
2025年4月15日〜17日に、「第6回 ブロックチェーンEXPO【春】」が東京ビッグサイト 東6〜7ホールで開催された。最新サービスを紹介すべく、多くのブロックチェーン関連企業が出展する中、来場者はスタッフの説明に熱心に耳を傾けていた。また、連日開催された注目の最新事例を紹介するカンファレンスセッションには多くの人が詰めかけ、会場は熱気に包まれていた。
15日に開催された下記3つのカンファレンスセッションの模様をレポートする。
群馬県が取り組む自然派ワイン事業でのDAO活用 ~資金調達と地方創生~:第6回 ブロックチェーンEXPO【春】注目セッションレポート ※当記事
地方創生におけるDAO活用事例、関係人口創出に手応え
「群馬県が取り組む自然派ワイン事業でのDAO活用 ~資金調達と地方創生~」では、2025年2月に設立された「ぐんま山育DAO」の事例が紹介された。
「DAOと地方創生は非常に相性がいい」と指摘するのは、ガイアックス DAO事業部 事業責任者であり、ぐんま山育DAO 代表取締役も務める廣渡裕介氏だ。DAOは、クラウドファンディングのように購入して終わりではなく、より参加型の要素が強い仕組みになっているという。「トークンを持ってもらうことで、当事者意識がまったく違ってくる。また、ただの投資家としてだけでなく、実際にプロジェクトに参加してもらい貢献してもらうことができるのが大きなメリットだ」(廣渡氏)

「ぐんま山育DAO」は、2024年11月にプロジェクトを発足し、2025年3月にプレ募集を開始した。その結果、出資者は84名を超え、391万円の資金調達に成功した。驚くべきは、そのうち県外からの出資者が過半数を占めたという事実だ。「DAOには、地域への関係人口を増やすポテンシャルがあるという結果だと思う」と廣渡氏は語る。

実際に自然派ワイン醸造に取り組むのは、群馬で地方創生事業を展開する一般社団法人ちもり理事長の六本木ユウジ氏だ。さまざまな地元の団体と連携しながら試験醸造を開始、26年に営利目的の醸造開始を目指す。
今回、世界的に評価されているワイン醸造家である大岡弘武氏がアドバイザリーとして参画したことが大きな話題となった。「プロジェクトリーダーが長年にわたり築いてきた大岡氏との関係性があってこそ実現した。通常のアプローチでは、大岡氏の賛同を得るのは難しかったと思う。」と六本木氏は説明する。今後は、2027年にワインと食を組み合わせた地域活性化プロジェクトを発足し、2028年には海外への販路開拓を開始する計画だという。

DAO成功の秘訣はコンテンツの魅力と官民の交流
なぜ、群馬県はこれほどまでに積極的にDAOに取り組むのだろうか。その理由を、群馬県 知事戦略部 DX課NETSUGEN運用チーム 主事、南澤由佳氏は次のように語る。
「高齢化や人口減少が進む中、今後は自治体の財源や人的リソースが縮小することが避けられない。資金や労働力を、地域の外からも巻き込みながら確保し、地域課題を自律的に解決していく仕組みとしてDAOに注目した」(南澤氏)

県は「誰一人取り残さず、誰もが幸福を実感できる自律分散型社会の実現」を基本方針として掲げる。この方針のもと、2022年には県庁内にWeb3のプロジェクトチームを立ち上げ、2023年にはDAO設立・運営のガイドラインを策定。2024年にはガイアックスへの業務委託を通じて、DAOを活用した実証事業がスタートした。
「将来的には、県自らが複数のDAOを立ち上げられるような体制を目指している。そうなれば、自治体の予算確保も、より柔軟かつ持続可能なものになると期待している」と南澤氏は語る。
今回、「ぐんま山育DAO」が成功した理由として、六本木氏は自然派ワインというコンテンツの魅力を挙げる。
「個人が自己資金でワイナリーを持つことは不可能に近い。小口投資で自身のワイナリーを持てるという点は、ワイン好きにとって大きなフックになったと思う。また、大岡氏から直接指導を受けられるのも、DAOならではの魅力だ」(六本木氏)
成功の背景には、群馬県が運営する官民共創スペース「NETSUGEN(ネツゲン)」の存在も大きい。ここでは、民間事業者と県職員が日常的に顔を合わせ、地域のために何ができるかを共に考え、交流を重ねてきた。
「DAOはインターネット上の仕組みだが、やはりリアルの人と人との繋がりは大切だ。DAOの活用を検討している自治体は、官民の交流ができるような仕組みを整備することから始めるといいと思う」と南澤氏は語る。
廣渡氏は、地方創生DAOの成功の条件として「現物アセット(不動産や農地など)」、「地元事業者と自治体の連携」、「地域独自の魅力ある特産品」の3点を挙げる。
「その地域でしか出せない優位性のある自治体は、非常にやりやすいだろう。今後も、さまざまな地域と一緒に新しいプロジェクトに挑戦していきたい」と語りセミナーを締め括った。
他の2つのセッションはこちらから。
|文・写真:橋本史郎
|編集:CoinDesk JAPAN広告制作チーム