ベンチャーキャピタルは常に暗号資産よりAIを好んでいるが、その比較に意味はあるのか?
  • 2025年第1四半期、アメリカの暗号資産関連のベンチャー投資は約8億6100万ドルに達したが、人工知能(AI)関連の投資額、約200億ドルに大きく及ばなかった。
  • 注目すべきAI関連の取引には、Databricksの153億ドルの資金調達ラウンドやAnthropicの20億ドルの資金調達などがあり、暗号資産関連ではアブダビのMGXによるバイナンスへの20億ドルの投資が最大規模であった。
  • 過去のデータによると、ベンチャーキャピタルによる資金調達では暗号資産よりもAIが常に好まれており、AIへの資金調達額は2011年の6億7000万ドルから2020年には360億ドルに増加している。

Pitchbookが提供するデータによると、2025年の最初の3カ月間におけるアメリカの暗号資産(仮想通貨)ベンチャーへの投資額は約8億6100万ドル(約1291億5000万円、1ドル=150円換算)だったが、人工知能(AI)の約200億ドル(約3兆円)という額には遠く及ばなかった。このデータは、投資家が引き続きAIに重点を移していることを示している。

データによると、1月から3月にかけて、投資家はアメリカでAI関連の795件の取引を成立させ、Databricksの153億ドル(約2兆2950億円)の資金調達ラウンドやAnthropicの20億ドル(約3000億円)の資金調達といった大型案件が注目を集めた。

これに対し、暗号資産関連では、アブダビのMGXがバイナンス(Binance)に20億ドル(約3000億円)を投資した案件が最大となった。バイナンスへの機関投資家による投資は初となる。その他の注目すべき案件としては、決済インフラ企業のMeshが8200万ドル(約123億円)を調達したほか、ETF(上場投資信託)発行元のビットワイズ(Bitwise)が7000万ドル(約105億円)を調達、暗号資産銀行のシグナム(Sygnum)が5800万ドル(約87億円)を調達した。

Pitchbookの過去の報告によると、2024年の世界のベンチャーキャピタル(VC)投資の3分の1にあたる1315億ドル(約19兆7250億円)がAIスタートアップに投資されており、4318件のVC取引のうち、新規スタートアップの4分の1近くがAI企業だった。これに対し、暗号資産関連はわずか706件の取引で49億ドル(約7350億円)だった。

分析:AIが暗号資産のベンチャー投資を奪った?

AI分野のVCによる大型資金調達ラウンドのほか、OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)氏が兆単位の資金を求めているといったセンセーショナルなニュース、トランスフォーマーモデルのおかげで技術的な新機軸から一般名詞へと成長したAIなど、AIが暗号資産を追い越したかのように思える出来事が相次いでいる。

歴史的に見ると、VCは概して暗号資産よりもAIを好んできたことがすべてのデータで示されている。AIと機械学習は一貫して資金調達に成功しており、その規模は指数関数的に拡大した。Statistaのデータによると、2011年の6億7000万ドル(約1005億円)から2020年には360億ドル(約5兆4000億円)に成長している。

AIの資金調達額を暗号資産が上回ったのは1年だけだが、これには注意が必要だ。ABIリサーチ(ABI Research)が2021年のAI投資の推定額を223億ドル(約3兆3450億円)と見積もっているように、AIの範囲が狭い場合、暗号資産の強気なサイクルの間に一時的にAIの資金調達額を上回ったが、2024年にはAIの資金調達額が再び1000億ドル(約15兆円)を超えたことが示唆される。

ただし、これらのすべてはエアドロップのような暗号資産特有の特異性を無視していることに留意すべきだ。エアドロップは、ユーザーの手元に新たな資本を投入し、その結果、トークン価格が上昇し、プロジェクトの資金規模が膨らむ。

ドラゴンフライ(Dragonfly)の最近の報告書によると、2020年から2024年の間に、11の最大規模のエアドロップで70億ドル(約1兆500億円)が生成されたことが分かっている。これはAIと暗号資産のギャップを埋めるものではないが、従来のベンチャーキャピタル以外にもドルを手に入れる方法があることを示している。

|翻訳:CoinDesk JAPAN
|編集:井上俊彦
|画像:Shutterstock
|原文:AI’s Lead Over Crypto for VC Dollars Increased in Q1’25, But Does This Race Really Matter?