台湾の若きデジタル担当相(38)が講演「なぜ台湾が新しい技術を取り入れられたか」──デブコン5

台湾のデジタル担当政務委員(日本でいう大臣)のオードリー・タン(唐鳳)氏が10月10日、大阪で開催されているイーサリアム開発者会議「デブコン5」で登壇した。38歳の若き大臣は、「なぜ台湾が新たな技術を取り入れることができるのか」という問いに対して、台湾の民主化が(台湾初の総統民選が行われた)1996年であることを指摘、メンテナンスすべきレガシー・システムが少ないからだなどと述べた。

「私のメールは完全に透明(公開されている)」

タン氏はタッチ式のペンを用いて、スライドに書き込みながら講演した。また観客が質問を投稿できるアプリslidoを用いて質問に答えた。

オードリー・タン
タッチペンを片手に講演するタン氏

講演でタン氏は、「私のeメールは完全に透明だ」と述べ、メールの送信者を匿名化した上で、返答を公開していることを明かした。その理由・狙いとして、「メールを送信しようと思う人は他の回答を事前に見ることができ、また私も同じ質問に答えなくてすむ」と話し、両者にとって時間の節約になると強調した。

タン氏は、社会問題を新たな形での解決を目指すラディカル・エクスチェンジのボードも務めていると述べた。これは、マイクロソフト主任研究員で、『ラディカル・マーケット(Radical Markets)』の著者(共著)のGlen Weyl(グレン・ワイル)氏が中心となって進められている運動だ。

その一環として台湾の総統ハッカソンで「Quadratic Voting」と呼ばれる新たな投票の仕組みを採用したとも説明。そうした新たな仕組みを取り入れられた理由として、冒頭でも触れたように台湾の歴史が影響していると指摘。無制限の4G回線が台湾のほぼ全土で16ドルで提供されていることも紹介し、住民がデジタルに親しみやすい状態であることも挙げた。

日本のIT担当相との比較については……

タン氏といえば、9月の内閣改造で情報通信技術(IT)政策担当大臣になった竹本直一氏と比較されて話題となった。そのことについて問われたタン氏は、「比較する記事やツイートを見たが、その大臣と面識がない」としたうえで、台湾と日本は政府の構造が違うとして「比較するのはフェアではない」と気遣いを見せた。

文・写真:小西雄志
編集:濱田 優