リブラで中央銀行の失敗が明らかに:スウェーデン中銀エコノミスト

リブラで中央銀行の失敗が明らかに:スウェーデン中銀エコノミスト

Brady Dale
公開日:2019年 10月 25日 06:30
更新日:2019年 10月 25日 06:30

フェイスブック(Facebook)のリブラ(Libra)が各国の中央銀行に警鐘を鳴らしている。スウェーデン中銀のガブリエル・ソダーバーグ(Gabriel Soderberg)氏は、政策当局が巻き返しを図るべき分野はクロスボーダー決済であると述べている。

「リブラは中央銀行がまだ提供していない、安くて効率的なクロスボーダー決済に需要があることを明らかにした」とソダーバーグ氏はCoinDeskに語った。

「このギャップを浮き彫りにすることは、中央銀行が『よろしい、ではどのように進めていこうか』と真剣に考えなければならないことを意味している。我々が解決していない問題があり、最大限の安全性と根気強さをもっていかに解決するかが問われる」

ソダーバーグ氏はスウェーデン中銀のシニアエコノミストで、「eクローナ」プロジェクトに携わっている。リブラを「ビッグリップル(big Ripple)」(ただし根本的設計は異なる)と呼んで、クロスボーダー決済に特化したブロックチェーンプロジェクトに同意を示した。

「彼らが提供しようとしているものは、似ている部分がある」とソダーバーグ氏は述べる。

好機をとらえる

最近のリブラの混乱を考慮すると、これまでデジタル法定通貨に楽観的だった中央銀行がイノベーションに賛意を述べているのは意外ではないだろう。

リブラ協会(Libra Association)に参加する21団体はジュネーブで正式に憲章を承認したが、それが行われた前の週にはビザ(Visa)、マスターカード(Mastercard)、ペイパル(PayPal)、ブッキング・ホールディングス(Booking Holdings)、イーベイ(eBay)、ストライプ(Stripe)、メルカドパゴ(Mercado Pago)などの大手企業が脱退し、その一部はプロジェクトに対する規制当局の抵抗について懸念を示した。

スウェーデンは数年にわたり「eクローナ」に取り組んでおり、他国をリードしていることで知られている。

「少なくともここスウェーデンにおいては、何か新しいことを示しているとは思わない」と、ソダーバーグ氏はリブラについて述べる。「我々にとっては、むしろすでに知っていることを強調しているのに近い。このため、中央銀行として何が起こっているのかを理解するために、時代の流れに乗り続ける必要がある。我々に示されたのは、いかに物事が早く進むのかということだけだ」

とはいえリブラやリップルなどの仮想通貨の基礎となる考え方は必ずしも新しいものではないと、ソダーバーグ氏は述べる。1940年代にジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)がいわゆるバンコール(Bancor)について語って以来、国際通貨の夢は健在である。「つまり、古いタイプの議論だ」

主要通貨や国債などの低リスク資産に裏打ちされたステーブルコインを作り出すというリブラの設計に関して、リブラは「賢明に選択された少数の中央銀行の金融政策を継承している」と、ソダーバーグ氏は指摘する。

「では、ここでステーブルコインの安定性とは何を指すことになるのか。それは国だ。彼らですら民間企業が安定性を得られるために国の方を向いているが、私はそれを興味深いと感じている」

遅れずついていく

スウェーデン中銀はここ数週間、変化と戦うのではなく適応することに関心があると示唆してきた。

スウェーデン中銀は10月15日(現地時間)、国境を越えた送金の速度が遅く企業は取引あたり200ベーシスポイントの費用がかかる場合があると指摘して再びリブラを擁護したイングランド銀行(Bank of England)のマーク・カーニー(Mark Carney)総裁のコメントに同意を示した

今月、スウェーデン中銀のステファン・イングベス(Stefan Ingves)総裁は、リブラを、各国の中央銀行が事業のあり方を考え直すことを余儀なくされる「極めて重要な分水嶺となる出来事」と呼んだが、民間セクターによる通貨の取り組みの大部分は遅かれ早かれ崩壊すると付け加えた。

各国の中央銀行の包括的金融機関である国際決済銀行(Bank of International Settlements:BIS)はCoinDeskのインタビューで、金融政策当局は中央銀行デジタル通貨(CBDC)についてや、民間が発行するステーブルコインなどのバリエーションについて注視すべきと述べた。こうした動きによって中央銀行はそれぞれのバランスシートに追加資産を保有することが必要になる可能性がある。

BISのイノベーションデジタルエコノミー部門のラファエル・アウアー(Raphael Auer)氏は次のように述べる。

「民間が発行するステーブルコインは(中略)マーケットパワーや、コインが常に完全に裏打ちされていることをどのように保証するのかに関して疑念を投げかけるだろう。貨幣は一般の人々に対して責任を持つ機関に任せるのがベストだと、歴史が示している」

翻訳:Emi Nishida
編集:T.Minamoto
写真:Krona image via Shutterstock
原文:Libra Shows Central Banks’ Failure on Cross-Border Payments: Riksbank