デジタルドルを「積極的に」議論:米連邦準備銀行首脳

米連邦準備銀行の首脳が2019年10月16日(現地時間)に米国の中央銀行はデジタル通貨の発行について「積極的に検討し、議論している」と語った。現職および以前の規制当局担当者の間で、ドルが世界の準備通貨としての地位を失うリスクがあるとの懸念が高まっている中でのことだ。

テキサス州オースティンでの地元のビジネスイベントで、ダラス連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of Dallas)の総裁ロブ・カプラン(Rob Kaplan)氏はこう語った。

「我々は連邦準備制度(Fed)でデジタル通貨の開発を追求もしくは推進することをまだ決定していないが、しかし積極的に検討し議論している」

Fedの主要金融政策委員会の中で最も幅広い資本市場経験を持つ、元ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)幹部であるカプラン氏は、もし外国政府やその他の組織が広く受け入れられる代替通貨を開発すれば米国はより高い金利コストを被る可能性があると述べた。

このコメントは、米商品先物取引委員会(Commodity Futures Trading Commission)のJ.クリストファー・ジャンカルロ(J. Christopher Giancarlo)元委員長が論説で準備通貨としての地位を失いかねないリスクを避けるために米国にデジタル通貨を作るよう呼び掛けた後のものだ。ジャンカルロ氏は現在、ブロックチェーンと仮想通貨ポリシーの業界団体であるデジタル商工会議所 (Chamber of Digital Commerce) の顧問に就いている。

米国の金利に対する影響

過去1世紀にわたる国際商取引でのドルの重要な役割と国際情勢における米国の主導的立場のために、各国の中央銀行や商業銀行、投資家らの多くは米国通貨建ての資産を保有している。

もし魅力的で実行可能な代替物の出現でその状況が止まった場合、米国債のような米国資産への需要は縮小し、代わりに国債の金利が上昇するだろう。現時点で国債の金利は未曾有の23兆ドル(約2500兆円)に近づいている

カプラン氏は、もし準備通貨の地位を失って金利が1%、すなわち債権トレーダー用語で100ベーシス・ポイント上昇すれば、米国政府の金利は2000億ドル(約21兆円)増加する可能性があると指摘した。

CoinDeskからの質問にカプラン氏は以下のように回答した。

「ドルは世界の準備通貨でいられなくなるかもしれず、もしそれが起きたら、比較的短期の平均償還期間で20兆ドル(約2100兆円)に100ベーシス・ポイントとすると、巨額なものとなる」
「年に2000億ドル(約21兆円)ともなれば、すぐに我々は大きな問題に苛まれる。だから、しっかり注視しているのです」

Facebook「リブラ」と国際情勢

Fedのジュローム・パウエル(Jerome Powell)議長と米国議員らは今年、フェイスブック(Facebook)のデジタル通貨リブラ(Libra)の開発計画がすぐに人気を博し、ドルに取って代わり米国金融システムの安定性を弱める可能性があると警告していた。

しかし決済ネットワークであるマスターカード(Mastercard)やビザ(Visa)といったプロジェクトの主要支援企業が支持を撤回したため、最近になってこれらの懸念は薄れた。

「リブラは現時点では後退したようです」とカプラン氏は語る。しかし「誰かが実現の手立てを見つけることになるでしょう」

カプラン氏はFedでの自身の役割として多くの外国高官らと話をしているという。

「世界の人々はドルとドルのインフラに代わるものを見つけようと真剣に取り組んでいます。なぜならドルに投資をするほど、制裁や関税、そして現在起こっていることの影響を受けやすくなるからです」

国際通貨基金(International Monetary Fund)によると米中貿易戦争は世界経済に大きく影響を与えており、一方、メキシコ、カナダ、欧州といった他の主要貿易相手国との協定はひっくり返ったり、再交渉のテーブルに戻っている。

米国財務省はまたイランやベネズエラなどの非友好的または腐敗と見なされる政権に対して厳しい制裁を課している。

カプラン氏は以下のように語った。

「近い将来もドルは世界の準備通貨だろうと考えます。比較的低金利で負債を借り換えできていますが、それは当たり前のことだと思うべきではないのです」

翻訳:下和田 里咲
編集:T.Minamoto
写真:Image via Dallas Federal Reserve 
原文:Top Fed Official Says US Central Bank ‘Actively’ Debating Digital Dollar