なぜ暗号資産レンディング企業の破綻は続くのか?【コラム】

暗号資産レンディング企業に何が起きているのだろう? 弱気相場は業界を隅々まで痛めつけている。だが、暗号資産レンディング企業ほどではないだろう。

ブロックファイ(BlockFi)、セルシウス・ネットワーク(Celsius Network)、ジェネシス・グローバル・トレーディング(Genesis Global Trading)など、すぐに名前が思い浮かぶ。

暗号資産レンディング企業は他にもあるが、これらの企業はかつては高く評価されていたものの、今年最も見苦しい失態を見せた。何が悪かったのだろう? 中央集権型の暗号資産レンディング企業は、マーケットシェアと信頼を取り戻すことはできるだろうか?

暗号資産レンディングとは?

暗号資産レンディングは、暗号資産を保有し、プラットフォームに預け入れることで利回りを獲得したい人と、暗号資産を借りるために担保を差し入れ、利子を支払うことを厭わない人をつなげるプロセスだ。

つまり、「暗号資産レンディングは本質的に、暗号資産のための銀行」とロイターは今年初めに書いている。

市場が低迷する前、レンディングは暗号資産業界にとってビッグビジネスだった。例えば、ときに「ネオバンク」と呼ばれたセルシウスは、110億ドル(約1兆5000億円)を超える資産を集めていた。

先日、破産申請を行ったブロックファイはわずか1年前、評価額が30億ドル(約4200億円)に達していた。ジェネシスの今年第3四半期(7-9月期)末のアクティブローン残高は28億ドル(約3900億円)だった(前年第3四半期の111億ドルからは減少)。

暗号資産レンディングがここまで成長した理由の1つは、高利回りを提供したことだ。銀行の金利はほとんどが1%にも満たないが、暗号資産レンディング企業の中には20%もの高利回りを提供するところがあった。強気相場のバブル的な時期においてさえ、それほどの高利回りがなぜ可能なのかと多くの人の関心を集めていた。

銀行と同じように、暗号資産レンディング企業は預け入れられた資産を貸し出すことで収益を生むことになっていた。借り手は通常5〜10%の手数料を支払い、セルシウスのような企業は、預金者へ支払う利回りと、借り手から受け取る手数料の差額から収益を生むはずだった。

ねずみ講と似ていた

今年我々が学んだように、暗号資産レンディング企業は順調だと思っていても、急に経営が悪化することがある。市場のボラティリティは暗号資産レンディング企業のビジネスにプレッシャーをかけ、預金者や借り手の数が減るなどの影響が出る。顧客による資産の引き出しが増えると、多くのレンディング企業は流動性が乏しい、あるいは支払い能力がない状態に陥った。

さらに、本来行うべきではない再ローン(再担保)によって、違法の可能性があるビジネスを行ったり、無謀な投資を行っていたことも判明した。

バーモント州の証券規制当局は、セルシウスは古くからいる投資家に利回りを支払うために新しい投資家を集めることに注力していた点で、ときにねずみ講に似ていたと指摘。独自トークンのCELを使った報酬プログラムを提供し、マーケティング予算を費やして、標準をはるかに超えた高利回りを支払うことで新しい投資家を集めていた。

こうした手法は、FTXの「Earn」プログラムや、テラ(Terra)ブロックチェーン基盤の分散型レンディングプロトコル、アンカー(Anchor)でも使われていた。

失敗の理由と今後の見通し

もちろん、すべての暗号資産レンディング企業が同じわけではなく、こうした企業が破綻した理由もさまざまだ。他の暗号資産レンディング企業も顧客の資産を悪用していたと疑う理由があるわけでもない。破綻したレンディング企業は多くが未上場企業だったので、原因は完全には解明されていない。

暗号資産への規制を求める声は大きくなっており、業界にとっては良いことになり得る。銀行預金に最大25万ドルの保証を提供するFDIC(米連邦預金保険公社)の保険が、暗号資産レンディング企業に適用される可能性は低いが、支払い能力を維持するために、預金管理の改善を求める規制当局の監視は強化される可能性がある。

もう1点注目すべきは、DeFi(分散型金融)分野の暗号資産レンディングプロジェクトは順調だったことだ。DeFiレンディングプラットフォームは通常、ユーザーに過剰担保を求め、カストディを行わないことで顧客の預金を他人が自分のものにしてしまうことを防いでいる。

暗号資産レンディング企業では、信頼できると思われる個人に有利な取引を提供できてしまうが、DeFiでは皆が同じルールに従う。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:Why Do Crypto Lenders Keep Blowing Up?