2022年に注目すべき5つの通貨トピック

先週は、とてつもなく忙しくニュースに溢れた2021年で、私たちの通貨の考え方を変えた5つの現象を紹介した。今回は、この先1年を見据え、通貨の考え方がさらに変化する可能性について見ていきたいと思う。

デジタルの未来で誰が通貨を発行する?

中央銀行デジタル通貨(CBDC)を携えた政府が、通貨システムを独占し続けるのだろうか?既存の政府通貨の価値と連動したステーブルコイン(テザーなど)、あるいは独自のトークンによって、民間企業の通貨が席巻するようになるだろうか?

それとも、ビットコイン(BTC)などの分散型通貨が、支配的なものになるだろうか?はたまた、複数の通貨が共存する未来において、それらすべてが互いに競い合うのだろうか?

もちろんこれらの問いは、この先1年で答えが出るようなものではない。しかし、様々な要素によって、議論は激化する可能性が高い。

中国は今年2月、冬季オリンピック期間中にデジタル通貨電子決済(DCEP)をデビューさせる。アメリカは、ステーブルコイン発行事業者向けの規制を整備中だ。そして、支払いのための分散型暗号資産(仮想通貨)の普及は、ビットコインのライトニング・ネットワークといったスケーリングシステムの進展にも助けられ、拡大を続けていく。

政策議論の激化

2021年は、暗号資産の規制において大きな年であった。アメリカでは、インフラ法案に含まれた暗号資産課税条項をめぐる上院での議論、ビットコイン先物ETF(上場投資信託)の承認といった画期的な出来事があった。2022年には、規制上の圧力がさらに激化する可能性が高そうだ。

どんな展開が見込めそうか?まず、米証券取引委員会(SEC)が、トークンは未登録の証券かどうかについて、その立場を明確にし、分散型金融(DeFi)トークンの開発者たちも標的になる可能性がある。

議会においては、新たに勢いづいた暗号資産支持者たちが、暗号資産に関連する証券やその他の法律の包括的な見直しを求める動きも強まるだろう。しかし、新しい革新的なテクノロジーに関して明確さをもたらす立法措置のモデルとして引き合いに出されることもある、1996年の電気通信法ほどに広範なものとはならないだろう。

昨年承認された先物価格連動型ビットコインETFに続く当然のステップとして期待されるのが、スポット価格に連動するビットコインETFだ。SECは現物価格に連動するETFを承認するのだろうか?

ステーブルコイン発行事業者が、アメリカの銀行法にどれほど拘束されるかについても、明確性が得られるかもしれない。さらに、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)といった組織によって、アンチマネーロンダリング関連の国際的ルールがさらに一体化されるだろう。

権力者たちが、金融包摂を促進する可能性を秘めたイノベーションに対して、彼らの厳格な措置が課す制約についてしっかりと理解することを期待しよう。

イーサリアム2.0

イーサリアムの2.0への移行は成功するだろうか?NFT(ノン・ファンジブル・トークン)の取引やその他の取引の手数料(ガス代)のために、イーサリアムエコシステムが大半の人にとって手が届かないほど高額なものとなっている現在、待望のイーサリアム2.0への移行完了を求める圧力は高まるだろう。

すでに、「ビーコン(Beacon)」と呼ばれるプルーフ・オブ・ステークブロックチェーンは並行して機能を開始しているが、2.0が完全に成功したとみなされるまでには、まだまだ大きなステップが残されている。

まず、ビーコンチェーンをメインネットと統合するには、マイナーとバリデーターにとってのトークンエコノミクスにおける大掛かりなシフトも含まれる。他にも、ブロックチェーンを維持するためにイーサリアムノードが処理する必要のあるデータの量を減らすための手段、シャーディングをはじめとして、同様に困難なアップグレードが存在する。

これらは大規模な取り組みであり、有数のスマートコントラクトプラットフォームであるイーサリアムの未来は、そのような取り組みにかかっている。

暗号資産の環境面における課題と好機

人々が好むと好まざるとに関わらず、確実なことが2つあるようだ。気候変動は悪化を続け、暗号資産エコシステムは成長を続ける。

そのため、私たちは、暗号資産批判者たちが暗号資産を禁止するよう求めたり、暗号資産支持者たちが化石燃料を基盤としたマイニングがはらむ大きな問題を無視するような現状を変えなくてはならない。

マイナーが再生可能エネルギーを使うだけではなく、暗号資産セクターがより効果的でスムーズに管理される「グリーンな」電力網の開発に資金を提供するようなインセンティブを生む、マイニング統合型エネルギーシステムの方向へと、議論がシフトする必要がある。

2022年には、エネルギーソリューションの管理者たちが、マイニング分野のイノベーターたちと力を合わせることで、そのようなより洗練された議論が生まれるだろうと、私は希望を持っている。

ウェブ3

ウェブ3はどうなるのか?ツイッターの元CEOでスクエアCEOのジャック・ドーシー氏の主導するビットコインマキシマリスト(ビットコインだけが唯一必要なデジタル資産であり、それ以外のコインは必要ないと考える人たち)と、20年にわたるウェブ2の時代と比べて、自らのデータやコンテンツに対して人々がよりコントロールを握れるようにすることを目指すウェブ3ファンの間の白熱した議論で、2021年は幕を閉じた。

私としては、コンセプト全体としてはやむを得ず不明瞭ではあるが、ウェブ3は確かなものであり、それに取り組む人たちはプロジェクトを開発し、試験するチャンスに値すると信じている。

それは、ウェブ2があまりにめちゃくちゃになっているからだ。人類は解決法を必要としている。

米誌『フォーリン・ポリシー』において先日、起業家バーラージー・スリニヴァサン(Balaji Srinivasan)氏とグローバル戦略家パラグ・カンナ(Parag Khanna)氏が主張した通り、インターネットはすでに、21世紀における権力構造をディスラプト(創造的に破壊)し、分散化している。

私たちはこの時代において、デジタル資産の管理と、ユーザーの権利を確立するためのシステムを調整する必要がある。そのような議論は2022年、激化することは避けられず、そのことが必然的に、ウェブ3を巡る相対する異なる多くのアイディアをより明確なものにするだろう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:5 Money Themes to Watch in 2022