
3月3日から7日まで都内で開催された「GFTNフォーラム・ジャパン2025」内で3日、世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)CEOのリチャード・テン(Richard Teng)氏とN.Avenue/CoinDesk JAPAN 代表取締役 CEOの神本侑季が世界と日本のデジタル資産の現状と今後の展望をテーマに対談した。対談ではトランプ政権が市場に与える影響や今後5年間の成長予測などが語られた。
ビットコインETFと機関投資家の参入
テン氏は、2020年から2024年までの市場の不透明さを振り返り、アメリカでのチョークポイント2.0などを例に挙げ、バイデン前政権下では暗号資産に対して否定的な姿勢が示されていたと指摘。しかし、2024年1月にビットコインの現物ETF(上場投資信託)が承認されたことで、市場環境は一変。これを機に機関投資家の参入が加速し、暗号資産市場の成長が促進されたと述べた。
2024年以前は、多くの金融機関が暗号資産を信頼していなかったが、「ブラックロックのような大手資産運用会社の市場参入により、多くの懐疑論者を納得させることになった」と説明した。
トランプ政権と暗号資産市場の拡大
バイナンスのユーザー数は、2024年当初の1億7000万人から年末には2億4000万人と7000万人増加。2025年3月時点では、2億6200万人となり、成長は加速している。

テン氏は、「今後5年間の成長は、過去5年間を大きく上回る」と予測。金融機関だけでなく、従来の資産クラスを取引してきた投資家も暗号資産市場に参入しつつあると述べた。
また、トランプ大統領の再選にも言及し、「暗号資産市場に新たな追い風が吹いている」と指摘。暗号資産推進派が主要なポジションに配置され、規制の明確化が進められることで、アメリカ市場はより前向きな環境へとシフトしていると説明した。特に、強制的な規制ではなく、計画的で透明性のある整備が進むことで、市場の安定性が増し、より多くの機関投資家が参入することが期待されると話した。
日本市場とステーブルコインの可能性
日本市場については、暗号資産口座が1200万を突破するなど多くの投資家が参入していることに言及。法整備が進み安全な取引環境が整えば、さらに活性化するだろうと期待を寄せた。
また、ステーブルコインの可能性にも言及。USDCを発行するサークル(Circle)と提携し、日本市場への展開を目指していると話し、日本でのステーブルコインの普及が新しい国際決済の形を生み出す可能性を指摘した。

従来の金融機関を通じた国際送金には2日以上かかり、手数料も高額になることが多いとし、ステーブルコインを活用すれば送金コストが大幅に削減でき、即時決済が可能になると説明。特に銀行などの金融インフラが整っていない発展途上国では、ステーブルコインが金融システムへのアクセスの鍵となると強調した。多くの国で通貨の下落が続くなか、安定した価値を持つデジタル資産の重要性が増していると説明した。
規制の調和と今後5年間の成長
テン氏は、まとめとして今後5年間で暗号資産に関する規制の明確化が進むと予想。明確なルールが存在しない国が依然として多いため、規制を正式に制定する必要があると説明した。加えて、証券やデジタル資産などが各国で異なる法的枠組みによって管理されている現状に触れ、規制の調和が欠如していると述べた。

暗号資産の未来については、今まさに個人投資家への普及が進んでいる段階と述べ、人々が暗号資産の活用方法や重要性、ユースケースを理解し始めたと説明。規制当局の理解が深まれば、「今後5年間でさらなる成長が見込まれる」と述べ、暗号資産の未来に対して非常に前向きな展望を持っていると締めくくった。
|文・写真:橋本祐樹
※ユーザー数の記載に誤りがありました。修正して、更新しました:3月12日13時33分