Facebook:リブラは消費者のプライバシーを尊重する──ブロックチェーン責任者から上院議員への書簡で

フェイスブック(Facebook)のブロックチェーン責任者デービッド・マーカス(David Marcus)氏は米議会に対して、同社が主導する新しい仮想通貨「リブラ(Libra)」の構想では、個人の金融情報にアクセスすることはないと述べた。

マーカス氏は上院銀行委員会に宛てた7月8日付の書簡で、5月に送付された質問に回答し、データの機密性に関する委員会の懸念を認めた。

同氏は「当社はこの問題の解決に向けて、じっくりと適切に取り組んでいくことを、私は個人的に保証したい」と述べている。同氏はまた、下院金融委員会にも同様の書簡が送付したと、ザ・ヒルが9日に報じている。

「Facebook」のレターヘッドに印刷された書簡の中で、マーカス氏はリブラのブロックチェーン上で行われるいかなる取引にも個人データは添付されないと述べた。

「イーサリアムやビットコインなどの広く普及している仮想通貨同様に、リブラのブロックチェーン上で直接行われる取引は 『匿名』 であり、これはユーザーの身元が公には見えないことを意味する」と同氏は記し、6月にリブラプロジェクトのホワイトペーパーが公開されて以来、フェイスブックが主張してきたことを繰り返した。

取引におけるブロックチェーンアドレスやタイムスタンプ、取引金額などは公開されるが、顧客確認(KYC=Know Your Customer)情報またはマネーロンダリング対策(AML)に関する情報は、ウォレット・プロバイダーによって格納される必要がある。

注意点として、リブラはオープンソースプラットフォームであり、サードパーティの開発者なら誰でも独自のデジタルウォレットを構築できると、マーカス氏は指摘。

これらのサードパーティは、リブラ構想において彼らがウォレットを構築する上で責任を持つことになると、マーカス氏は言う。同氏は「顧客に要求する情報の種類を決定し、事業を展開する国の規制や基準を遵守することは、これら事業者の責任である」と述べた。

マーカス氏は、「カリブラ(Calibra)や他のデジタル・ウォレット・サービスの規制当局は、ユーザーの身元や活動に関する情報収集をこれら企業に対して要求し、マネーロンダリング対策(AML)やテロ資金供与防止対策(CFT)、制裁目的等の法執行機関および規制当局がその情報を使用できるようにする」と加えた。

Facebookがすでに保持する消費者向け金融情報に関する質問に対して、マーカス氏は、(リブラとは無関係な)Facebookの子会社は決済証明書などの「非公開の個人金融情報データ」を既存の取引法に従って保管しているが、この情報は広告や個人向けカスタマイズには使用されていないと、回答した。

さらに、Facebook Paymentsの子会社がこれらの取引を処理しているため、Facebook自体はいかなる支払い証明情報にもアクセスすることができない。Facebookは、業者、取引金額、日時、購入商品など、取引に関連するその他の情報は収集する。

Facebookの存在

マーカス氏は上院議員に対して、リブラのブロックチェーン・ネットワークの運営と管理を目的とするリブラ協会(Libra Association)は、Facebook Paymentsよりも少ない情報を保有することになると述べた。バリデーターのノードやウォレットは、取引を処理・保存するため、Facebookもリブラ協会も個人データを保存しないと、同氏はは主張した。

Facebookは、リブラのオープンソースウォレット 「カリブラ」 を開発するための子会社を設立している。マーカス氏は、「カリブラはリブラ協会においてFacebookを代表する企業となる。Facebookの独立した規制子会社として、カリブラは消費者の財務データを保護し、広告ターゲティングの目的でこのデータを使用したり、共有することはない」と説明した。

しかし、保管ウォレットとして、カリブラは消費者の財務データの一部を保持する。

「限られたケースを除いて、カリブラは顧客の同意なしに、アカウント情報や財務データをFacebookやいかなる第三者と共有することはない」とマーカス氏は書簡に記した。

例外として、マネーロンダリング対策またはテロ資金供与防止対策にかかる法律、並びに制裁法に従って、法執行機関又は規制当局にはデータが共有される。

「例えば、カリブラの顧客アカウント情報と財務データは、Facebookや同社のソーシャルメディア、メッセージ製品群における広告ターゲティングの改善を目的に使用されることはない」とマーカス氏は加えた。

個人の信用格付けに関する質問に対して、マーカス氏は「Facebookは、いかなる目的でも、消費者レポートやクレジットスコアを入手、利用することはしない」と述べる。

銀行口座を持たない個人を対象とした広範な支払いシステムを構築するというリブラ構想は、6月にそのホワイトペーパーが公開されたが、直ちに規制と法律の圧力に直面している。世界中の政治家や政府関係者は、開発計画の凍結を求めているとまでは言わないまでも、このプロジェクトに疑問を投げかけている。

米上院銀行委員会は7月16日、公聴会を開く予定だ。下院金融委員会もその翌日にも公聴会を開く。マーカス氏は、両公聴会で証言することになるだろう

マーカス氏は9日付の書簡で、金融サービス会社や規制当局、中央銀行、政策立案者、財務省の職員、その他のグループなどと、このプロジェクトについての議論を行なっていると述べた。

「リブラ協会は、政策立案者や規制当局と協力して、この新しいエコシステムが経済に付加価値をもたらすものであり、消費者が保護され、政府による監督と中央銀行の役割が適切であることを確認する。当協会は、ブロックチェーンと暗号資産がどう規制されるべきかに関しての世界的な対話を促すよう、全力を尽くしていく」と、マーカス氏は述べた。

上院銀行委員会への書簡全文はこちら

翻訳:新井朝子
編集:佐藤茂
写真:デービッド・マーカス氏(CoinDesk 提供)
原文:Facebook to Senators: Libra Crypto Will Respect Consumer Privacy