暗号資産投資とは値下がり時にもポジティブでいること【オピニオン】

ここ数週間、流動性を持った大半の資産クラスにおいて、市場を見ているのもつらいような状況だ。とりわけ、暗号資産(仮想通貨)市場は厳しい様相を呈している。

ビットコイン(BTC)価格の下落圧力は強まり、30000ドルを割る水準だ。短期間としてはかなりの下落幅となっている。主要アルトコインの多くも同様だ。

このような急落の中、暗号資産に批判的な声がさらに強まっている。その多くは暗号資産を、ほとんどの利益を一部の起業家や初期の投資家たちが独占してしまう、ねずみ講やポンジスキームになぞらえる議論の繰り返しだ。

当記事執筆時点では、そのような声の高まりから、暗号資産は「終わり」かもしれないという雰囲気さえ生まれている。

英誌『スペクテイター』のコラムニス、トロス・クラーク(Ross Clark)氏は、そのような主張をする1人だ。クラーク氏は、ビットコインやその他のトークンの値下がりにも関わらず、押し目買いが大規模に起こっている兆候はほとんど見られないと指摘。

これは、ネズミ講の最終段階であり、参加者の次なる階層を形成するのに十分な新規投資家が十分集まらず、破綻しようとしていると、同氏は主張しているのだ。

クラーク氏をはじめとするライターたちは、ビットコインが一部の人たちの期待とは裏腹に、インフレヘッジとしては機能してはいないと説明する。暗号資産投資そのものに疑問を投げかけている。

追い討ちをかけるように、米司法省は先週、暗号資産マイニング・投資プラットフォーム、マイニング・キャピタル・コイン(Mining Capital Coin)のCEOを、6200万ドル規模のネズミ講を運営していたとして、告発した。

バグではなく、特徴としてのボラティリティ

暗号資産関連メディアにおいては、暗号資産のメリットや可能性が多く語られるが、普通の人たちは、このようなマイナスな情報も多く耳にすることになるだろう。

究極的には、暗号資産のボラテリティは、バグではなく特徴なのだ。最も歴史が長く、最も投資が活発な暗号資産であるビットコインは誕生以来、このような急落を幾度か経験している。

暗号資産は時に、テック株と密接に連動した値動きを見せるかもしれないが、この2つの資産クラスは、ついたり離れたりをこれまでも繰り返してきたと、ファイナンシャルアドバイザー向けの暗号資産投資プラットフォーム「サーソン・ファンズ(Sarson Funds)」のデビッド・ギャンブル(David Gamble)氏は語る。

ギャンブル氏は、国家レベルでの動きに促されて、新しい普及の波が生まれるに伴い、暗号資産が最終的には株式の値動きとは切り離されていくだろうと考えている。エルサルバドルと中央アフリカ共和国の2カ国はすでに、ビットコインを法定通貨として採用しているが、ギャンブル氏はさらに多くの国が後に続くとみている。

「それでも、良いことが起こるのには時間がかかる。普及曲線を描いていくのを、もう少し見守る必要があるだろう」とギャンブル氏は話す。「根本的には、正しいことが起こっているのだ」

もう1つ希望が見えるのは、規制の領域だ。暗号資産がどのように取り扱われるかについて、アメリカでは明確性やコンセンサス形成に向けた動きが見られる。大統領令によって、暗号資産とデジタル資産エコシステムを連邦機関が連携して精査する動きが始まったのだ。

次の展開は?

今のところ、アメリカの規制当局は、一段と穏やかなアプローチをとっているようだ。

「とりわけセルフカストディをできるかをめぐって、この先どうなるのかについて人々はかなり警戒していた」と、デジタル資産に特化したプライベートエクイティ企業10Tホールディングスの共同創業者スタン・ミロシュニク(Stan Miroshnik)氏は語り、「先日の大統領令は、単に穏やかなものであっただけではなく、規制のための思慮深い枠組みを促進する、前向きなものだった」と続けた。

ビットコイン現物ETFなど、より効率的な暗号資産プロダクトを、より多くの市場で利用可能にするための前進も見られる。

究極的には、そのようなプロダクトが、新しい投資家を呼び込む鍵となるだろうと、ブラジルで取引できる暗号資産現物ETFなどを手がけるハッシュデックス(HashDex)のアンドリュー・プシェル(Andrew Puschel)氏は語った。

「米証券取引委員会(SEC)側で準備万端とまでは言わないが、少しずつ整ってきてはいる」と、プシェル氏は指摘。「私募や直接保有などを通じて満たされてきた多くの需要があるが、コンプライアンスの観点からは、投資家や投資顧問は1つのプラットフォーム上で全体のポートフォリオを保有することを望む。あらゆる資産が一カ所にあるべきで、ETFはそれを実現できる」と続けた。

そして全体的に見れば、企業が発展し、暗号資産分野にアクセスするためのより多くの方法が提供されるにつれて、暗号資産やデジタル資産への投資はいまだに増加している。

検証済みユーザー数が8900万人を突破したと先日発表したコインベースは、2032年までに、暗号資産のアクティブユーザー数が10億人に達すると予測。2021年時点では、2億9500万人のユーザーがいたと推計されているため、暗号資産を支えるネットワーク内でも、まだまだ成長の見込みはたっぷりある。

「暗号資産がしっかりと定着してきているのは明らかで、もう無視することはできない」と、フィナンシャルアドバイザー向け暗号資産プラットフォーム、フローリッシュ(Flourish)の創業者ベン・クルイクシャンク(Ben Cruikshank)氏は述べる。「現在、アメリカの投資家の25%が暗号資産に投資している。それは、譲渡性定期預金(CD)に投資している投資家と同じ数だ。もう避けることはできない」

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Crypto Investing Means Staying Positive Amid Volatility