
- アポロのトークン化されたクレジットファンドは、オンチェーンでの企業向け直接融資や資産担保融資、パフォーミング・クレジット、ディスロケーテッド・クレジット、ストラクチャード・ クレジットへのアクセスを投資家に提供する。
- このファンドは、ソラナとインクでデビューするだけでなく、イーサリアムやアプトス、アバランチ、ポリゴンでも利用可能になる。
運用資産が7300億ドル(113兆8800億円、1ドル156円換算)を超える投資会社アポロ(Apollo)は、セキュリティ・トークンのスペシャリストであるセキュリタイズ(Securitize)の協力のもと、新しいトークン化されたプライベートクレジットファンドを投資家に提供する。
フィーダーファンド(ファンドに投資するためのファンド)の「Apollo Diversified Credit Securitize Fund(ACRED)」を通じてアクセスできるこのトークンは、アポロの認定投資家を対象とした初のパブリック・オンチェーン・オファリングとなる。またセキュリタイズにとっても、ソラナ(Solana)ブロックチェーンや、暗号資産取引所クラーケン(Kraken)が構築したレイヤー2ネットワークのインク(Ink)との初の統合となる。このトークン化ファンドは、イーサリアム(Ethereum)やアプトス(Aptos)、アバランチ(Avalanche)、ポリゴン(Polygon)でも展開される。
運用資産が12億ドル(約1872億円)超える「Apollo Diversified Credit Fund」は、企業の直接融資や資産担保金融のほか、パフォーミング・クレジット、ディスロケーテッド・クレジット、ストラクチャード・クレジットに投資しているとアポロは述べた。米国債の2024年のリターンは約4.5%だったのに対し、このファンドは11.7%だった。
ブロックチェーン市場に適したファンド構造
アポロの暗号資産(仮想通貨)やデータ、AI戦略を率いるパートナー、クリスティン・モイ(Christine Moy)氏は、このファンドが選ばれたのは、シームレスで効率的なブロックチェーンベースの市場に適した日次サブスクリプションと日次純資産価値(NAV)の構造を備えているからだと述べた。
モイ氏はインタビューで「分散されたポートフォリオをオンチェーンで構築しようとする人々にとって、このファンドは、ステーブルコイン、トークン化国債、マネーマーケットファンドをより高い利回りで補完する役割を果たす」と述べたうえで、「しかし、よりボラティリティの高い暗号資産ネイティブ利回り商品に対する分散投資にもなる。したがって、オンチェーンの分散されたポートフォリオに必要なさまざまな資産の全体像を完成させるのに役立つ」と語った。
RWAのトークン化
伝統的金融企業の間では、いわゆる現実資産(RWA)のトークン化が急速に進められており、なかでもブロックチェーンベースの米国債は、最大かつ最も流動性の高い市場として台頭している。セキュリタイズによると、2023年時点で世界のプライベートクレジット資産の運用残高は約2兆1000億ドル(約327兆6000億円)に達し、10年前の4倍に増加した。
プライベートクレジットトークンはあまり一般的ではないが、オンチェーン資産の新たな領域を切り開くものだとセキュリタイズのCEO、カルロス・ドミンゴ(Carlos Domingo)氏は述べた。
ドミンゴ氏はインタビューで「プライベートクレジットは、最近爆発的に成長している分野だ。我々はこの分野のトークン化のパイオニアの1つであり、すでにハミルトン・レーン(Hamilton Lane)と共同でトップクラスのプライベートクレジットファンドトークンをローンチした」としたうえで、「利回りの高いプライベートクレジットは、特に金利が下がるシナリオでは、国債を補完するのに適している」と語った。
アポロとセキュリタイズのパートナーシップ
セキュリタイズはブラックロック(BlackRock)のトークン化パートナーであり、マネーマーケットファンドトークン「BUIDL」のデジタル・トランスファー・エージェントでもある。アポロの場合、セキュリタイズは、異なるブロックチェーンネットワークの相互通信を可能にする開発者プラットフォームであるワームホール(Wormhole)とのパートナーシップを利用し、最初はマルチチェーンアプローチを提供する。
アポロは、シンガポール金融管理局(MAS)が主導する共同の取り組み「プロジェクト・ガーディアン(Project Guardian)」の後援のもとで実施された、JPモルガン(JPMorgan)が関与する昨年の概念実証など、トークン化資産のいくつかのテストに参加した。モイ氏はかつてJPモルガンのブロックチェーンに携わり、Intraday Repoのようなプロジェクトを主導していた長年のWeb3ストラテジストであり、分散型金融(DeFi)などの分野で活動することを見据えていた。
「アポロの製品をトークン化することは始まりに過ぎない」とモイ氏は述べ、「我々は暗号資産エコシステムの主要チームと協力し、最新の財務管理、投資ポートフォリオの自動リバランスの大規模な実施、スマートコントラクト主導の担保管理、そして将来的には代替資産の二次流動性の実現を設計できることに興奮している」と語った。
|翻訳・編集:廣瀬優香
|画像:Herzi Pinki/Wikimedia Commons
|原文:Apollo Unveils Tokenized Private Credit Fund as Blockchain Deepens TradFi Links