アマゾン、三井物産出資のテイストメイド、日本でeコマース開始──都内でスタジオ・カフェの複合施設を検討

アマゾン、三井物産出資のテイストメイド、日本でeコマース開始──都内でスタジオ・カフェの複合施設を検討

Brady Dale
公開日:2019年 11月 12日 05:45
更新日:2019年 11月 13日 23:13

2012年の創業からこれまで約1億3000万ドル(約142億円)の資金を調達し、食(Food)、旅(Travel)、家(Home)をテーマに独自の動画メディアを制作・配信してきた米テイストメイド(Tastemade)は、早ければ今月中にも日本で料理器具や食器を中心とするeコマース事業を開始する。来日した共同創業者のスティーブン・キッド(Steven Kydd)氏が明らかにした。

テイストメイドが2016年に設立したTastemade Japanは、事業拡大の一環として、都内に料理動画の撮影スタジオやカフェ、イベントスペースなどを完備した複合施設の開設も検討している。すでに複数の候補地の視察を始めた。キッド氏がCoinDesk Japanの取材に答えた。

カリフォルニア州サンタモニカ生まれのテイストメイドは、ミレニアル世代(1980年〜2000年に生まれた世代)をターゲットに、低コスト・高品質の料理動画の制作を始め、Facebookやインスタグラム、YouTubeなどのソーシャルメディアを中心に配信。創業からそのブランド力を徐々に強め、月間視聴者数は世界で2億5000万人、再生回数は30億回を超えるまでに伸ばしてきた。

ミレニアル世代がコアターゲット

東京・南青山にあるTastemade Japanの撮影スタジオ兼オフィスでインタビューに答えるテイストメイド共同創業者・スティーブン・キッド氏。

拠点を米国、日本、イギリス、フランス、ブラジル、アルゼンチン、中国、インドネシアの8カ国にまで増やし、コンテンツの幅もレシピ動画にとどまらず、旅行やホーム&デザインなどを加え、今ではエンターテインメント性の高いライフスタイル・デジタルメディアとなった。

「ソーシャルメディアとスマートフォンと共に生きてきた世代に対して、デジタルコンテンツとeコマースに加え、オフラインでの実体験を提供することに特化してきた」とキッド氏は言う。「今の時代、撮影機材のコストは低下しているが、そのクオリティはさらに上がっている。この点も、テイストメイドがブランドを作り上げられた要因の一つだ」

取材で訪れた東京・南青山にあるTastemade Japanのオフィス兼スタジオでは、ミレニアル世代のタレントたちがキッチンに立ち、レシピの撮影を行なっていた。オフィススペースには、多国籍のスタッフたちがコンテンツ制作を進める。

Uber Eatsでデリバリー開始

Uber Eatsを使って実際にデリバリーできる商品の説明をするキッド氏。

eコマース事業のスタートに先立ち、Tastemade Japanは11月1日、“ゴーストレストラン”や“ゴーストキッチン”で知られるデリバリー専門のレストランが入居するシェアキッチンを運営するKitchenBASE(東京・中目黒)と連携し、人気動画のメニューをUber Eatsと出前館でデリバリーできるサービスを開始した。

テイストメイドは既に、ブラジル・サンパウロにスタジオ・カフェ・イベントスペースの複合施設を運営している。コロンビアのデリバリー・スタートアップで、南米主要国で事業を展開する「ラッピ(Rappi)」と連携して、フードデリバリー事業を始めている。

オンライン動画の多くの視聴者は、テイストメイドが主催するオフラインのイベントに参加し、カフェで食事を楽しみ、リピーターはデリバリーサービスを使うことができる。食(フード)に限らず、テイストメイドが作るライフスタイルの“テイスト”を好むファンは、旅行(トラベル)や家財道具(ホーム)などの購入においてもテイストメイドを利用するようになると、キッド氏は説明する。

アマゾン、三井物産、Cool Japanが出資

東京・南青山にあるTastemade Japan。撮影スタジオの隣にはオフィススペースがある。

「私の世代とは違って、ミレニアル世代はテレビを長く観ることはない。スマートフォンでデジタルコンテンツを楽しみ、旅にはパスポートとスマホを持って出かけていく」と、今年50歳になったキッド氏は言う。

テイストメイドは昨年、5度目となる資金調達を行なった。約4800万ドル(52億円)の追加資金を入れ、トラベルとホーム関連のコンテンツの拡大を加速させた。ネットフリックス(Netflix)にも投資してきたシリコンバレーのベンチャーキャピタル、レッドポイント・ベンチャーズ(Redpoint Ventures)が、テイストメイドのシードラウンドで出資している。

メディア、リテールのディスラプター

その後、アマゾンやゴールドマン・サックス傘下の投資会社などがテイストメイドに投資してきた。日本からは、三井物産と官民ファンドのクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)が資本参加している。

「日本には素晴らしい食がある。年間数千万人の旅行客が海外から集まる魅力的な国。テイストメイドが日本に引き寄せられたのは必然だ」とキッド氏。「世界のリテール(小売り)市場とメディア市場で、テクノロジーによるディスラプションの波が起きている。既存システムを破壊するディスラプターたちは、新しい手法とテクノロジーをフル活用して若い世代のライフスタイルを変えてきている」

東京のスタジオで作られたレシピ動画は、中国語や英語コンテンツなどに編集され、世界の視聴者が楽しむことができる。オンラインとオフラインを巧みに活用し、世界のミレニアル世代をターゲットに、動画コンテンツ配信で広告収益を伸ばし、食、旅、家をテーマにした商品のeコマースとフードデリバリーで事業を拡大させている。

テイストメイドは今後どこまでグローバルにその企業価値と収益を拡大できるのか。世界中の若い世代を魅了し続けられるのだろうか。今、注目される「モダン・メディア企業」の一社だ。

インタビュー・文:佐藤茂
写真:多田圭佑