開発に取り組むとき、再び【オピニオン】

2020年4月、新型コロナウイルスのパンデミック第一波の中、シリコンバレーの大物マーク・アンドリーセン(Marc Andreessen)氏は世界中のイノベーターや夢想家たちに行動を呼びかけた。「開発に取り組むときだ」と。

今も有効なメッセージ

アンドリーセン氏によれば、政治が停滞し、投資を無駄にしてきた数十年を経て、アメリカはひどい苦境に陥っていた。空飛ぶ車は? ロボットのアシスタントは? 壮大な公共インフラは? 私たちが約束していたものはどこにあるのだ?

初のWebブラウザ「モザイク(Mosaic)」を共同開発し、ベンチャーキャピタル業界を大きく変えたアンドリーセン氏は、この開発を促す発言に対して批判も受けた。だがアンドリーセン氏のテクノロジー楽観主義に懐疑的な人でさえ、アメリカでは開発がほとんど行われていないことには同意しているようだ。

例えば、ジャーナリストのエズラ・クライン(Ezra Klein)氏は「アメリカの行動できない無力さが人々を死に追いやっている」と、政治学者フランシス・フクヤマ氏が「ビトクラシー」と呼んだ政治の機能不全を指摘した。

アンドリーセン氏の最初の呼びかけから世界は大きく変化したが、そのメッセージが今でも有効なことに反対できる人はいないだろう。

Web3の希望

コロナ禍での医療不足、世界的なサプライチェーンの混乱、物価の上昇など、すべての人に、だがおそらく不平等に影響を与える困難を経験した今、イノベーションの余地があることは明らかだ。

しかし、古い政治的衝突は依然として存在しているようで、「Build Back Better(より良き復興)」を選挙キャンペーンの中心に掲げたバイデン大統領は、実際に大統領に就任してからは身動きできない状態にある。

これは、暗号資産業界が依然として重要で、一般の議論の中でより高く評価されるべき理由の1つだ。

暗号資産プロトコルは、本領を発揮できれば、すべての人が利用可能なオープンソースシステムだ。一般論のように聞こえるかもしれないが「中立であることが信頼でき」「多目的」なテクノロジーを開発するという中核的な考え方はどこにでも適用できる。

Web3には、マネーからソーシャルメディア、インターネットまで、あらゆるものを再発明する希望がある。

2022年の教訓

今は、こうしたコラムを書くには厳しい時期だ。昨年、システム的に重要なステーブルコインの崩壊、複数の企業の破綻、そして最も有名な暗号資産取引所の1つだったFTXの破綻など、世界は「暗号資産」の最悪の状態を目撃した。

前例がないほどの大規模な詐欺が行われていたFTXの破綻を経て、業界は再建を果たし、人々からの信頼を回復しなければならない。私はそれが可能だし、おそらくそうなると楽観的に考えている。多くの人たちがすでに指摘したとおり、中央集権型企業の多くの失敗は、真の分散型の代替となる選択肢の可能性と必要性を証明したからだ。

暗号資産は打撃を受けたが、私の友人で元同僚が語ったとおり、「DeFiはすでに勝利している」。危機の際に機能するように設計された、仲介者不要の暗号資産プロトコルは、例外もあるが、意図されたとおりに機能しただけでなく、成長を続けている。

だからこそ、CoinDeskが取材したベンチャーキャピタリストたちは、中央集権型金融の危険性について痛い思いをして教訓を学び、暗号資産「インフラ」に投資しているのだろう。

暗号資産の本来の姿

しかし、こうした楽観主義は、厳しい時期にも直面している。業界はおそらく、市場の低迷を切り抜けることができるだろうが、暗号資産の成長に対する真の脅威は、政治の世界からやって来そうだ。

皮肉なことに、アメリカの立法府と行政府という、まったく異なる2つの部門がついに、暗号資産規制で連携している。業界関係者の一部は、暗号資産業界への取り締まりが、オバマ政権が銀行に対して、合法だが好ましくない業界を冷遇するよう指導していた政策と似ていると指摘している。

暗号資産の再建には、業界参加者と政治家が協力し、不正を行う企業や搾取をするような悪者から消費者を守る法律を整備することが含まれることは間違いない。

コードを使ってすべての人にメリットをもたらす暗号資産の本来の姿を、政治家がしっかりと認識してくれることが望まれる。

今こそ、開発に取り組むときだ。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:マーク・アンドリーセン氏(JD Lasica, Flickr)
|原文:It’s Time to BUIDL Week