“日本のインターネットの父”村井純氏が講演、「数多くのインフラが皆さんを待っている」【GFTNフォーラム・ジャパン2025】

3月3日にスタートした「GFTNフォーラム・ジャパン2025」3日目の5日、“日本のインターネットの父”と呼ばれる村井純氏が「Corridors for Digital Civilization」と題して講演を行った。

村井氏はまず、インターネットの普及状況、大学や研究機関、医療機関を結ぶ取り組みなどを紹介。医療については「将来的には国境を超えることになる」と述べた。

Googleが進めている太平洋をまたぐ光ファイバー網計画にも触れ、日本はネットワークの北端に位置し、「Googleは南太平洋のより広範な地域、つまり地球の南側を結びつけようとしている。南側をつなげば、(現状、インターネットアクセスから取り残されている)人口の大部分をカバーできる。可能性は大きい」と述べた。

さらにインターネットの功績について、かつて、コンピューターを自由に使って研究するために米国に渡った研究者を例にあげ、今では「当時、彼がアメリカで手に入れたものをはるかに上回るコンピューティングパワーを誰でも、子どもたちでも手にいれることができる」と指摘。クラウドコンピューティングや量子コンピューティングなども「インターネットが達成してきたこと」であり、今後は、そうした能力、功績の「シェアメカニズムが非常に重要になる」と続けた。

そして、インターネットが成功した理由について、「標準規格と標準技術がどこでも利用できることで、これがインターネットの非中央集権的なガバナンスにつながっている。自律分散型システムと呼ぶべきものであり、真にグローバルな存在だ」と、標準規格の重要性を強調した。

標準規格の重要性

ブロックチェーン技術に特に言及したわけではないが、Web3/ブロックチェーンが次世代テクノロジーのひとつとして期待され、注目を集める理由のひとつは、インターネットと同様に標準規格が確立されていることにあるだろう。そもそも、ブロックチェーンはインタネット上に構築されていることは言うまでもない。

村井教授の講演は、インターネットやデジタル技術に関するさまざまなテーマに広がるものだった。例えば、デジタル技術がますます進展すると「電気が本当に重要になる」と指摘。電力会社の大規模な発電所をコアとしながらも、各家庭のソーラーパネルやさらにはフィットネスジムでユーザーが漕ぐバイクのエネルギーを発電ソースとするようなマイクロマネジメントをベースにした発電の可能性に触れた。

同様に、我々が手にしているスマートフォンは「1台1台はインターネットに接続されているが、連携していない」と述べ、かつてのスーパーコンピューターに匹敵する能力を持つスマートフォンが連携されれば、未来の強力なインフラになり得ると語った。GPSをさらに正確にした位置情報システムもスマートフォンをインフラとして連携し、位置データ、タイミング(時間)データを活用すれば可能になると述べた。

AIについても、今は大規模言語モデル(LLM)を必要としているが「スマートフォンにAIチップが搭載されるようになれば、推論はローカル環境で実行でき、パーソナルAIのようなものが実現される」と語った。

ロボティクスの重要性にも触れ、「今、インターネット接続は人間のため」のものだが、ロボットも含まれるようになり、さらには「空から海、森、農場など、あらゆる場所をつなぐもの」になり、「月と地球を結ぶ計画」もあると説明した。

広範なテーマにわたる講演だったが、最後に村井氏は「宇宙技術やクラウド技術を含め、多くのインフラが皆さんを待っている」と締めくくった。

|文・撮影:増田隆幸