
理想的には、金融システムにおいて、いったん取引が正確に処理されれば、それが取り消される可能性は限りなくゼロであるべきだ。だが伝統的金融では、そうではないこともある。一方、ブロックチェーンシステムは「ブロック・ファイナリティ」によって、この矛盾を解消しようとしている。
ここでは、ブロック・ファイナリティとは何か、その仕組み、ブロックチェーン・ネットワークにもたらす意味について解説する。
ブロック・ファイナリティとは
ブロック・ファイナリティとは、いったん取引が承認されてブロックチェーン・ネットワークのブロックに追加されると、取り消しは不可能であることを指す。その時点で取引は最終的なものと見なされ、もはや変更できない。
これがブロックチェーン上の取引が恒久的であり、しばしば「改ざん不可能」と呼ばれる理由だ。
ブロック・ファイナリティは、ブロックチェーンのコンセンサス・プロトコルにおいてきわめて重要だが、必ずしも即時に行われるわけではない。ブロックチェーン・ネットワークでは、ブロック・ファイナリティとレイテンシー(遅延)は並存している。つまり、ブロックチェーンのファイナリティ・レートは、レイテンシーのレベル(取引を送信してからオンチェーンで承認されるまでの時間)と密接に関係している。
ブロック・ファイナリティの仕組み
ブロック・ファイナリティは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)ネットワークとプルーフ・オブ・ステーク(PoS)ネットワークでは異なる方法で実現される。
ビットコインのようなPoWチェーンでは、ブロック・ファイナリティは「最長チェーン」ルールに従う分散型コンセンサスメカニズムによって実現される。
マイニング中、マイナーは同じブロックを同時にブロードキャストすると、複数のチェーンが生成される可能性がある。その場合、チェーンは複数のフォーク(バージョンのようなもの)に分岐し、オリジナルのチェーンを特定することが難しくなる。そして両方のフォークで検証が続けられ、新しいブロックを追加し続ける。
しかし、いずれかのチェーンが他のチェーンよりも先にブロックを検証すると、そのチェーンが最長チェーンとなる。
最長チェーンは、最も多くの有効ブロックを持つチェーンとして認められ、短いチェーンでマイニングされたトランザクション(取引)は無視される。ただし、破棄されたチェーンのトランザクションは、最長チェーンのブロックに含まれている可能性があり、ブロック・ファイナリティが実現する。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)チェーンでのブロック・ファイナリティは、PoSの実装によって異なる。
例えば、イーサリアムのPoS実装であるCasper FFGは、100ブロックごとにチェーンの有効性を確認するバリデーターを導入することでファイナリティを実現している。ブロックは、すべてのバリデーターの3分の2の承認によって確定される。
Cosmos(コスモス)ネットワークで使用されるTendermintは、事前投票と事前コミットの3分の2以上を獲得するとファイナリティを実現する。これは、全バリデーターのうち3分の1が応答しなくなるまで永続的に続く。
ファイナリティの種類
ブロックチェーンのファイナリティは、確実性と永続性のレベルに応じて、4つの主要タイプに分類される。
確率的ファイナリティ
確率的ファイナリティはシンプルなチェーンベースのファイナリティ。チェーンに追加されるブロックが増えるにつれて、取引が取り消される可能性が低くなる。
確率的ファイナリティは、取引がマイニングされたブロックに含まれ、最長チェーンに含まれることで実現する。ビットコインのようなほとんどのPoWブロックチェーンで一般的だ。
経済的ファイナリティ
経済的ファイナリティは、経済的インセンティブによってファイナリティを実現する。この背後にある考え方は、ブロックチェーンネットワークで取引を取り消すことは、誰にとってもコストが非常に高くなるということだ。
経済的ファイナリティはPoSネットワークと密接に結びついており、バリデーターは担保として一定の暗号資産をネットワークにステーキング(預け入れ)しなければならない。バリデーターは悪意のある行為を行えば、ステーキングした資産を失うことになる。
絶対的ファイナリティ
絶対的ファイナリティは最高レベルのファイナリティだ。このシステムでは、取引がオンチェーンでブロードキャストされると、改ざんや取り消される可能性はゼロになる。
Ripple(リップル)やStellar(ステラ)のようなブロックチェーンプロトコルは、絶対的ファイナリティを実現するためにフェデレーテッド・コンセンサスを使用している。
フェデレーテッド・コンセンサスは、ブロックを承認し、ネットワークのセキュリティを確保する、信頼できるバリデーターに依存している。CosmosやAlgorand(アルゴランド)のようなブロックチェーンプロトコルもまた、絶対的ファイナリティを実現するためのコンセンサスメカニズムを使用している。
即時ファイナリティ
即時ファイナリティは、取引がネットワークにブロードキャストされると、瞬時に承認され、チェーン上で取り消し不可能になる。
即時ファイナリティは実現が難しく、ブロックチェーンがコンセンサスを確立し、取引を処理する方法を根本的に変える必要がある。ただし、Shardeumのような分散型プロトコルは、高い確実性でほぼ即時ファイナリティを実現している。
ファイナリティはブロックチェーンにどう影響するのか?
ブロックチェーンのファイナリティは、ブロックチェーンの信頼性と安定性の基礎となる概念だ。ファイナリティは取引の有効性と不可逆性を保証し、有効な取引をオンチェーンで記録することで二重支払い問題を防止する。デジタル資産は使用済みとみなされ、再利用できなくなる。
スマートコントラクトの展開にもファイナリティが欠かせない。スマートコントラクトは、取引当事者間の合意内容を自己実行型コードに組み込む。ファイナリティは、こうしたコントラクトの結果が予測可能で取り消し不可能であることを保証する。
分散型アプリケーションは、ファイナリティを利用して、その運用を保護し、信頼性を確保している。ユーザーは、Dapp(分散型プリ)で行われるすべてのアクションが安全かつ永続的であることを確信できる。
結論
ブロック・ファイナリティは、ブロックチェーンテクノロジーの基礎であり、暗号資産の取引に不可欠。ブロックチェーンテクノロジーが進化するなか、高速かつ安全なファイナリティの実現は今後の発展に欠かせない。
|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Shutterstock
|原文:What Is Block Finality in Crypto?