災害支援の迅速化にむけブロックチェーン導入を勧告──米FEMA諮問機関

FEMA(米連邦緊急事態管理庁)は災害支援における支払いの迅速化のためにブロックチェーン導入を検討している。

この提案は11月18日(現地時間)に公表されたFEMAの諮問委員会NAC(National Advisory Council)のレポートの草案で明らかになった。

NACの勧告は災害支援にブロックチェーンの適用を検討してきた連邦政府のこれまでの取り組みを踏まえている。2018年12月、国防総省国防兵站局(Defence Logistics Agency)はプエルトルコに壊滅的な被害をもたらしたハリケーン・マリア後の支援活動にブロックチェーンを活用する方法を議論した。

NACの草案は、FEMA管理官ピーター・ゲイナー(Peter Gaynor)氏に、まず土地登記のためのブロックチェーン・パイロット・プログラムをローンチするよう求めた。NACは、ブロックチェーンは自然災害が発生した際にコミュニティーが頼る政府の支払いを簡素化し、迅速化できると述べた。

「プエルトリコのハリケーン・マリア、あるいはテキサス州のハリケーン・ハービーなど多くの自然災害において、被害を受けたコミュニティーは保険証書、土地登記書、身分証明書など、申請に必要な情報を失うことがある」と草案は記した。

「こうした中、ブロックチェーン・ベースの土地登記を試験的に導入することで、FEMAは部門を超えた取り組みを促進し、テクノロジーが実現するユースケースを発展させ、災害対応と保険金支払いのスピードを向上させることができる。正確さを犠牲にしたり、不正行為のリスクを増大させることはない」

パイロット・ブログラムだけでなく、NACはFEMAに保険会社と提携してサービスを立ち上げ、災害によって被害を受けた人への「災害配当」あるいは「被害」への保険金支払いを迅速に行えるようにすることを求めた。

災害対応の分散化

草案の中でNACは、FEMAは複数の場所でも記録を保持できるブロックチェーンのメリットを生かし、災害支援のためのブロックチェーン・ソリューションを検討すべきと述べた。

ブロックチェーン・ソリューションは、多数のサーバーにわたって重要な情報を保存することで、1回の洪水が引き起こす可能性がある単一障害点(single point-of-failure)への脅威を効率的に無力化できる。つまり、もしすべてのデータが1つの物理的な場所に保管されていた場合、大規模な嵐からどのようなダメージを受ける可能性があるかということだ。

「ブロックチェーンの主なメリットは、分散化された構造にあり、災害時の回復力と復興への取り組みを向上させる。なぜなら、重要な情報は現場から離れた場所にある、信頼性の高い、安全なプラットフォームに保管されているからだ」

NACは以前、ブロックチェーン技術に関する勧告を行ったが、災害時の支払いのためのものではなかった。2018年11月の会議後、NACはFEMAに対し、その「非効率」で、的はずれな住宅支援プログラムを改善するためにブロックチェーン・パイロット・ブログラムを立ち上げるよう勧告した

「さらに悪いことに、この非効率性は災害を耐え抜いた人々に途方もない負担をかける。彼らは災害の影響を受けながらも、複数の支援策からの書類提出要求、災害によって失われた書類の問題、同じような書類の提出要求などに対処している」とNAC委員長のニム・キッド(Nim Kidd)氏は書簡で述べた。

NACの提案を現場に適用できるのは、まだ先の話。

管理官のゲイナー氏がNACの最終勧告を受け入れ、FEMAが「テクノロジー企業、学術組織など主要な利害関係者を交えてパイロット・プロジェクトを招集し、詳細を検討し、モニターすること」が不可欠。さらに参加を望むであろう州や地域のリーダーを採用する必要がある。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:増田隆幸
写真:Source: Jocelyn Augustino/FEMA
原文:FEMA Advisory Board Proposes Blockchain to Speed ‘Disaster Dividend’ Payouts