2023年、規制当局はついに暗号資産を理解するか?【コラム】

暗号資産は2023年、なかなか幸先の良いスタートを切ったようだ。

いくつかの暗号資産プロジェクトの不安定さは、少なくとも一時的に落ち着いたようで、壊滅的なニュースはこの数週間、目にしていない。

暗号資産価格は上がり、マイナーたちはマイニング機器を再稼働させる準備が整っているようだ。個人投機家たちも再び、貪るように市場に目を光らせている。

暗号資産市場の構造的課題

だが、暗号資産市場の最近の上昇に惑わされて、2022年に浮上した課題を忘れてはならない。

暗号資産市場の構造的課題の多くはいまだにそのままと、暗号資産ヘッジファンドのZXスクエアード(ZX Squared)CEO、ZKチェン(ZK Zheng)氏は述べた。

「2023年、特に上半期は(FRBが)いまだにタカ派的政策を続け、インフレ対策のために利上げを続けることで、投資家にとってまだまだ厳しいものとなるだろう」

「現在の弱気相場は、FRBが利上げを終わらせ、暗号資産市場に残っているレバレッジがなくなった時に終わるだろう。これには、主要市場参加者(投資企業、ディストレス資産、マイニング企業など)に関連する債務が含まれる」

規制フレームワークの整備

昨年の注目すべき展開のいくつかが、今年の道筋を決めることに役立つかもしれない。FTXやスリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)の破綻だけでなく、金融業界におけるデジタル資産のための規制フレームワークを生み出そうとする、政府機関の取り組みもその1つだ。

2022年のデジタル資産分野での派手な破綻や暴落、そして暗号資産と伝統的金融システムのつながりが増していることも相まって、2023年は、規制当局がより中心的な役割を担う必要がある年になるかもしれないとチェン氏は考えている。

「新たな強気相場がスタートするためには、規制フレームワークをさらに確立して、明確にする必要がある」とチェン氏は述べた。

「テラやFTXのような破綻を繰り返さないために、規制当局による監査や透明性をもたらし、ステーブルコインが完全に担保されていること、中央集権型取引所(CeFi)が十分な資産を持っていることを確実にすることが必要不可欠。『暗号資産の冬』におきたドミノ倒しの中心にあったカウンターパーティ信用リスクに対処するための方策も含まれるだろう」と同氏は続けた。

ダボス会議でも規制に注目

世界最大規模の資産運用会社deVere GroupのCEO、ニゲル・グリーン(Nigel Green)氏も同様の見解だ。

スイスで開催された世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)でグリーン氏は、世界のリーダーに暗号資産規制の問題に取り組むよう呼びかけた。

「規制の整備について、いつまでも口先だけでいるわけにいかない。アクションが求められている。WEF参加者が、2023年年次総会の結果として暗号資産規制の議題を前に進めることができなければ、ひどい失敗に終わったということになる」とグリーン氏は述べた。

世界のリーダーが暗号資産規制に真剣に取り組む必要がある理由をグリーン氏は3つあげた。

  1. 金融システムに暗号資産が果たす役割の増大
  2. スリー・アローズ・キャピタルやFTXの破綻を受けた、投資家保護のための監督拡大の必要性
  3. 新興国における経済促進の重要性

規制フレームワークは、投資家や金融システムの保護、デジタル資産の持つ分散型の性質、そしてイノベーションを起こす自由の必要性の間でバランスを取らなければならないとグリーン氏は考えている。

弱気サイクルは終了か

同氏はさらに、暗号資産価格の回復にも触れ、「暗号資産の冬」が雪解けに向かっているようだと指摘した。

「もちろん暗号資産市場は、直線で進むことはない。どの市場でも同じことだ。しかし、弱気相場から強気相場へと転換すると見込んでいる」(グリーン氏)

前述のチェン氏も、投資家の前向きな姿勢が長期的に回復するためには、規制上の明確さが必要だと考えている。

「暗号資産市場のサイクルは行ったり来たりを繰り返す」とチェン氏。

「今回も、ビットコインの14年という短い歴史における過去の3回の極端な弱気相場サイクルと変わらないだろう。暗号資産市場は、他のあらゆる金融市場と同じように、恐怖と欲に動かされている。ビットコインの長期的テーマは依然として健在。暗号資産投資家の自信は、市場が機関投資家に対して、より適切に規制された時に回復するだろう」と続けた。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:2023: The Year Regulators Finally Grasp Crypto?