
- ソラナ(Solana)は、ミームコインの発行母体として評判を高めている。
- だが金融機関もまた、自社プロダクトを構築するためにソラナの利用に関心を持っている。
- ソラナはイーサリアム(Ethereum)よりもあとに登場し、処理能力の高さや安価な取引手数料を特長としている。
ソラナはミームコイン向け、イーサリアムは金融機関向けと気軽に考えることは簡単だろう。
米資産運用会社ブラックロック(BlackRock)のラリー・フィンク(Larry Fink)CEOは、イーサリアム上でのトークン化のメリットを語っており(同社はイーサリアム上でトークン化ファンド「BUIDL」を立ち上げた)、一方、ソラナはユーザーが数分でミームコインを発行できるpump.funの成功によって、たびたび話題を集めている。
しかし、イーサリアムが機関投資家の関心を独占しているわけではないとソラナ基盤のDeFiプロトコルで、暗号資産ソラナ(SOL)のステーキングサービスを提供するマリネード・ファイナンス(Marinade Finance)のチーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)、ハドリー・スターン(Hadley Stern)氏は考えている。
「機関投資家から見れば、まだ時期尚早」
「機関投資家から見れば、まだ時期尚早」とスターン氏はCoinDeskに語った。同氏はフィデリティ・デジタル・アセット(Fidelity Digital Assets)の初代社長で、BNYメロン(BNY Mellon)でデジタル資産カストディのグローバル責任者を務めた。
「イーサリアムとソラナで構築中、あるいはすでに構築されたTradFi(伝統的金融)プロダクトの数は、おそらく片手で数えられる程度だろう」と同氏は続けた。
「機関投資家の強い関心から、多くのプロダクトの可能性が生まれているため、私は(マリネードに)参加した」「資産運用会社、富裕層の保有者、個人の保有者、ヘッジファンド…は、(ソラナでのステーキング)に関心を示している」
2020年3月にスタートしたソラナブロックチェーンと暗号資産ソラナ(SOL)は、2021年の強気相場において、暗号資産取引所FTXのサム・バンクマン-フリード(Sam Bankman-Fried)CEOからの支援もあって、爆発的な人気を博した。FTX崩壊の際にはSOLも急落したが、2023年には復活を遂げた。現時点では、トランプ氏の大統領就任を受けて、さらに人気が高まっている。
スターン氏の評価は、フランクリン・テンプルトン(as Franklin Templeton)、シティバンク(Citibank)、ソシエテ・ジェネラル(Société Générale)のような金融大手が2023年9月、ソラナの年次カンファレンス「Breakpoint」でソラナベースの新しいプロジェクトを発表したことを受けたものだった。そして、こうした機関投資家の熱狂に心を躍らせたのは同氏だけではなかった。
「Breakpointで、どれほど多くの人が今、ソラナ上で開発しているかを知って、目から鱗が落ちる思いだった」とソラナをベースとする分散型デリバティブ取引所Zeta Marketsの創業者トリスタン・フリッツァ氏(Tristan Frizza)はCoinDeskに語った。
「機関投資家はかなりクレイジーなことをしている」
ソラナ vs イーサリアム
一見すると、金融機関にとってイーサリアム上で開発することは当然のように思える。何と言っても、最古かつ最大のスマートコントラクトブロックチェーンであり、暗号資産エコシステムにおいて最も多くの開発者を抱え、ステーブルコイン取引の大半を決済し、DeFi(分散型金融)を生み出した。
「大手銀行で働き、資産のトークン化を試みている場合、資産をイーサリアム上に置いても解雇されることはないだろう」と資産運用会社ビットワイズ(Bitwise)の最高投資責任者(CIO)マット・ホーガン(Matt Hougan)氏はCoinDeskに語っている。
しかし、暗号資産を保有し、ソラナの大規模バリデーターでもあるソル・ストラテジーズ(Sol Strategies)のリア・ウォルド(Leah Wald)CEOは、イーサリアムはリスクフリーではないと述べた。
「取引手数料に関する不確実性が続いている状況では、誰も安心できない」とウォルド氏はBusiness Insiderに語った。
「もしあなたが機関投資家で、10年先を見据えているのなら、懸念を感じるブロックチェーン上で構築することはできないだろう」
「ブラックロックのBUIDLはイーサリアムをベースとしており、彼らが構築しようとしているものは、私はまったく問題ないと思う」とウォルド氏は付け加えた。だが、リアルタイムの決済あるいは取引のような大量のトランザクションを伴うプロジェクトは苦戦するかもしれないという。
「より洗練されたオンチェーンファンドあるいは金融プラットフォームについて話をしているなら、ソラナには真のチャンスがある」
すなわち、レイヤー2に依存するイーサリアムのスケーラビリティ戦略が成功する保証はなく、この数年のイーサリアムの変遷(政策の変更や、PoWからPoSへの移行など)は、イーサリアムがまだ方向性を模索していることを示している。
対して、ソラナの安価な取引手数料と高い処理能力は、複雑な技術ロードマップに依存していない。そのことがすべてを変える可能性がある。
しかしウォルド氏は、米国ではイーサリアムの方がソラナよりも規制の明確さによる恩恵を受けていると指摘した。SEC(米証券取引委員会)が2024年夏、イーサリアム現物ETFを承認したことは、機関投資家にとって心強い材料だ。とはいえ、トランプ政権の誕生でソラナ現物ETF登場への期待も高まっている。
ビジネス開発を支援するソラナ
ソラナが過小評価されがちなもう1つの観点は、技術イノベーションの点だとZeta Marketsのフリッツァ氏は述べた。イーサリアムには多数の開発者がいることで知られているが、ソラナの開発者は、たとえソラナの枠を超えて暗号資産エコシステムにインパクトを与える新しいツールやプロダクトを開発しても、注目されることはあまりない。
「多くの人は、ソラナが構造的な観点から実現できること、そしてソラナ開発者の考え方を過小評価している」とフリッツァ氏。
「彼らは本当にユーザー、プロダクトのことを考え、スケーラブルでユーザーニーズに応えるものを構築している」
フリッツァ氏にとって、そうした姿勢は、暗号資産ブームが再び起こった場合、ソラナ上に魅力的なアプリが次々と登場することを意味する。Zeta Marketsについて言えば、優先事項の1つは「UXの障壁を取り除き、人気取引アプリのロビンフッド(Robinhood)と同じくらい簡単だと感じさせることだ」。
そして「それが、真にファネルを開き、多くの人を呼び込むことができるようになるときだ」と続けた。
スターン氏も同意見。ミームコイン自体はイノベーションではないが、他のどのプラットフォームもできなかったことがソラナ上で実現できたという事実は、開発者が最高レベルで取り組んでいるサインと同氏は述べた。人気のミームコイン発行プラットフォームpump.funはシンプルに技術的ブレイクスルーを活用している。
「イーサリアムはオープンソースの視点に立ち、きわめて放任主義的なものになっているが、ビジネス開発の観点ではソラナ財団(Solana Foundation)の方が良い仕事をしていると思う」とスターン氏は述べた。
「船を導くようなものだが、完全にコントロールするのではなく、無数の花を咲かせるような方法だ」
|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:ニューヨークにあるソラナのオフィス(Danny Nelson)
|原文:‘It’s So Early’: How Solana Is Competing With Ethereum for Institutional Interest