規制側から推進側に──リブラに懸念を示した欧州中央銀行の高官、国際決済銀行のイノベーション推進責任者に

欧州中央銀行(ECB)の専務理事をまもなく退任するブノワ・クーレ(Benoit Coeure)氏はデジタル通貨に代表されるフィンテックのメリットをリサーチするグローバルな新しい取り組みを率いる。

国際決済銀行(BIS)は2019年11月10日(現地時間)、クーレ氏は「イノベーティブな金融テクノロジーにおける中央銀行間の国際協力を促進するために設立された」BISイノベーション・ハブ(BIS Innovation Hub)の責任者となると発表した。最初の任期は5年、2020年1月からスタートする。

クーレ氏は声明で以下のように述べた。

「BISに参加できることを大変うれしく思っている。テクノロジーが急速に変化しているこの時期に、私の専門知識をグローバルな中央銀行コミュニティーに提供できることを楽しみにしている。我々は金融の安定を支え、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)を推進するためにイノベーションのベスト・ユースを作らなければならない」

イノベーション・ハブには、中央銀行の運用にメリットをもたらし、また公共インフラを開発して中央銀行のオペレーションを向上させることができる、フィンテック領域の重要なトレンドを明らかにする権限が与えられている。

さまざまな領域の中で注力テーマは、中央銀行デジタル通貨、グローバル・ステーブルコイン、そしてその他の決済イノベーション。BISのウェブサイトによると、イノベーション・ハブはまた、レグテック(複雑化する金融規制に対応する金融ソリューション)、電子マーケット、貿易金融のデジタル化、そして「大手IT企業が金融仲介におよぼす大きなインパクト」(おそらく、フェイスブックのリブラのことと思われる)もテーマとする。

新たにイノベーション・ハブのトップとなるクーレ氏は依然、リブラは「間違いなく、中央銀行と立法機関にとって警鐘」となっており、グローバル・ステーブルコインがもたらす変化に対応しなければならないと述べた。

当時、同氏はリブラ、および同様の取り組みは、銀行サービスを享受できていない人々を金融システムに参加させ、国境を超えた決済をより安価に、より早く、より透明にすることができると認めた。

しかし、同氏はまたマネーロンダリング、税金と消費者に関わる問題、中央銀行の金融政策への脅威など、数多くの潜在的リスクにも触れた。

9月、クーレ氏はまた、そのスコープと構造をリブラに問うための決済・市場インフラ委員会(Committee on Payments and Market Infrastructure:CPMI)委員長を務めた。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸
写真:Benoit Coeure image via ECB/Flickr
原文:ECB’s Benoit Coeure to Lead Central Banking Digital Currency Initiative