ブロックチェーンゲームの静かなる熱狂──三国志の“あの”キャラクターが「16万円」

三国志で知られる軍師の諸葛亮がおよそ16万円で取引されている──。現在、ブロックチェーンを基盤としたロールプレイングゲームの「マイクリプトヒーローズ(マイクリ)」が、人気を集めている。映画館ではパブリックビューイングが行われ、頻繁にユーザーイベントが開かれ、ゲームのキャラクターやアイテムなどのアセットには高い値段がついている。

マイクリは、登場するキャラクターや武器が仮想通貨のイーサリアム(ETH)で取引されているが、ローンチから半年で12000ETHを売り上げた。日本円に換算すると時価で約4億円。ブロックチェーンゲームは、これまでのゲームと何が違うのか?ブロックチェーンを活用する理由とは?6月26日、都内で開かれたゲーム×ブロックチェーンのイベントを取材した。

マイクリは仮想通貨のイーサリアムを用いたブロックチェーンゲームで、歴史上のヒーローや武器などのアイテムを集めてパーティを編成し、敵とバトルするというもの。

集めたヒーローやアイテムは、ブロックチェーンを使って管理される。7月4日現在、ブロックチェーンのアプリケーションの情報サイト「Dapps.com」によると、ユーザー数では世界一。

Dapps.comより

インターネット上の「実物」

ヒーローやアイテムには、NFT(非代替性トークン=Non-Fungible Token)と呼ばれる、唯一性をもたせたトークンが使われている。それぞれのトークンには存在する上限個数が設定されており、設定後、その上限はマイクリの運営サイドでさえも変更することはできない。NFTは複製できないため、インターネット上では「実物」のような性質をもつ。

希少なアイテムを所有するトッププレイヤーを含むエコシステムが形成されつつあると、マイクリを製作しているdouble jump.tokyoのエンジニア、満足亮氏は述べた。収集した希少なアイテムやヒーローを使ってバトルを楽しむ人もいれば、アイテムのレベルを上げて、それを売る人もいる。また、ユーザーイベントは毎日のように開催されている。

満足氏は、同ゲームを始めたユーザーのうち、7日を経てもその8割が利用を継続していると紹介し、「従来のゲームと比べると驚異的なDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)だ」と強調した。

double jump.tokyo・最高経営責任者(CEO)の上野広伸氏は6月、「MCH+」という新たな取り組みを発表。ブロックチェーンを用いたゲームの開発支援などを展開し、アセット中心のNFTエコシステムを広げていくという。

ゲームの中のアイテムを外に持ち出す

ブロックチェーンゲームは、アセットをゲームの外に持ち出せることに特徴がある。アイテムなどはゲームの中だけでなく、ゲームの外で流通可能だ。マイクリのアイテムやヒーローも同様に、「Opensea」などのデジタルアイテムの売買プラットフォームで流通している。

メタップスアルファの「ブロックチェーンゲーム市場レポート(2019年5月)」によると、デジタルアセットの流通額は5月に約1億2700万円相当に及んだ。

満足氏はブロックチェーンゲームのNFTアイテムは、ユーザーが保有できるデジタルなアセットだと説明。「ゲームアセットをユーザー間で譲渡したり、デジタル資産の取引所で自由な取引ができるのは今までにない体験」

ブロックチェーン開発企業のConsensusBaseでCEOを務める志茂博氏は、ブロックチェーンゲームのメリットを以下のように整理した。

ブロックチェーンゲームの設計

イーサリアムでは現在、スケーラビリティや手数料、データサイズなどの問題があることから、ブロックチェーンゲームを設計する際には、イーサリアムネットワークの外で処理を行う必要がある。志茂氏は、ブロックチェーンを使う箇所と使わない箇所の見極めが大事だと述べた。

構造図。注:マイクリは現在、サイドチェーンを使っていない。

満足氏も同ゲームにおけるブロックチェーンの活用方法を説明。マイクリの場合、ブロックチェーン上でアセットの所有情報を管理したり、イーサリアムを使った決済機能を提供している。その上で、データサーバーを用いてゲーム内でアセットを活用しているという。

ブロックチェーンゲームには、依然としてユーザビリティの問題が残る。ゲームに必要な仮想通貨を得るためには取引所などで購入する必要があり、自らウォレットを管理する際の秘密鍵の取り扱いは容易ではない。

志茂氏は、「現在のブロックチェーンゲームは、仮想通貨を知っている人に向けてゲームを作っている」と指摘する。これらのハードルを乗り越えた人たちに向けてゲームを開発している以上、ユーザー数の増加は限定的になる。しかし、将来的には、ビジネス面や技術面からの解決がなされるだろうと加えた。

文・写真:小西雄志
編集:佐藤茂