年頭の価格予測に惑わされない【オピニオン】

年頭の価格予測に惑わされない【オピニオン】

暗号資産価格のボラティリティは、投資家たちがこの14カ月間、悩まされてきた問題。だが、問題がすぐになくなることはないだろう。暗号資産投資を積極的に行っている人、あるいは興味を持っている人なら、すでに年始恒例の価格予測を目にしただろう。

米テレビ局CNBCが伝えた次のタイトルほど、暗号資産の価格予測の難しさを上手く表現したものはないかもしれない。

「2023年の最も大胆なビットコイン価格予測──1400%の上昇、あるいは70%の下落の可能性」

2023年末までにビットコイン(BTC)は25万ドル(約3300万円)に達するという最も楽観的な予測をしたのは、デジタル・ベンチャーキャピタリストのティム・ドレーパー(Tim Draper)氏。

一方、5000ドル(約67万円)と最も悲観的な見方をしたのは、スタンダードチャータード銀行。時価総額に換算すると、4兆7500億ドル(約635兆円)と950億ドル(約13兆円)と大きな開きがある。

昨年の価格予測も同じようなもので、多くの懐疑的な人たちはビットコイン価格は1万ドルを下回ると予測した。一方、ドレーパー氏などの楽観派は25万ドルの大台を超えると予測していた。それに比べると、アーク・インベストメント(Ark Investment)のキャシー・ウッド(Cathie Wood)氏は、2022年中に10万ドルに達すると比較的妥当に聞こえる予測をしていた。

もちろん、そうした予測が的中することはなかった。FTB(連邦準備制度理事会)が緊縮政策を続け、ネガティブなニュースが次々と投資家を意気消沈させるなか、価格は一貫して低迷を続けた。しかし、最も弱気な予測ほどに下落することもなかった。

価格予測の難しさ

暗号資産は伝統的資産とは異なるファンダメンタルズで動いており、投資家のセンチメント(感情、心理)が、価格決定においてはるかに大きな役割を果たす。人間のセンチメントは予測がきわめて困難で、予期せぬ出来事に大きな影響を受けることもある。

これは暗号資産だけでなく、あらゆる資産クラスにあてはまる。だからこそ一般的に言って、年間の株式市場予測も散々の結果に終わることが多い。2021年末、ウォール街が2022年の株価予想を行っていた頃、主要アナリストは皆、S&P500は少なくとも緩やかに上昇すると予測していた。しかし、そうはならなかった。

予測の難しさから、長期的な投資予測が真面目に取り扱われることは滅多にない。1400%の上昇や70%の下落といった極端に楽観的、あるいは悲観的な予測はタイトルにはもってこいだが、当たることはほとんどない。

暗号資産価格、特に予測困難な理由

投資家は明確さを待ち望んでいる。暗号資産に興味を持つ大半の投資家は、いまだに暗号資産を投機的なものと考えている。FRBが金融緩和政策を縮小する時、投資家たちは投機的な資産市場から最初に退却する。彼らは安全性を求める。

さらに今、暗号資産についてはラムズフェルド元米国防長官が「既知の未知」と呼んだものが数多く存在する。「このトークンは2023年にダメになるだろうか?」「流動性にアクセスできるだろうか?」といった単純な疑問から、政策決定者が答えを出す必要のある規制やカストディなどにまつわる疑問まで、多岐にわたる。

「既知の未知」には、すべての金融市場が今、直面しているすべての問題も追加され得る。インフレ、利上げ、そして景気後退の可能性だ。

さらに「未知の未知」は無数だ。FTXの破綻のように、予期できない、いわゆる「ブラックスワン」的な問題もある。2023年、DeFi(分散型金融)プロジェクトやステーブルコインが失敗に終わったり、取引所が崩壊するかどうかは誰にもわからない。暗号資産分野がまだ歴史が浅く、整備されていないことを考えれば、今後、さらにさまざまな問題が発生すると考えて良いだろう。

アドバイスできること

暗号資産分野を扱うジャーナリストとして、私は友人や家族から質問を受けることが多い。株式市場はどうなる? 経済はどうなっている? 暗号資産はどうなる?

市場や価格について私がよく使う答えは、それらは変動するという答えだ。株式や暗号資産のようなリスク資産のボラティリティについて私が考えていることを反映しているだけでなく、この先の1年で起こることの妥当な予測にもなっている。価格は上がるのか下がるのか? 正確に予測できる人はいないと考えている。

だから、最も大切なアドバイスは次のとおりだ。

なぜ暗号資産に投資するのか? 投資戦略全体やポートフォリオの中で、暗号資産をどのように扱うのか?

暗号資産を首尾一貫とした投資戦略の一部として考えている人なら、暗号資産について、わずか1年よりも長い期間で考えている。

暗号資産を長期的な資産戦略の一部と考えているなら、1年間のパフォーマンスに重点を置くべきではない。流動性(現金)が必要な時に、ビットコインやイーサリアム(ETH)、その他のアルトコインがどうなっているかを考えるべきだ。

それらの暗号資産は、退職後などのライフサイクルの節目の時期にも生き残っているだろうか? 清算をするチャンスや、ポジションを追加するチャンスはあるだろうか? これらは重要なポイントだ。

2023年のスタートにあたって、短期的ボラティリティによって役立たずになる無駄な予測に惑わされないと、誓いを立てよう。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:The Fool’s Game Of Annual Crypto Price Predictions

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