テザー社とサークル社、米のステーブルコイン規制整備で優位を狙う
  • テザー(Tether)社とサークル(Circle)社は、ステーブルコインの2つの競合するビジョンを象徴している。テザー社は暗号資産(仮想通貨)の分散化の理念を支持し、サークル社は規制を通じた受け入れを目指している。
  • 米国の議員たちはステーブルコインの規制を目的とした複数の法案を提出しており、可決されればテザー社は準備金の調整を余儀なくされる可能性がある。
  • サークル社の共同創業者兼CEOであるジェレミー・アレール(Jeremy Allaire)氏は、デジタル通貨は米国にとっての戦略的優位と見ており、USDコイン(USDC)を 「米国初のデジタルドル 」と呼んでいる。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙のアンガス・バーウィック(Angus Berwick)記者の記事によれば、長年務めたテザー社の最高財務責任者(CFO)の役職を退任し、現在は会長を務めるジャンカルロ・デヴァシーニ(Giancarlo Devasini)氏は、スイスの控えめな町ルガーノで目立たない暮らしをしている。

一方、サークルのジェレミー・アレール氏は、政治家やウォール街の重役と付き合うことに抵抗がない、とバーウィック氏は続ける。

この対立は、ビジネスと同じくらいイデオロギーに関するものだ、とバーウィック氏は指摘する。テザー社は暗号資産の自由奔放な精神を受け入れているが、サークル社は規制を通じてメインストリームに受け入れられようとしている。「テザー社がいる限り、サークル社は勝てない」とデヴァシーニ氏は数カ月前に語ったと伝えられている。

この戦いの結果は、ステーブルコインの将来を形作るだろう。規制当局がテザー社の手がけるUSDTを脇に追いやることに成功すれば、サークル社のUSDCは市場シェアを獲得し、ステーブルコインを伝統的金融システムにさらに引き入れることができるだろう。

テザー社は過去に、準備資産のコマーシャルペーパーをめぐる懸念を乗り越えるレジリエンスを見せており、今後も生き残れば、中央集権的な影響力の外で稼働する暗号資産の力が強化されることになる。いずれにせよ、何兆ドルもの価値がある業界で覇権を争うこの戦いには、多くが賭かっている。

最新の状況は?

アメリカでは、上院のGENIUS法、下院のSTABLE法(共和党が提出)、そしてマキシン・ウォーターズ(Maxine Waters)下院議員とパトリック・マクヘンリー(Patrick McHenry)元下院議員が過去数年にわたり作成してきた法案の3つの異なる法案が、ステーブルコイン規制を目指して提出されている。

これらの法案はそれぞれ、ステーブルコイン発行者に一定の準備金と報告義務を課すもので、JPモルガンの分析によれば、これらの法案が法制化された場合、テザー社はこれらの法案に準拠するために準備金の調整が必要になる可能性があるという。

しかし、各法案はまだ立法作業の初期段階にあり、どの法案も下院、上院を通過し、大統領が署名するまでにどれだけの時間がかかるかは不明だ。

デジタル通貨は 「テクノロジースーパーパワードル 」

デジタル通貨は 「テクノロジースーパーパワードル 」であり、米国と中小企業にとって重大な意味を持つとして、アレール氏は3月4日のFoxの番組「Mornings with Maria」のインタビューで次のように語った。

「我々は中国と競争しており、どのような経済システムが勝つか、どのような通貨システムが勝つかを見極めようとしている。これは、世界中で米国の役割を拡大するテクノロジースーパーパワードルである」。

同時に、クレジットカード会社への手数料や海外への送金に費やされるコストをなくすことができるデジタル通貨のインパクトは、単に世界の経済大国になることよりもはるかに幅広い。

「家計や中小企業にお金を戻す確かな方法がある」と、アレール氏は語った。

アレール氏は、USDCが米国債、レポ、現金という形で米ドルに裏打ちされ、6年以上にわたって成長し続けていることから、USDCを「アメリカ初のデジタルドル」と呼んだ。

さらにアレール氏によれば、USDCは毎月1兆ドル以上の取引を含む何兆ドルもの取引を支えており、過去12カ月で100%の成長を遂げている。

|翻訳・編集:山口晶子
|画像:Shutterstock
|原文:Tether, Circle Vie for Upper Hand in Stablecoin Industry Regulatory Push