
自民党ブロックチェーン推進議員連盟の第27回会合が3月10日に開催された。議題は「ブロックチェーンの活用事例(公共、防災、ReFi)」、以下の3つのテーマに取り組む事業者が出席し、取り組みの説明とさらなる事業推進に向けた提言をそれぞれ行った。
- Web3領域におけるDePINトレンド概要
Digital Entertainment Asset Pte. Ltd. Founder & Co-CEO 山田耕三氏 - IP Data Castとブロックチェーンを活用した災害現場での信頼性検証システムのご紹介
関西テレビソフトウェア(株) チーフエキスパート 横島裕明氏 - 気候変動問題へのブロックチェーン活用の動向
(株)PBADAO 代表取締役 堀井紳吾氏
JE FOREST(株) 代表取締役 橋村純氏
会合の冒頭には、同議員連盟会長の木原誠二衆議院議員がこの日議論する3つのテーマの重要性に触れつつ、「ブロックチェーンは金融に焦点を当てるイメージがあるが、それ以外の分野でのさまざまな取り組みについて認識を深めたい」と述べた。司会・進行は、川崎ひでと衆議院議員が担当した。
電力インフラだけでなく、他のインフラにも
Digital Entertainment Asset(DEA)の山田氏は、DePIN(分散型物理インフラネットワーク)の概要や利点、事例、市場の可能性を説明した後、同社の参加型社会貢献ゲーム「PicTrée(ピクトレ)」を活用した事例(ゲームユーザーが撮影した写真で電柱の異常を発見する)を紹介した。
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山田氏は「電力インフラだけでなく、地図・道路・橋脚・水道など、他のインフラへ発展」させることを目指していると述べ、最後に「上場企業が積極的にDePINを活用できるよう、監査法人の問題を解決してほしい」と述べた。
災害時でも信頼性の高い情報を配信可能
関西テレビソフトウェアの横島氏は、地上デジタル放送波をIPパケットを重畳(ちょうじょう:重ね合わせること)させて送信する「IPDC(IP DataCast)」を紹介。既存インフラがそのまま利用でき、受信機が増加しても送信にかかるコストは一定などの特徴があり、ブロックチェーンと組み合わせることで、インターネットが使えなくなったような災害時でも信頼性の高い情報を配信することができると述べた。
防災への活用については、「ガス代(取引手数料)を経費として一括計上できるようにすること」「ブロックチェーン上の情報に法的信頼性を持たせること」などが不可欠になると提言した。
「環境の再生」×「ブロックチェーン」×「分散型金融」
JE FORESTの橋村氏とPBADAOの堀井氏は、再生金融とも呼ばれるReFiとその取り組みを紹介。「環境の再生」×「ブロックチェーン」×「分散型金融」がReFiであり、「Web3の考え方・テクノロジーを活用しながら、特定の環境課題の解決に貢献する行動に経済性を両立させることで、持続可能な活動を目指すアプローチ」と説明した。
具体的な取り組みとして、政府が運用するカーボンクレジット「Jクレジット」のトークン化取引プラットフォーム「KlimaDAO JAPAN MARKET」の実証実験、歩くことで自然環境維持などの取り組みへの資金の流れを作り出すアプリをあげ、Jクレジットのトークン化については、利用促進に向けた政府主導のAPI整備、制度改正の必要性を述べた。またReFi分野へのスタートアップ参入には、トークン活用の面などでまだハードルが残っていることを指摘した。
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事業者からのプレゼンの後には、木原議員、川崎議員からマネタイズや競争優位性、さらには事業の横展開などについての質問があり、また事業者から提言で挙げられた事項について、金融庁やデジタル庁の担当者が現時点での状況について回答した。
特に会計監査の問題は、上場企業がWeb3に取り組むうえで大きな課題となっているだけに、官民連携した取り組みが重要になる。
同議員連盟の事務局長でいつもは司会を担当している神田潤一衆議院議員(今回は別の会合が重なり、途中参加)は「規制の見直しには事例の積み重ねが大事になる。皆さんにはこうした取り組みをどんどん広げって行ってほしい」「我々も新しく当選した議員、あるいはこれまでブロックチェーンに触れてこなかった議員にも広く呼びかけていきたい」と述べた。

なお、同議員連盟の会合での議論は従来、マスコミには非公開だったが、今回より参加が認められた。
|文・撮影:増田隆幸