金連動型トークンが好調:アナリストの評価はまちまち

金(ゴールド)連動型トークンが、暗号資産(仮想通貨)市場全体を上回るペースで成長している。一部のアナリストが、このようなトークンの信頼性、そもそもゴールドに投資することが賢明かどうかに疑問を投げかけているにも関わらずだ。

暗号資産データを手がけるCoinGeckoによると、ゴールド連動型ステーブルコイントップのテザーゴールド(XAUT)の時価総額は、2021年1月以来4倍増加し、4億2130万ドルとなった。時価総額第2位のゴールド連動型ステーブルコイン、パックスゴールド(PAXG)の時価総額は、5倍の3億7830万ドルである。

デジタル資産調査会社アーケーン・リサーチ(Arcane Research)によると、暗号資産全体の時価総額の成長率は150%であるのに対し、これら2つのトークンの時価総額は360%も増加している。

「多くの投資家が、ボラティリティの高い暗号資産に投資しようとしており、ゴールド連動型トークンは、そのようなボラティリティからある程度守ってくれるものだ」と、外国為替仲買業を手がけるオアンダ(Oanda)のエドワード・モヤ(Edward Moya)氏は語り、「今年のゴールドの見通しが向上していくに伴い、ゴールド連動型トークンも大きな魅力を持ち続けるかもしれない」と指摘した。

伝統的金融市場の投資家の多くは、ゴールドをインフレに対するヘッジと考えている。暗号資産投資家の多くが、法定通貨の購買力が衰えるに伴って、ビットコイン(BTC)の価値が高まるかもしれないと考えているのと同様だ。

価値の保管手段としてのゴールド

一部の投資家は、地政学的緊張が発生している時には、ゴールドは安全な避難先資産となるかもしれないと考える。そのため、ウクライナをめぐるアメリカとロシアの現在の緊迫した関係が、ゴールドの魅力を高めているのだ。1月末に見られた、世界最大のゴールドファンド、SPDRゴールド・シェアへの16億ドルの資金流入もウクライナ情勢をめぐる緊張が理由とされている。

株価が下っているのに対し、ゴールド価格はここひと月で2.8%値上がりし、1オンス当たり1849.71ドルで取引されている。ビットコインは同時期、0.6%値上がりした。

アナリストらは、40年ぶりの高水準のインフレを示す最近のデータが、ゴールド投資を推進しているのだろうと分析する。暗号資産トレーダーたちの間では、経済や市場環境が、ゴールド連動型トークンへの関心の高まりを支えているようだ。

「コモディティ連動型トークンの人気が高まっている」と、アーケーン・リサーチは2月8日に指摘。「これまでのところ、ゴールド連動型トークンに投資が集まっているが、他のコモディティも間もなくそれに続くかもしれない」と予測した。

例えば、ロシアのリッケルおよびパラジウム大手ノーニッケル(Nornickel)は2月3日、子会社のアトマイズ(Atomyze)を通じて、コモディティ連動型トークン発行の許可をロシア中央銀行から受けた。

ゴールド連動型トークンは、ゴールドの価値と結びついているため、時価総額の高まりは、流通しているトークン数の増加を表していると、アナリストらは語る。

「つまり、ゴールド連動型トークンが発行されているということだ」と、投資顧問企業クオンタム・エコノミクス(Quantum Economics)のマティ・グリーンスパン(Mati Greenspan)氏は説明し、「発行したければ、発行するだけのことだ」と語った。

ゴールド連動型トークンの時価総額は現在、合計で8億ドルとなっているが、それでもビットコインの8330億ドルにははるかに及ばない。そしてもちろん、ここ数年のゴールド価格の動きも、何倍にも値上がりした多くの暗号資産に比べると、弱々しいものである。

「ゴールド連動型トークンはその価格がほとんど変動しないため、投資家にとっては利益がほとんどない」と、グリーンスパン氏は指摘する。

需要と供給、「デジタル希少性」

ゴールドやゴールド連動型トークンの場合、価格が上がると、金採掘業者はさらに多く採掘して、供給を増やすことができる。それとは対照的に、ビットコインの供給量は、基盤となっているブロックチェーンのプログラムによって規定されている。価格が上がっても、供給量の増加ペースは変わらないのだ。

「デジタル資産の価値の場合、デジタル希少性そのものの方が、金属やその他のコモディティに連動させることによる付加的なメリットよりも、はるかにパワフルだ」と、グリーンスパン氏は指摘する。

暗号資産サービスプラットフォームBlockchain.comのガリック・ハイルマン(Garrick Hileman)氏は、ゴールド連動型トークンは、高速決済、最低購買量の不在、高い移動可能性などのメリットをもたらすと説明する。

しかし、換金のプロセスは必ずしもスムーズではない。時には数日から数週間かかると、ハイルマン氏は指摘した。

さらに、裏付ける資産についても懸念がある。投資家は、ゴールド連動型トークンの発行業者が実際に裏付けとなるゴールドを購入していると信頼する必要があると、グリーンスパン氏は指摘。

アーケーン・リサーチのレポートによると、複数のプロジェクトが、シルバーやパラジウムなど、ゴールド以外のコモディティ連動型トークンの作成を試みたが、様々な障害に直面している。一方、詐欺と認定されたシルバー連動型トークンも存在した。

テザーのUSDTをはじめとするドル連動型ステーブルコインにまつわる大きな問題は、トークンを裏付ける適切な準備資産が本当に用意されているか、という点だ。

CoinGeckoによると、ドル連動型ステーブルコイントップのUSDTの時価総額は、786億ドルとなっている。しかし発行業者テザーに対しては、準備資産に関して疑いの目が向けられ続けている。

「ゴールド連動型トークンというだけで、実際にゴールドで裏付けられていると信じていい訳ではない」と、グリーンスパン氏は注意を呼びかけた。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:Gold-Backed Tokens Grow Despite Mixed Reviews From Analysts