「フェイスブックを信用する必要はない」リブラの責任者、これまでの疑問に回答

フェイスブックの仮想通貨プロジェクト「リブラ(Libra)」を率いるデビッド・マーカス(David Marcus)氏は、同プロジェクトにまつわる懸念を解消しようとしている。

マーカス氏は、2019年7月3日(現地時間)、同プロジェクトに関する「いくつかの質問や誤解」に対する回答をフェイスブックに投稿した

同氏は、今月16日に開催される米連邦議会上院銀行住宅都市委員会との公聴会、17日に開催される米下院金融サービス委員会との公聴会のどちらにも証人として参加することも認めている。

同氏は、3日の投稿の中で、リブラは実際のところ非中央集権的なのか、なぜリブラ協会は憲章を作成していないのか、リブラは本当にファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を実現できるのか、などの議員や観測筋が提起した疑問に対して答えようとしている。

最も特筆に値するのは、同氏がフェイスブックに対する不信感を暗に認めたことかもしれない。

「要するに、リブラの恩恵を得るためにフェイスブックのことを信用する必要はない」とマーカス氏は記している。また、以下のようにも述べている。

「フェイスブックは、リブラ・ネットワークに対して特別な責務を持つわけではありません。しかしユーザーが、フェイスブックが提供するウォレット「カリブラ(Calibra)」に対して、好意的な反応をしてくれることを願っています。我々は、金融データの分離に対するアプローチを明確にしてきました。我々は、コミットした内容に沿って行動し、真の有用性を提供するために努力するつもりです」

フェイスブックがリブラのホワイトペーパーを発表したのは6月18日のことだが、世界中の規制当局は即座に厳しい反応を示した。

同氏は、消費者データ保護に関する懸念やリブラが銀行口座を持たない人口に銀行口座を与える解決策とならないだろうといった意見など、リブラに対して集まっている否定的な意見についても所々で触れている。

同氏は「銀行口座を持たない人がいるのは、そもそもそのような人々が預けるお金を持っていないからであり、リブラは解決策とならないと主張している人がいました」と述べつつも、このような説明は見当違いだとしている。

同氏の考えによると、リブラは「40ドルのスマートフォンとインターネット接続」を持ってさえいれば、誰でも幅広い種類の金融サービスへアクセスできるようにする。

フェイスブックが、カリブラの保管する金融データを閲覧することはないと、同氏はカリブラの公開書類と一貫した内容を述べた。

「ユーザーには、リブラの使用やネットワークにアクセスするためのさまざまな手段が提供されるでしょう。ユーザーは、カストディー型、ノンカストディー型問わず、完全な相互運用性を持つさまざまなウォレットを使用できるようになります。つまり、異なる企業のウォレット間で支払い、受け取りだけでなく、自己管理型のウォレットの使用ができるようになるということです」

同氏は、リブラがフェイスブックに与える恩恵として、リブラの構想が順調に進めば、フェイスブックのエコシステム全体での商取引が活性化されることを挙げている。そして、商取引数が増えれば、広告効果が高まり、その結果、企業が広告に投じる金額が増えると同氏は語った。

「これからもさまざまなコミュニティーやステークホルダーと関わっていくことを楽しみにしています。我々はあなた方のフィードバックが聞きたいです。また、過ちのないように進めていくために、時間を割いていくつもりです」

非中央集権化は時間とともに

リブラはローンチ当初は少数の企業によって運営される予定だが、徐々に非中央集権化を進めていくとマーカス氏は述べている。

ローンチ後にリブラネットワークを管理・監視する運営組織、リブラ協会(Libra Association)には、28社が加盟しており、フェイスブックはそのうちの1社。マーカス氏によると、ネットワークのローンチ後、フェイスブックがリブラネットワークに対して持つ力は、その他加盟企業と同等となる。

「リブラにはフェイスブックしか関わっていないように思われやすいが、そういうわけではない」と同氏は語り、以下のように説明した。

「しかし、規制の存在する環境で稼働でき、基礎的な段階にあるネットワークの健全性を確保するために必要な運営ノウハウを持つ、信頼できる企業とともに始めることが重要でした。地理的に分散しており、産業も多岐にわたる100社に運営されるというのは、かなり非中央集権的だと私は考えます。また一方で、その他ブロックチェーン上でマイニングプール用ソフトウエアを稼働させている人々に力が集中しているという事実は、見過ごされがちです」

「しかし、リブラよりも非中央集権的なブロックチェーンが存在していることはまぎれもない事実であり、リブラ協会が、リブラの非中央集権化を徐々に進めていかなくてはならないことに疑問の余地はないです」とも述べている。

フェイスブックがリブラに対して持つ力を制限するためにも、リブラ協会加盟企業全員が、リブラ協会の運営ルールの制定および「その他の重要な決断」に携わっていく計画だと同氏は述べている。

翻訳:町田優太
編集:浦上早苗
写真:David Marcus image via CoinDesk archives
原文:Facebook’s David Marcus: Libra Crypto Users Won’t Have to Trust Us