NFT×盆栽が生む新たな価値、ソニーグループの「デジタルフィジカルアート」プロジェクトが始動

ソニーグループ傘下で、NFTマーケットプレイスを運営するSNFTは3月から、実物アートとNFTを紐づけるプロジェクト「SNFTデジタルフィジカルアート」を開始した。第一弾では盆栽師・平尾成志氏の作品「曲」と「線」をNFT化し、販売する。

〈盆栽のライブパフォーマンスを行った平尾氏〉

3月7日には都内で記念イベントが開かれ、平尾氏が剪定や造形を披露する盆栽アートパフォーマンス「“爻:MAJIWARI”」を行ったほか、ソニー銀行DX事業企画部Web3プロモーション課長、SNFTで本プロジェクトマネージャーも務める赤石智哉氏らが、盆栽とNFTの親和性やプロジェクトの展望について議論した。

NFTで保管・流通の課題を解消

トークセッションには平尾氏と赤石氏に加え、盆栽を世界的なアートとして発信する「BONSAI NFT CLUB」のまじすけ氏が登壇。アート作品の保管や売買の課題をNFTでどう解決できるかについて意見を交わした。

赤石氏は、アートの保管や売買には手間がかかるという課題を指摘。その解決策として、NFTと実物アートの所有権・保管委託権を紐づけることで、管理負担を軽減し、メンテナンスを専門家に委ねられる仕組みを導入したと説明した。また、「NFTはデジタルとリアルをつなぎ、流動性の低いリアルアセットに新たな価値を生み出せる」と述べ、世界的に人気のある盆栽のような伝統的アートとの親和性を強調した。

〈NFT活用により、保管と流動性の課題を解消できると話す赤石氏〉

時間とともに変化する盆栽とNFTの親和性

平尾氏は製作した盆栽アート「曲」と「線」について「自然が生み出す曲線と、人間が作る直線」をコンセプトにしたと説明。人と自然との関わりや、人間同士の交流によって生まれる価値を表現しようとしたと語った。

まじすけ氏は、「盆栽は10年、100年と成長し続けるアート」とし、ブロックチェーン技術によって所有者の変遷や評価の履歴を記録できる点を指摘。NFTが盆栽の長期的な変化を可視化し、その価値をより広く伝えられる可能性について言及した。

「曲」と「線」の2点は、マーケットプレイス上にて税込み500万円で3月31日から販売が開始される予定。所有者は、盆栽園「成勝園」で専門家による管理を受けることができ、所有権の二次流通は大手NFT取引サイト「OpenSea(オープンシー)」上で行うことができるという。

|文・写真:橋本祐樹