なぜ1000BTC以上持つビットコイン・リッチは30%も増えたのか【約10億円】

ビットコイン・リッチリスト(Bitcoin Rich List)、すなわち1000ビットコイン(約10億円)以上を保有するアドレス数は過去12カ月間で大きく増加した。これは富裕層投資家の流入を反映している可能性がある。

わずか0.01%が1000BTC以上保有

コイン・メトリックス(Coin Metrics)のデータによると、リッチリストの数字は2018年9月以来、30%増加した。仮想通貨取引所のアドレスを除外するよう調整しても数字は同じような上昇傾向を示している。

ビットインフォチャート(BitInfoChart)のビットコイン・リッチリストによると、記事執筆時点で全ビットコイン・アドレスのわずか0.01%にあたる2148アドレスが1000ビットコイン(BTC)以上を保有している。

黒:1000ビットコイン以上を保有するアドレス数、黄:ビットコイン価格

上記のグラフに見られるように、リッチリストは過去12カ月間で大幅な上昇を記録した。投資家でアナリストのウィリー・ウー(Willy Woo)氏は、リストの増加の主な理由は市場に参加する投資家の増大にあると考えている。

「富裕層の投資家の流入、あるいは取引所やカストディ・ソリューションでのコールド・ストレージという2つの可能性が考えられる。後者は原因として排除できないが、そうした組織で供給が増加したタイミングについての他のデータと一致しない。今のところ、私は1つ目の説明が有力と考えている」

ビットコイン価格は2018年第4四半期に6400ドルから3100ドルに下落したことに注目したい。経験豊富な投資家は価格の下落に乗じてビットコインを安値で購入し、1000BTC以上を保有するアドレスの増加につながった可能性もある。

個人ではなく取引所が原因?

しかし、1000以上のBTCを所有する「個人」の数が増加したとは考えない人もいる。

つまり、個人はカストディのために、5万BTCを単一のウォレットから50の異なるウォレットへ移動させることができる。また、バイナンス(Binance)のような仮想通貨取引所は、何百万ものユーザーのビットコインを保管し、異なるウォレットに保管できる。

「大半が取引所。(中略)取引所で保管されるBTCの数も、取引所/カストディアンの数も増加している」とトレーダーのアレックス・クルーガー(Alex Kruger)氏はCoinDeskに語った。

クルーガー氏は、BTCのオンチェーン・トランザクション量は2018年9月以来、比較的変化しておらず、リッチリストの増加が取引所によるものである可能性を示していると指摘した。

取引所はオンチェーン・トランザクションを頻繁には行わない傾向がある。例えば、リストの上位のアドレスは入金に比べて出金が少なく、これは取引所のコールドウォレット、つまりオフラインウォレットである可能性がある。

取引量は取引所の生命線だが、必ずしもオンチェーンに反映されない。取引所はパブリック・レジャー上でトランザクションを実行することなく、内部で顧客のアドレスに預け入れや引き出しを行っている可能性があるからだ。

それでも、トランザクションが頻繁ではない特定のアドレスが取引所なのか、「クジラ」と呼ばれる大口投資家なのかを確実に知る方法はない。

さらに下記のグラフに示されている通り、既知の取引所アドレスを除外しても、リッチリストは2100アドレス以上と、過去12カ月間で約30%増加した。これはリッチリストの全アドレスの増加率とほとんど変わらない。

うすい黄:リッチリストの全アドレス、濃い黄:リッチリストから取引所を除外したアドレス

このことは富裕層の投資家の流入が、リッチリストの増加の主な理由とするウー氏の解釈を裏付けている。

仮想通貨データ提供企業「メサーリ(Messari)」のプロダクト担当ディレクター、チャオ・ワン(Qiao Wang)氏によると、増加の理由としてもう1つ考えられるのは、時間とともに所有権が分配されたことだ。

「最初はサトシ、その後は数少ない初期のマイナーがすべてのビットコインを所有していた。しかし時間とともに彼らのシェアは減少し、他の人たちが市場に参入してきた」とワン氏は述べた。

この先、富裕層の投資家も取引所も「リッチ」なアドレスの増加を牽引し続けるかもしれない。過去にはビットコイン価格を上昇させてきたマイニング報酬の半減期は次回、6カ月後に予定されており、新しい投資家が市場に参入してくる可能性がある。

さらに、ビットコイン先物取引所「バックト(Bakkt)」での取引高も増加している。バックトは現物引き渡し型決済先物であるため、ビットコインを保有する必要がある。最近では、取引高は1100万ドル(約12億円)と、250%以上も増加した。

インターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange)の子会社であるバックトは、2019年12月8日(現地時間)に先物のオプション取引をローンチする予定だ。

※注:記事執筆時、筆者はビットコインを保有していない。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Champagne glasses image via Shutterstock; exchange-adjusted chart via Glassnode
原文:The ‘Bitcoin Rich List’ Has Grown 30% in the Last Year, But Why?