヨーク連邦準備銀行(Shutterstock)
|原文:NY Fed Launches Fintech Research Wing With BIS Help