仮想通貨ファンドは買いなのか?──高リターンとその背景

仮想通貨ファンドは買いなのか?──高リターンとその背景

Brady Dale
公開日:2019年 8月 29日 11:00
更新日:2019年 8月 29日 11:43

オルタナティブ(代替)投資における公然の秘密だが、ヘッジファンドが手数料を差し引いた純利回りベースで、広範な株式市場をアウトパフォームするのに苦戦している。

ビットコインがサトシ・ナカモトにとってぼんやりとしたアイデアにさえなる前の2007年、大物投資家のウォーレン・バフェット(Warren Buffet)氏が、著名なファンド・オブ・ヘッジファンズのマネジャーを相手に、向こう10年間でS&P500インデックスのファンドが、いかなる組合せのヘッジファンドよりも好成績を残すことに100万ドル(約1億520万円)を賭けたのは有名な話だ。結果はバフェット氏の圧勝だった。

同氏は、有能な投資マネジャーがいないと思っていたわけではなく、自ら率いるバークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)はたびたび、巨大なヘッジファンドと形容されてきた。しかし、同氏の自信は、手数料と取引コストを考慮すれば最高のヘッジファンドマネジャーでさえも低コストのインデックスファンドに勝つのは難しいという直感から来るものであった。

従来型ヘッジファンド同様に「2:20」の手数料構成を持つことが一般的な仮想通貨ヘッジファンドも、同じような運命に苦しむのではないかと推論できるかもしれない。

しかし、信頼に足るデータが得られるようになった2017年初以来、結果は正反対となっている。仮想通貨ファンドの均等型インデックスは、ビットコインやその他の暗号資産の大半を大幅に上回ったのだ。

CFRクリプトファンドインデックス(CFR Crypto Fund Index)は、様々な戦略を行う40を超える仮想通貨ファンドに連動しており、その大半はヘッジファンドである。2017年1月から2019年6月の間にビットコインが約1000%上昇したのに対して、仮想通貨ファンドは1400%も上昇していることを同インデックスは示している。

この期間における仮想通貨ファンドの桁外れの実績は、「オマハの賢人」の異名を持ち、ビットコインを「殺鼠剤の2乗」と表現したことのあるバフェット氏を当惑させるかもしれない。バフェット氏の持つ仮想通貨やヘッジファンドに対する偏見を抜きにしても、驚くべき理由はいくつかある。

  • 成功報酬は本質的に、強気相場における利益に対しては非常に高いものである
  • 急騰する単一資産を凌ぐことのできるポートフォリオを作るのは容易ではない
  • 仮想通貨ファンドマネジャーは、従来のファンドマネジャーよりも経験にが浅い傾向にある

このように不利と思われる状況にも関わらず、仮想通貨ファンドは確かにより優秀な成績を収めたのだ。それではこれらの認識をもう少し検証してみよう。

成功報酬

2017年の暗号資産のように12カ月におよぶ強気相場を経験した投資資産は、ほとんど無い。

利益の20%を手に入れるファンドマネジャーにとっては素晴らしいことだが、当然、利幅を食いつぶすことになる。いくつかの仮想通貨ファンドは2017年、1000%以上の運用益を出した。つまり年末までにファンドマネジャーは、ファンドが年初に持っていた資産よりも多くの手数料を手に入れることができたということだ。

それでも、大半の仮想通貨ファンドは従来のヘッジファンドと同様の「2:20」の手数料体系を持っており、その多くはハイウォーター・マーク(信託報酬のひとつである「成功報酬」を算出するための基準となる額)方式を採用している(基本的にはファンドが過去最高益を上回っていなければ、マネジャーが成功報酬を受け取らないようにするため)。

つまり仮想通貨ファンドの成功報酬は絶対的な数字としては驚くほどの額だが、従来型のヘッジファンドに比べ手数料体系に足を引っ張られるものではない。

分散型ポートフォリオと単一通貨

2017年のビットコインが記録した12倍という成績を凌駕する運用資産など、想像できるだろうか。まさにそれが現実となったのだが、100倍超の値上がりを複数の仮想通貨が見せたのである。仮想通貨の時価総額上位30のパフォーマンスを測るビットワイズCCI 30インデックス(Bitwise CCI 30 Index)については、42倍の上昇だった。

では、2017年に仮想通貨ファンドはどのようにしてより優秀な成績を収めたのか。実のところ、そのようなことは起こらなかった。もっと言ってしまえば、程遠かった。

仮想通貨ファンド全体で見ると、収益は1000%と、相対的には迫力に欠けるものとなった。確かに、これらが2017年に挙げた利益は、過去20年に従来型ヘッジファンドがもたらしたものよりも大きい。しかし、物事は比較されるのが常である。そして上位の仮想通貨と比べると、仮想通貨ファンドにとっては期待はずれな年に終わってしまった。

仮想通貨ファンドによるアウトパフォーマンスの物語が本格的に始まったのは、業界全体が冬の時代に喘いだ2018年である。慈善家で投資家のシェルビー・カロム・デービス(Shelby Cullom Davis)氏曰く「稼ぎの大部分は弱気相場でもたらされる。その時には気づかないのだが。」

その年は大変な弱気相場となった。

2018年、ビットコインは75%近く目減りし、CCI 30インデックスは、85%下落した。しかし、CFRクリプトファンドインデックスは「たった」33%の下げに止まったのだ。別の言い方をしよう。仮想通貨ファンドが価値の6分の4を維持したのに対し、CCI 30は6分の1も保てなかったのだ。上記のグラフが示す通り、こうして2018年に資金を残存させた実力から、CFRクリプトファンドインデックスは、ビットコインや他の仮想通貨よりも優位に躍り出たのである。

2017年第1四半期から2019年の第2四半期にかけて、CFRクリプトファンドインデックスは1430%の運用益を挙げた。これはビットコインの1022%を優に超え、CCI 30の1413%に肉薄されながらも勝っている。

仮想通貨ファンドと運用歴

手数料体系や市場変動の激しさの他に、仮想通貨ファンドマネジャーに立ちはだかった最後の壁は、経験の不足である。異なる分野のマネジャー間で総体的な金融経験を直接比較するのは難しい。しかしながら、ファンドの平均運用期間に目を向けることはできる。

ロヨラ・メリーマウント大学(Loyola Marymount University=LMU)が最近発表した研究によれば、従来型ヘッジファンドの運用期間は52カ月が中央値だった。これは、仮想通貨の世界では一生分とも言えるような長さだ。CFRインデックスに組み込まれる仮想通貨ファンドで52カ月も運用されたのは皆無で、中央値は16カ月に過ぎない。

このような経験の不足は、仮想通貨ファンドの成績に悪く働くと思うだろう。しかし、そうとも限らないのだ。やや意外ではあるが、同研究では、従来型ヘッジファンドの運用益は年を追うごとに減ることが明らかになった。しかも無視できない程の減少幅である。ヘッジファンドの1年目の運用益は、5年目の3倍以上であった。5年目以降になると「ファンドの中には清算されるものも出てきて、パターンは若干入り混じったものとなった」との研究結果が示されている。

つまり、経験の不足は仮想通貨ファンドマネジャーにとって大きな向かい風と思われたが、実際にはビットコインや他のベンチマークを超える成績を促す追い風となったのかもしれない。

それでも警戒すべき理由

仮想通貨ファンドが様々なベンチマークを上回ったことは好感できる。しかし、警戒を解くべきでない理由も数多く存在する。

まず、CFRクリプトファンドインデックスは、市場のサイクルを一度経ただけに過ぎない。バフェット氏のインデックスファンドは、前述の10年間にわたる賭けで4年目までヘッジファンドを引き離すことはなかった。

次に、CFRクリプトファンドインデックスの構成ファンドは50を下回る。これは業界では最大でも、従来型のヘッジファンドのインデックスが何千ものファンドを組み込めることに比べれば、かなり小規模である。

そしてバイアスがかかって見られている可能性もあるのだ。運用報告は任意であること、またCFRクリプトファンドインデックスに組み込まれるのは要件を満たすファンドの2割に満たないことから、成績の振るわないファンドは報告を行っている可能性が低いと推定していいだろう。特に成績の悪いファンドはすでに閉じられているかもしれず、生存者バイアスを生じかねない。これは仮想通貨ファンドインデックスに特有のことではないが、投資家はこうしたバイアスを見落とすべきではないだろう。

大半の仮想通貨ファンドは、従来の基準からすれば非常に小さく、また流動性の低い市場で奏効する戦略がより多くの資金を投入した際に同種の利益を生まないことは大いにあり得る。世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツ(Bridgewater Associates)は運用額が1000億ドル(約10兆5840億円)を超すが、仮想通貨ファンドは全体を合わせても200億ドル(約2兆1170億円)に満たない。

こうした潜在的な問題を抱えてはいるが、仮想通貨ヘッジファンドにその役割であるところの、弱気相場での資産維持に資する働きが見られるのは心強い。そしてCFRクリプトファンドインデックスに組み込まれる仮想通貨ファンドの大部分は現在、外部の監査機関、カストディアン、ファンド管理会社を雇っており、業界はより整ってきている。

仮想通貨ファンド業界はまだまだ発展途上であるが、適切なデューデリジェンスをすれば、とりわけ暗号資産の直接管理に消極的または手立てがない企業に対し、一歩踏み出すための好手となり得るかもしれない。

一部の分散型アーキテクチャは「オラクル問題」を抱えると言われるが、少なくとも現段階で、仮想通貨ファンドはオマハの賢人(オラクル)の問題を抱えてはいないようである。

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Shutterstock
原文:Crypto Funds Are Outperforming – You Shouldn’t Be Surprised