熱波が襲うパリで開かれたイーサリアム会議【レポート】

パリで開かれたヨーロッパ最大のイーサリアムイベント「イーサリアム・コミュニテイ・カンファレンス(EthCC)」に、何百人もの開発者たちが集まった。年次イベントであるEthCCは、パリのカンファレンスセンター「Maison de la Mutualité」で19日に開幕した。

ヨーロッパは現在、熱波に見舞われており、初日の気温は42度に達した。会場には、しっかりと機能するエアコンはなく、かなり汗だくなイベントとなった。

EthCC会場の一角
写真:Lyllah Ledesma

弱気相場を忘れて

現在の暗号資産(仮想通貨)の弱気相場についてはほとんど語られず、値動きについての話もほぼゼロだった。このカンファレンスは主に、開発、ハッキング、人脈作りに重点を置くものなのだ。

イーサ(ETH)は他の暗号資産同様、大幅な下落を経験していたが、ここ7日間で回復傾向に。当記事執筆時点では、前週比で40%も値上がりしている。

レイヤー2イーサリアムネットワーク「スタークネット(StarkNet)」を基盤としたレンディングプロトコル「zkレンド(zkLend)」の共同創業者ジェーン・マ(Jane Ma)氏は、他の開発者と会ったり、ハッカソンに参加するために、チームを引き連れてEthCCに参加した。

「会場にいると、弱気相場のことなんて忘れてしまう」と、マ氏。イベントの雰囲気はおおむね前向きなもので、人々は暗号資産を見捨てる気はないようだ、と続けた。

会場には楽観的な雰囲気が広まっているが、現在の市場に苦しみ、大きな損失を被っている個人投資家も存在する。「暗号資産カンファレンスに参加する時は、そういったことをしっかり意識する必要がある」と、マ氏は語った。

20日には、ZKロールアップを手がけるPolygon Hermezが、メインステージで「Polygon zkEVM」のローンチを発表。

メインステージに登壇するHermez技術責任者のジョルディ・ベイリナ氏
写真:Lyllah Ledesma

「知識のすべてが、コミュニティで共有され、公開されるために、大切な動きとなる」と、Hermezの技術責任者ジョルディ・ベイリナ(Jordi Baylina)氏は語った。

プレスリリースでポリゴンは、zkEVMは「既存のすべてのスマートコントラクト、開発者ツール、ウォレットに対応する初のイーサリアムに相当するスケーリングソリューションであり、ゼロ知識証明という高度な暗号技術を活用」していると説明した。

一方、オープンソース開発者のサポートを行うGitcoinの共同創業者ケビン・オウォッキ(Kevin Owocki)氏は19日、「Gitcoin Passport」のローンチを発表。

こちらは、シビル攻撃への耐性を提供し、オープンなインターネットの基盤となり、「再生的な社会」を可能にすることを狙ったデジタルアイデンティティプロダクトだ。

シビル攻撃:善意のノードを圧倒できる数の悪意のノード軍団を作ることでネットワークを乗っ取ろうとする攻撃。

ある参加者は、コーヒーを待つ列でイーサリアム共同創業者のヴィタリック・ブテリン氏の後ろに並び、彼がお湯を注文するのを見たと語った。ウェイターは彼が去った後、「ただのお湯を飲む奴なんているのか?」と笑っていたそうだ。

サイドイベントも盛りだくさん

このカンファレンスでも、暗号資産イベントではお馴染みの、深夜のパーティーに屋上でのディナー、様々なDJのライブパフォーマンスなど、多くのサイドイベントが繰り広げられた。セーヌ川にかかるアレクサンドル3世橋のたもとで行われたパーティーでは、地元DJが早朝までパフォーマンスを続けた。

20日には、DeFiプロトコル「アーベ(Aave)」の創業者兼CEOスターニ・クレチョフ(Stani Kulechov)氏が講演。Web3ソーシャルネットワークのメリットを説明し、自らのプラットフォーム「レンズ・プロトコル(Lens Protocol)」を宣伝した。

レンズはコンテンツクリエーターに、コンテンツを受け取る人たちと直接交流することを促すのに重点を置いている。

「自らのファンのデータを所有すれば、彼らと直接交流ができる。それは非常に価値のあることだ」と、クレチョフ氏。レンズはハッカソンから生まれたもので、「レンズのほとんどはコミュニティによって築かれたものだ。それは素晴らしいことだ」と、続けた。

メインステージに登壇するアーべの創業者兼CEOスターニ・クレチョフ氏
写真:Lyllah Ledesma

Celo

Celoのコミュニティスペース
写真:Lyllah Ledesma

EthCC会場のすぐ外には、ブロックチェーン「Celo」のコミュニティスペース「サロン」が設けられていた。この場での議論は主に、自律分散型組織(DAO)、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)、再生的金融(ReFi)に集中していた。

再生的金融(ReFi):お金をツールとして使い、体系的な問題を解決、コミュニティや自然環境の再生を図る。

このサロンの場には、Celoの共同創業者兼社長のリネ・レインズバーグ(Rene Reinsberg)氏の姿も。暗号資産の弱気相場から生まれるプラスの側面に注目していた。

「弱気相場では、『どこが預かり資産が最も多いか?』という議論はかげをひそめ、プロジェクトの重要なユースケースは何か、テクノロジーがどのように人々の暮らしを改善できるかに焦点が移る」と、レインズバーグ氏は語った。

しかし同時に弱気相場には、新規参入者や暗号資産に興味を持っている人たちに対するマイナスの影響も確かにあると、レインズバーグ氏は認める。

「大幅な価格変動を目にすれば、人々は怖がるだろう」とレインズバーグ氏。「人々は値動きを、取引の活発さと同一視する。これらは別個のものだ。ウォレット数と価格の推移を重ねてみれば、まったく関係がないことがわかる」と続けた。

Celo提供のUFOキャッチャー
写真:Lyllah Ledesma

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:アレクサンドル3世橋のたもとで開かれたパーティー(Lyllah Ledesma/CoinDesk)
|原文:Vitalik Drinks Hot Water in Heatwave and Other Observations From Paris Ethereum Conference