エルサルバドル、ビットコインを法定通貨化【市場分析2021】Vol.7

2021年の暗号資産(仮想通貨)市場を振り返り、グローバル金融の中で急速に進化している市場の重要な教訓に焦点を当てるシリーズの7回目(最新価格は下部に掲載)。

前日の記事では2021年上半期にアルトコインが上昇し、ビットコイン(BTC)のドミナンスが3月から5月にかけて急激に低下したことを振り返った。だがビットコインの横ばいパターンは長くは続かなかった。エルサルバドルは従来、法廷通貨として米ドルを使ってきたが、

これまで国の主要通貨として米ドルを使用していた中米の小国エルサルバドルがビットコインを法定通貨と定めたことで、ビットコインは2カ月にわたる3万ドル付近の価格帯から脱した。

エルサルバドルの買い付け

6月、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領は、ビットコインを法定通貨にすると発表した。法定通貨なので、キャピタルゲイン税はかからない。

「1. 素晴らしい天候、ワールドクラスのサーフィンビーチ、ビーチ付き不動産の販売
2. 固定資産税がない世界でも数少ない国
3. 法定通貨になるので、ビットコインにキャピタルゲイン税はかからない
4. 暗号資産起業家に即座の永住権

ビットコインの多くのファンにとっては、グローバル通貨としての可能性は長く期待されていたものであり、トレーダーはエルサルバドルのニュースに反応、ビットコインは3万ドル付近の安値から9月初旬には5万ドル近くまで約70%上昇した。エルサルバドルでは9月、ビットコインが法定通貨となった。

ビットコイン下落

実際にエルサルバドルでビットコインが法定通貨となると、価格は下落し始めた。典型的な「噂で買って事実で売れ」パターンとなった(似たようなことは4月、コインベースがナスダックに上場した際にも起きていた)。

ブケレ大統領はビットコイン価格が下落しても、押し目買いをする準備ができているとツイートした。ツイッターやレディット(Reddit)などのソーシャルメディアプラットフォームでは、エルサルバドルのビットコイン法定通貨化を支持し、少量のビットコイン購入を呼びかけるユーザーが増えていたとブルームバーグは伝えた。多くの投資家はすでに、エルサルバドルの動きによってビットコインが上昇する可能性に賭けていた。

「エルサルバドルは最初の200コインを購入した。

我々のブローカーは期限までにさらに購入していく」

9月13日、米ソフトウェア会社のマイクロストラテジーが5050ビットコインを約2億4200万ドル(約280億円)で追加購入した。それでもビットコインは下落し続けた。

ビットコインは5万ドルから4万ドルまで下落し、9月を下落傾向で終えた。

中国の不動産開発会社・恒大集団が債務不履行に陥る懸念が高まり、株式や暗号資産などの投機的資産を揺るがした。投資家のリスク志向の低下も、ビットコインが9月、低下傾向となる一因となった。

暗号資産トレーダーが7月から8月の価格動向から得た教訓は、エルサルバドルがビットコインを法定通貨化すると発表しても、5万ドルまで上昇させるには不十分だったということだった。中国における信用不安とともに、ビットコインの株式市場との相関性は高まった。

それでも9月の7%近いビットコインの下落は、4月と5月の約50%の暴落に比べれば、まったく深刻ではなかっただろう。その後、多少の変動を経て、ビットコインは再び2020年を大きく上回る水準で安定し、一部のトレーダーは年末までにビットコインは10万ドルになると言い始めた。

最新価格

●ビットコイン:47,239ドル、−1.0%
●イーサリアム:3,7234ドル、−2.5%

●S&P500:+0.1%
●ゴールド:1,805ドル、−0.3%
●米国10年債:1.553%

|翻訳:coindesk JAPAN
|編集:増田隆幸
|画像:エルサルバドルの首都サンサルバドル((Esaú González, Unsplash)
|原文:Market Wrap Year-End Review: El Salvador Adopted Bitcoin, Then Bought the Dip