エルサルバドルの暗号資産規制当局トップが米SECと会談──「非常に新鮮だった」
  • エルサルバドルはアメリカとの国境を越えた暗号資産規制サンドボックスの構築を目指している。
  • エルサルバドルのCNADは今週初めにSECと会談した。
  • CNADのフアン・カルロス・レイエス委員長はCoinDeskに対し、対話は建設的だったと述べた。

中米エルサルバドルのデジタル資産規制を担当する国家デジタル活動委員会(CNAD)は、米証券取引委員会(SEC)との国境を越えた規制サンドボックスの構築を目指している。

CNADのフアン・カルロス・レイエス(Juan Carlos Reyes)委員長はCoinDeskとのインタビューで、「国際的な協力関係を築きたい」と述べた。レイエス委員長は、「我々の最大のメッセージはデジタル資産には地理的障壁がないということだ。規制当局との連携にも国際的な障壁があってはならない」と述べた。

エルサルバドルは2021年にナジブ・ブケレ(Nayib Bukele)大統領がビットコイン(BTC)を法定通貨とした当時、強力な金融機関も既存の開発者エコシステムすらもなかったという点で独特な状況にあった。そのため、CNADは暗号資産(仮想通貨)に特化した規制枠組みを導入する際、白紙の状態から始めることができた。

レイエス氏がCNAD委員長に就任してから約2年後、エルサルバドルの先進的な規制枠組みは、テザー(Tether)やビットフィネックス(Bitfinex)、バイナンス(Binance)といった大手暗号資産企業が同国に進出する動機となっている。

レイエス委員長によると、この構想は米証券取引委員会(SEC)がエルサルバドルを実際に進行中の現実世界のケーススタディとして活用し、デジタル資産に対する合理化された規制アプローチを評価すること、つまりSECのゲンスラー前委員長退任後の世界でSECが自国の規制枠組みを刷新する際にエルサルバドルの経験から学ぶことを目指しているという。

CNADが提案したパイロットプログラムには複数のシナリオが含まれている。1つはアメリカで認可を受けた従来型金融ブローカーがCNAD規制の下でデジタル資産ライセンスを取得するシナリオ、もう1つはCNADの認可を受けたトークン化企業が促進する2つの小規模トークン化商品の開発だ。各シナリオの上限は1万ドル(約140万円、1ドル140円換算)となっている。

こうした取り組みは、SECのヘスター・ピアース(Hester Peirce)委員が2月に示した目標の一部を後押しするものになる。同委員は、現在自身が率いるSEC暗号資産タスクフォースが今後暗号資産規制に対して全く異なるアプローチを取ると表明していた。

パーキン法律事務所(Perkin Law Office)のオーナーであり、CNADの諮問グループメンバーでもあるエリカ・パーキン(Erika Perkin)氏はCoinDeskに対し、「CNADはどのように支援できるかについて(ピアース氏の文書を)非常に批判的な目で検討した」と指摘。「我々はここにいる。SECが収集したいと考えるかもしれないデータがある。それはアメリカでは収集が困難だ(中略)我々はSECがまさに注目している問題に対処できる機敏な枠組みを構築しており、それをいかに最善の形で実施できるかについて支援し、情報を収集するためにここにいる」と述べた。

CNADは22日にSECの暗号資産タスクフォースと会合し、この取り組みについて議論した。レイエス委員長とパーキン氏によると、会合は建設的だったという。パーキン氏は、「彼らは良い質問をした」とし、「彼らは情報収集の段階にあり、積極的に関与し、議論に前向きだった」と述べた。

レイエス委員長はすでにアルゼンチンやパラグアイなどの国と規制協力協定を締結している。同委員長の見解では、SECはデジタル資産の規制ニーズを理解する上で先進的であるように見える一方、他の法域の規制当局は暗号資産規制を伝統的金融の観点から捉える傾向があるという。

レイエス委員長は、「SECの暗号資産タスクフォースを構成する人材の質は非常に素晴らしい。彼らは理解力があり、技術を理解している」とし、「この技術を規制するために何が必要かについて的確な議論を行うことができた(中略)とても新鮮だった」と述べた。

|翻訳・編集:林理南
|画像:レイエス委員長(CNAD)
|原文:El Salvador’s Top Crypto Regulator Meets With U.S. SEC: ‘It Was Very Refreshing’