韓国の監視当局、フェイスブックのリブラが金融の安定性に与えるリスクを警告

ソーシャルメディア大手フェイスブック(Facebook)の仮想通貨プロジェクト「リブラ(Libra)」は、金融システムの安定性を脅かすと、韓国の金融規制当局が考えを明らかにした。

韓国金融委員会(FSC)は、2019年7月5日(現地時間)に発表されたレポートの中で「全世界で24億人に上るフェイスブックユーザーが銀行預金の10分の1をリブラに移し替えた場合」に起こり得る事象を検証している。CoinDesk Koreaが伝えた。

そのようなシナリオが実際に起こった場合、銀行の支払い能力は低下、貸倒引当金は減少し、国外へ資本が移転することで、新興市場が脅かされることになる。

FSCはまた、人々が国の法定通貨をリブラへと移すことによって、金融危機や外国為替危機の際に銀行への取り付け騒ぎが起こる可能性への懸念も述べている。リブラによる両替や送金の簡易化も、中央銀行の国際的な資本の動きを制御する能力を制限すると見込まれている。リブラが中央銀行通貨と幅広く交換されるようになれば、金融政策の有効性にも制限がかかることになる。

FSCは、銀行のような適切な管理なしでは、リブラがマネーロンダリングに広く利用される可能性があることについても懸念を表明した。「ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)やJPモルガン・チェース(JPMorgan Chase)といった大手金融機関」がリブラへの参加を拒否したこともレポート内で言及されている。

同レポートには、リブラプロジェクトが従来の銀行業界への大きな脅威であると記されている。フェイスブックのような企業が顧客資産で銀行預金をするのではなく、債券を買えば、銀行の財政状態が悪化する可能性もある。そしてリブラによって実質的に無料で海外送金できるようになるのであれば、韓国の銀行が送金から得ている数兆ウォン(数千億円)もの収益が著しく減少することになるだろう。

リブラの商品化が成功する可能性は、その他の仮想通貨よりも高いとFSCは続けた。フェイスブックは、フェイスブック、ワッツアップ(WhatsApp)、インスタグラム(Instagram)といった、数十億人のユーザーを抱えるソーシャルメディアを通じて金融サービスを提供することで、競合より容易に便利さや価格競争力を保証することができる。

同レポートは海外のトレンドに関する「新聞やその他マスコミの理解を促す」ためのものであり、リブラに対する公式見解を述べたものではないとFSCは強調している。

翻訳:山口晶子
編集:町田優太、佐藤茂
写真:Facebook Libra image via Shutterstock
原文:Korean Watchdog Warns of Financial Stability Risk From Facebook’s Libra