50種のステーブルコインが年末までに登場か──テザー、サークルは激しい競争に直面:Fireblocks
  • 銀行や決済企業が規制の整備によって、ステーブルコインへの参入を計画している。
  • Fireblocksの決済部門シニア・バイスプレジデント、ラン・ゴルディ氏は、今年末までに最大50種のステーブルコインが登場すると予測している。

ステーブルコイン市場の競争は第3フェーズに入り、時価総額1位のステーブルコイン「USDT」を発行するテザーや同2位の「USDC」を発行するサークルなどは、EUの暗号資産市場規制(MiCA)や米議会で審議中の法案など、規制強化に直面するなか、業界でのポジションを固めていると暗号資産(仮想通貨)カストディサービスなどを手がけるFireblocks(ファイアブロックス)は述べた。

同社決済部門シニア・バイスプレジデント、ラン・ゴルディ(Ran Goldi)氏は、第3フェーズ=最新段階では、銀行、そして大手や中小の決済企業がステーブルコインを既存事業にインテグレートする最適な方法を検討していると指摘している。

巨大ビジネスに成長

ステーブルコインは、巨大ビジネスに成長している。USDTは大きなシェアを占め、時価総額は約1450億ドル(約20兆700億円、1ドル143円換算)、サークルのUSDCは600億ドル(約8600億円)を超え、同社はニューヨーク証券取引所への上場を検討している。スタンダードチャータード銀行は、ステーブルコイン市場は2028年末までに2兆ドルに達する可能性があるとレポートで述べている。

「MiCAの下で、銀行はステーブルコインを発行するようになるだろう」とゴルディ氏はParis Blockchain Weekでのインタビューで述べた。

「Robinhood(ロビンフッド)、Ripple(リップル)、Revolut(レボリュート)のようなフィンテック企業も参入している。今年末までに、50種以上のステーブルコインが登場するだろう」

ゴルディ氏は、業界はすでに2つの段階を経たと述べた。

第1段階は、USDCが米規制当局の監督下にある取引所Paxos(パクソス)と対立した時期。パクソスは暗号資産取引所Binance(バイナンス)と提携してBUSDを発行していたが、規制上の理由からBUSDの発行を中止せざるを得ず、サークルが勝利を収めました。ゴルディ氏は、パクソスが新たに設立したUSDGコンソーシアムが影響力を拡大しており、将来、大きな役割を果たす可能性があると付け加えた。

第2段階はサークルとテザーの戦いだ。

「USDCはUSDTを追い越そうとしていたが、シリコンバレー銀行の破綻などで少し躓いた。特に米国外のユーザーにとっては、利用が難しくなった。一方、USDTは飛躍的に成長した。USDTは米国以外で圧倒的なシェアを占めるドル連動型ステーブルコインとして存在し続けるだろう。サークルはきわめてうまく戦わなければならない。だが過去、うまく戦ってきたし、うまくやっている」

言うまでもないが、USDCはMiCAライセンスを取得しており、約4億5000万の人口を有する27のEU加盟国で利用可能だ。USDTはそうではない。

B2B(企業間決済)での利用

ステーブルコインは、ボラティリティの大きな暗号資産の間で資金を移動するために不可欠な手段として成長してきた。法定通貨の入出金チャネルが不足しているという業界のニーズを満たすものだった。そしてDeFi(分散型金融)の爆発的普及とともに、さらに多様化した。

さらに遡ると、暗号資産の初期段階では、決済に暗号資産を利用するために、決済サービスプロバイダー(PSP)が登場した。その後、最近Stripe(ストライプ)に買収されたBridge(ブリッジ)やZero Hash、Alfred Pay、ConduitのようなB2B(企業間取引)向けのPSPが第二の波として登場した。

「このようなPSP企業は、あまり聞きたことがないかもしれないが、実際には数十億ドルのステーブルコインを移動させ、企業間の支払いをサポートしているとゴルディ氏は述べた。2020年、Fireblocksの取引量の20%未満だったステーブルコインが、2024年は54%まで増加したと指摘した。

クロスボーダー決済の可能性

さらに典型的なユースケースとして、ブラジルの輸入業者がコンテナを輸入し、トルコやシンガポールの業者に支払いをする例をあげた。ブラジルレアルをステーブルコインに換金して、直接輸出業者に送金するか、または現地の通貨に換金して支払うとゴルディ氏は説明した。

一部の銀行はすでに、こうしたクロスボーダー決済におけるステーブルコインのユースケースを認識しており、ブラジルのBraza Bank、シンガポールのBTG BankやDBSなどは、ステーブルコイン対応口座を企業向けに提供している。他の銀行もユースケースを検討中だ。

「数十の銀行から問い合わせを受けている」とゴルディ氏は述べた。

銀行には複数の選択肢

「銀行は、オン/オフランプ(入出金手段)を構築するか、準備金を保有するか、あるいはステーブルコインの発行を検討しているかもしれない。銀行には、ステーブルコインから収益を得るための複数の選択肢がある。クレジット、オン/オフランプ、為替取引だ」

ゴルディ氏は、ほとんどの銀行が戦略計画を策定中で、おそらく今四半期(4-6月期)末までに提出されると述べた。

「銀行が独自システムを構築するか、BNY Mellonのような銀行向けサービスを提供する機関や、ファイアブロックスのようなベンダーを利用するか注目している。JPモルガン、シティ、モルガン・スタンレーのような大手銀行は自社開発するが、より小規模な銀行は技術プロバイダーが提供するサービスを利用したいと考えるだろう」とゴールド氏は述べた。

「もちろん、銀行は動きが緩やかだ。計画を今年末までに承認し、2026年に何かを始めると思う」

|翻訳・編集:CoinDesk JAPAN編集部
|画像:Coindesk archives
|原文:Tether, Circle to Face Intense Competition as TradFi Enters the Arena, Fireblocks Says