ユニセフが「仮想通貨ファンド」設立、イーサリアム考案者も登壇──デブコン5

ユニセフが国連機関として初めて「仮想通貨ファンド」を設立したことが10月9日、仮想通貨で時価総額2位のイーサリアム開発者が集まる世界最大級の会議デブコン5で分かった。主催者であるイーサリアム財団のエグゼクティブ・ディレクター宮口礼子氏が発表した。同日には、同仮想通貨の考案者ヴィタリック・ブテリン氏(上写真)が講演するなど、注目のセッションが続いた。

ユニセフのファンドはオープンソース技術に寄付

ユニセフが設立した仮想通貨によるファンドは、ビットコインとイーサリアムで寄付を受け付け、若年層に便益を与えるオープンソース技術に寄付をするという。発表した宮口氏によると、国連機関による仮想通貨ファンドの設立は初めてという。

デブコン5で登壇した宮口氏

ユニセフのエグゼクティブ・ディレクター Henrietta Fore氏は発表文の中で、「もしデジタル経済とデジタル通貨が将来世代の人生を形作るポテンシャルがあるのならば、彼らが提供する機会を探求することは重要だ」と述べている。

ヴィタリック・ブテリン氏「イーサリアムを再構築しよう」

また同日、イーサリアムを考案したヴィタリック・ブテリン氏が講演。サトシ・ナカモトが発明したビットコインは、裏切り者が混じっても“正しい”合意形成ができる仕組みがある(ビザンチン将軍問題の解決)としたうえで、「サトシはビザンチン将軍問題を解決したといわれるが、(彼が)発明したのはクリプトエコノミクスだ」と述べた。

ビットコインはマイナーがビットコインを得ようと利己的に動くことで、ネットワークが保たれている。クリプトエコノミクスとは、このような金銭的なインセンティブ構造を作ることで、ネットワークが維持される仕組みを指す。

ネットワークを維持する仕組みはビットコインもイーサリアムも、現状はPoW(プルーフ・オブ・ワーク、作業量による証明)だが、イーサリアムは今後、PoS(プルーフ・オブ・ステーク、保有量による証明)に移行する予定だ。

ブテリン氏はイーサリアムがPoSに移行する理由として、ディスインセンティブ(阻害要因の意)を与えられることを挙げた。PoSの仕組みでは、保有量の多さがそのまま影響力となる。たとえばイーサリアムを攻撃するには、攻撃対象であるイーサリアムを保有する必要があるわけだ。ブテリン氏はこの点をPoWのビットコインとの違いとして指摘した。

そのうえで、会場の開発者たちに向けて、「サトシは2009年に(クリプトエコノミクスという)面白い仕組みを発明した。我々はその上で、(イーサリアムを)再構築しよう」と呼びかけた。

デブコン5は8日から11日まで大阪で開催され、世界各地から開発者を中心に3000人超が参加する予定。

文・写真:小西雄志
編集:濱田 優