片山議員、塩崎議員、JPモルガン・DLT市場責任者、小田氏が登壇──「Digital Assets Night: JCBA x CoinDesk JAPAN」国内外から100名超が参加【JFW 2025】

3月6日、Japan Fintech Week(JFW)のサイドイベントとして、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)とCoinDesk JAPANは「Digital Assets Night : JCBA x CoinDesk JAPAN」を共催した(後援:GFTN Japan)。主にJFWに向けて来日した海外の関係者を対象としたイベントで、自民党金融調査会長である片山さつき参議院議員のスピーチや自民党web3ワーキンググループ(web3WG)を主導する塩崎彰久衆議院議員が登壇したスペシャルセッションなどを含め、プログラムはすべて英語で行われ、国内のWeb3、フィンテック関係者を含めて100名超が会場の東京・九段会館テラスに集まった(以下、発言内容は、編集部で翻訳・編集している)。

イベントは、JCBA会長の廣末紀之氏(ビットバンク代表取締役)の開会挨拶からスタート。廣末氏は来場の参加者に謝意を伝えるとともに、「この会を新たなパートナーとの連携の機会にしてほしい」と述べ、JCBAは来年度10周年を迎え、さまざまなイベントを計画しており、今後さらに内外の関係者と連携していきたいと述べた。

〈JCBA会長の廣末紀之氏〉

続いて、JFW開催の中心人物のひとり、金融庁の牛田遼介氏(総合政策局フィンテック参事官室チーフフィンテックオフィサー)が壇上に立ち、「日本は積極的にWeb3政策を推進し、暗号資産、ステーブルコイン、トークナイゼーションに関する規制枠組みを整備してきた。すでにイノベーションが生まれる環境は整っていると考えている」「今後は、暗号資産を投資にふさわしい資産としてどのように位置づけるかについて議論を進め、このエコシステムのさらなる発展を支援したい」と述べた。

そして「金融庁の最大の目的は、日本でWeb3に取り組む人たちと、グローバルなWeb3市場をつなぎ、意見交換を活発化させることにある」とJFW、そして今回のイベントの意義を強調した。

〈金融庁の牛田遼介氏〉

規制は米国と足並みを揃えることが重要

2人の挨拶に続いて、片山氏が1月末の訪米と米政権関係者との意見交換を踏まえたWeb3、暗号資産の現状についてスピーチを行った。

片山氏は冒頭、「トランプ大統領就任以降の米国の動向を注視」しており、「暗号資産の規制については、日米で足並みを揃えることが重要だと考えている」と述べた。米国では暗号資産の規制整備が急速に進みつつあるが、日本においても「金融庁との調整を踏まえ、政府の中期的な政策枠組みの中に暗号資産に関する規制を含める予定」であり、それに先立ち「5月半ばには自民党金融調査会が基本方針を発表する」と明らかにした。

日本の現状については、2024年末時点で日本の口座数は約1200万、預託金は4.5兆円超になったとし、「トランプ政権の政策からインフレが進展すると見られ、インフレヘッジとしてビットコインETFのような資産への投資シフトが起きている」と整理。だが一方で「金融庁の金融サービス利用者相談室には、暗号資産投資に関する相談が毎月平均300件以上寄せられている」と述べ、「私の動画が詐欺アカウントに使われている事例も発見した」と続けた。

規制については、暗号資産は資金決済法で、セキュリティ・トークンと暗号資産デリバティブは金融商品取引法で規制され、後者には開示義務が課されている一方で、プロ投資家向けには規制が緩和されており、「暗号資産についても同様の扱いとすることを検討している。また不正取引やマネーロンダリングの温床となっていることへの反省も重要な課題」と語り、今国会に資金決済法の改正案が提出されることに触れた。

〈自民党金融調査会長・片山さつき参議院議員〉

税制については、自民党は2024年末に発表した2025年度税制改正大綱で「一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ」と記したことに触れ、投資家保護に必要な法整備を行ったうえで、「最大55%の総合課税から20%の分離課税への大幅な引き下げを推進したい」と述べた。

そのためには、暗号資産を現行の資金決済法ではなく、「金融商品取引法の下に位置づけることが最もわかりやすいアプローチではあるもの、有価証券と同様の扱うことは難しいことも想定され、それぞれの特性の違いを明確に認識することが重要」とした。

暗号資産市場のさらなる発展には、伝統的金融機関の参加が必要になるだろうと述べ、国際的な規制の動向にも注意を払っており、今日のイベントでの議論に期待していると約15分あまりのスピーチを結んだ。

「これは特別なセッション」

スペシャルセッションには、塩崎議員のほか、小田玄紀氏(JCBA理事、日本暗号資産等取引業協会会長、SBI HD常務執行役員 社長特命事項担当)、JPモルガンのスコット・ルーカス(Scott Lucas)氏(Managing Director、Head of Markets DLT)の3名が登壇。CoinDesk JAPAN/N.Avenue 代表取締役社長の神本侑季がモデレーターを務めた。

冒頭の自己紹介で塩崎議員は「今日ここに集まった皆さんにお祝いを言いたい。なぜなら、これは特別なセッションだからだ。ちょうど1時間前、自民党web3WGは暗号資産に対するまったく新しい規制の提言を発表した。それを皆さんと共有できることをうれしく思う」と述べた。

マーケットの実用的な部分に取り組むJPモルガン

神本から、JPモルガンの取り組みについて説明を求められたルーカス氏は「当社は暗号資産テクノロジーをさまざまな側面から捉えている。我々の取り組みはおそらく、それほどエキサイティングなものではなく、より従来的なものだが、長期的にはマーケットにおける実用的な部分、つまり決済ビジネスや取引の拡張を目指す取り組みが重要になる」と述べた。

〈JPモルガンのスコット・ルーカス(Scott Lucas)氏〉

また今、興味を持っていることとして「規制された市場活動の一部がパブリック・ブロックチェーンに移行する可能性」に触れた。

「当社はこの分野で、年間300億ドル以上を生み出す大規模なビジネスを展開している。当然ながら、これを手放すつもりはない。市場が変化し、移行していく中で、引き続き、クライアントが求める領域でサービスを提供し続けなければならない」

web3WGの新提言を塩崎議員が自ら解説

続いて、海外からの参加者に向けて、日本国内のWeb3、暗号資産の状況を塩崎議員が概説し、「ルーカス氏が一貫性の重要さを強調したことに同意する。新しいテクノロジーをベースにした変動の大きな市場において、一貫性は非常に重要だ。そしてもうひとつ、重要なことは規制の明確さだ。日本は今、暗号資産の取り扱いについて、世界で最も優れた一貫性と明確さを備えた規制フレームワークを持っている」と述べた。

〈自民党web3WGを主導する塩崎彰久衆議院議員〉

そして、イベントの1時間前に公表したばかりの提言「暗号資産を新たなアセットクラスに 〜暗号資産に関する制度改正案の概要〜」(案)について、その内容を説明した。

関連記事:自民党web3WGの新提言、公の場で初めて説明──「世界でも最先端の規制モデルに」塩崎議員

提言の内容は別記事で紹介済み。一言で言えば、暗号資産の規制を現在の資金決済法から金融商品取引法に移行しようとするものだ。

日本をビットコインのウルトラ・スーパーパワーに

説明を受けて、小田氏は「2017年当時、日本は暗号資産における主要市場として、50%以上を占めていた。しかし今ではわずか1%。この状況を変えなければならない。私たちは今、金融庁と話し合いを進めており、この状況を変えようとしている」と続けた。

〈JCBA理事・小田玄紀氏〉

さらに「政府の役割は非常に重要だ。米国ではホワイトハウスで暗号資産サミットが開催される。トランプ大統領は『米国をビットコインのスーパーパワーにする』と言っているが、日本の政府には『日本をビットコインのウルトラ・スーパーパワーにする』と言ってほしい」と述べ、会場を沸かせた。

セッションではさらに、3月4日付けでSBI VCトレードが日本国内でステーブルコインを取り扱うための電子決済手段等取扱業者の国内初の認可を受けたことにも触れられ、国内でのステーブルコインのユースケースが議論された。

セッションの最後には3人がそれぞれイベントでの議論を振り返り、参加者に向けてコメントを述べた。

塩崎氏は「今日発表したものは、まだ提言にすぎない。固めるべき部分がたくさんある。3月31日まで意見や提案を求めているので、ぜひお寄せいただきたい。世界でも最先端の規制モデルのひとつとなるよう努めたい」と述べた。

小田氏は、モデレーターの神本からSBIグループの今後の事業展開についてコメントを求められ、「私たちは、暗号資産市場と伝統的な金融市場を結びつけることを目指している。最終的には、暗号資産市場を金融市場の中で最も重要な市場のひとつにすることを目標としている」と述べた。

今回のイベントやJapan Fintech Weekへの参加を通じて得たことや、日本市場への期待についてスコット氏は「この業界はグローバルに展開している市場であることを改めて実感した。かつてはプラットフォームや企業の優劣を比較するような議論が多かったが、今はパートナーシップに重点を置いた議論が増えている。既存の市場を破壊するのではなく、パートナーシップがより重要になってくるだろう」と語った。

|文:増田隆幸
|撮影:CoinDesk JAPAN編集部